日本人に、これ以上なく春の到来を告げるものは桜。江戸時代の有名な俳人・小林一茶も桜が一気に開花した様子を見て、テンションが爆上がりしたらしく、
「桜咲く 大日本ぞ 日本ぞ」
という勢いのある句を詠んだ。一茶は愛国心の強い人で「花おのおの 日本魂 いさましや」なんて句も作っている。
最近、何人かの外国人と一緒に大日本の桜を見に行ったとき、今年の2月に日本に来たばかりの20代のインドネシア人女性がいた。そんな彼女とした会話の内容がこちら。
ーーメールで「どうしても桜を見たい! 」ってことだったけど、インドネシアで桜は有名なの?
日本といえば桜というイメージがあって、とても有名です。日本に住んでいるインドネシア人も多くて、SNSでよく桜の投稿をしていますから、若い人たちはネットを通じて桜のことを知ります。年配の人たちは、テレビ番組で見たことが多いと思います。桜を目的に日本旅行をする人もよくいますよ。
私も桜のシーズンが始まる前に、必ず日本に行きたいと思って予定を調整したんです。
ーーそういえば、ジャカルタに住んでいた知人が一時帰国するタイミングで、季節の変わり目を感じたいということで春を選んだ。インドネシアでは四季の移り変わりを感じることができないから、どうしても桜が咲く時期に帰国したかったらしい。
インドネシアは一年中暑くて、気温は大きく変わりませんからね〜。雨が降るかどうかが季節の変わり目になりますから、雨季と乾季の二つしかありません。
ーー日本も最近は暑い時期が長くなって、夏と冬の二季化しているけどね。
*インドネシアでは日本を「桜の国」と表現することがある。首都ジャカルタでは、日本に留学していたインドネシア人たちが中心となって、「Sakura Matsuri」という日本祭りが開催されている。
ーー日本では「桜」と「菊」が国花と言われている。インドネシアの国花はなに?
ジャスミンです。インドネシア語では「メラティ(melati)」って言います。
ーーそういう攻撃系の魔法がありそう。
むしろ癒やしですよ。ジャスミンは優雅さや高貴さを象徴する花で、インドネシアでは結婚式の飾りとして使われることが多いです。ジャスミンはお茶として飲まれることもあります。
それと胡蝶蘭とラフレシアの3つがインドネシアの国花になっています。
ーージャスミンと胡蝶蘭は日本でも見られるけど、世界最大の花と言われているラフレシアは日本では無理だね。(模型やホルマリン漬けのラフレシアならあるらしい。)
ジャングルにでっかいラフレシアがあると、熱帯のインドネシアらしいと感じる。でも、あれはとんでもなくクッサイ臭いを発する花だよね。日本人にはポケモンのキャラで十分かな。
*19世紀前半、シンガポールの建設したラッフルズの調査隊がこの植物を発見し、彼にちなんで「ラフレシア」と名付けられた。
「インドネシア建国の父」と言われるスカルノ(1901年 – 1970年)
今回の記事を作成するためにネットを調べていたら、インドネシアで桜が有名であることを示すこんなエピソードを見つけた。
戦前の日本でヒットした歌に、渡辺はま子が歌った「愛国の花」がある。
インドネシアの初代大統領となったスカルノがこの歌をとても気に入り、自分でインドネシア語の歌詞まで作ってしまった。その内容は、「日本人が美しい桜を愛でるように、インドネシア人もジャスミンを愛でる。アジアが一つである証拠である」というもの。
日本の「愛国の花」はインドネシアでは「ブンガ・サクラ(サクラの花)」というタイトルになり、スカルノ氏は大統領官邸のパーティでこの歌を歌っていたという。1962年に日本の皇太子ご夫妻がインドネシアを訪問した際、現地の歓迎式典でこの「ブンガ・サクラ」が歌われた。
スカルノ氏と結婚したデヴィ夫人はブログに、「花を愛でる心を通して相互理解 ・相互扶助のもとにアジア全体を繁栄させる という意が込められた歌です」と書いている。
(日本の美しい桜 「染井吉野」 半減の危機!)
インドネシアで「日本は桜の国」というイメージは、かなり昔からあったらしい。
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