英語圏で、“Dutch”に悪いイメージがある理由は英蘭戦争にアリ

南京錠、南京虫、南京米、南京袋、南京町、南京豆…

日本語にはこんな感じで、「南京」の付く言葉がいくつもある。
これはもちろん、明王朝時代には首都だった都市で、現在では江蘇省の省都になっている「南京」に由来している。
何がどうなってこうなったのかは、以下の記事を見てくれ。

南京錠や南京虫などの“南京”の意味は、英語だと「foreign」

 

英語には、オランダを表す「Dutch(ダッチ)」の付く言葉がたくさんある。しかし、それらの意味は日本語の「南京」と違って、だいたいネガティブだ。
たとえば、「Dutch generosity」は直訳すると「オランダ人の寛大さ」と良い意味になるが、実際の場面では「ケチ」の意味で使われる。「Dutch treat」は、直接的にはオランダのやり方という意味だけど、実際には「割り勘」になる。
英語圏には「オランダ人=金にうるさい」というイメージがあるらしい。

「Dutch auction(オランダ式オークション)」とは、一般的なオークションの反対で、最初に高い価格を提示し、徐々に価格を下げていって、最初に手を挙げた人が落札するやり方を指す。
こんな「ダッチ系」の言葉には、ほかにもこんなものがある。

Dutch uncle(オランダのおじさん)とは、ずけずけと批判する面倒くさい人。
Dutch courage(オランダ人の勇気)は、酒の勢いを借りて出す元気。
Dutch concert(オランダのコンサート)は、酔っ払って騒ぐこと。
Dutch defence(オランダの守り)は、退却や降伏の意味。
Dutch roll(ダッチロール)は、飛行機が揺れて真っすぐ飛べない状態。
double Dutch(ダブルダッチ)は、意味不明の言葉、理解できない話。
Dutch talent(オランダ人の才能)とは、頭を使わないで、力で問題を解決しようとすること。要するに筋肉バカ。
I’m a Dutchman(私はオランダ人です):俺の首をやる。
*絶対に違うという強い否定を表す。
たとえば「I’m a Dutchman if it’s true」なら、「もしそれが本当なら、俺の首をやるよ(=絶対そんなわけない)」という意味。

「be in Dutch with〜」だと、「~に嫌われている」という意味になる。

 

ということで、英語の「Dutch」には、オランダ人に対して侮辱的なニュアンスがあることが、おわかりいただけただろうか。もちろん、ダッチが付けばすべて悪い意味になるということでもない。
その原因は、1674年のきょう2月19日におこなわれた、第3次ウェストミンスター条約の締結と関係している。これによって、第3次英蘭戦争が終わった。

1623年に起きたアンボイナ事件で、イングランドは東南アジアや東アジアから追い出され、オランダが香料貿易を独占し、笑いが止まらなくなるほどガッポガッポと金をもうけた。
イングランドでは当然、「オランダ、マジ許さん!」という怒りが高まり、それが火種になって1652年に第一次英蘭戦争がぼっ発。その後、第二次英蘭戦争(1665年〜1667年)、第三次英蘭戦争(1672年〜1674年)と、わずか25年の間でイングランドとオランダは3回も戦った。

アメリカ政府の国営放送「VOA(ボイス・オブ・アメリカ)」によると、こうした対立を背景にして、17世紀に「ダッチ」にネガティブな意味が込められるようになった。

イングランドとオランダの間で激しい海軍競争が繰り広げられていた。その当時、イングランド人は「Dutch」を「悪いもの」、「偽り」、「間違い」を表す言葉として使っていたという。

That was a time of fierce naval competition between England and The Netherlands. At that time, the British used Dutch as a word for something bad, or false or mistaken.

Dutch: English Expressions Unrelated to Dutch People

 

現代では、飛行機が左右に大きく揺れながら飛ぶことを「ダッチロール」と言う。しかし、もともとは、オランダ人兵士がまっすぐ行進できない状態を指す表現だったらしい。

でも、今は21世紀だ。もういい加減、「Dutch generosity」や「Dutch treat」なんて侮辱的な言葉を使うべきではない。なんてことは、トコジラミを「南京虫」と呼んでいる日本人には言えないか。

 

おまけ

18世紀になっても、イングランドとオランダは争っていた。それは勝手にしてくれたらいいのだけど、「フェートン号事件」で日本がそれに巻き込まれ、長崎奉行の松平康英が責任をとって自刃した。

フェートン号事件 幕末の日本人を“イギリス嫌い”にさせた件

歴史的に、英国には「紳士の国」と「ブリ◯ス」の2つの顔がある。

 

 

日本 「目次」

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