日本人の意識の変化。外国に抗議する強い姿勢が支持される。

 

前に、大阪市のことについて書いた。

「大阪市は、サンフランシスコ市との姉妹都市を解消したほうがいいのか?」ということについて。

このきっかけは、サンフランシスコ市の慰安婦像と碑文だ。
大阪市長が強く反対したにもかかわらず、サンフランシスコ市は慰安婦像と碑文を、市の公共物にしようとしている。
それに対して、大阪市長が「だったら、姉妹都市の関係は解消する」と言っている。

結論からしたら、姉妹都市の解消は仕方がない。
読売新聞の社説に賛成だ。

「性的に奴隷化された数十万の女性と少女の苦しみを証言するもの」「ほとんどが捕らわれの身のまま亡くなった」。碑にはこうした文言が刻まれている。

史実を歪曲わいきょくした内容だと言うほかない。旧日本軍が慰安婦を強制連行したかのような誤った印象を与える。

米国の慰安婦像 姉妹都市解消はやむを得ない

この碑文の内容は、慰安婦問題についての「意見の違い」ではない。
「性奴隷・少女・強制連行」という歴史の事実はないのだから。
サンフランシスコ市は、間違った内容を公式に認めようとしている。

こんなサンフランシスコ市に具体的な形で抗議をしなかったら、誤解がますます広がってしまうだけだ。

歴史をわい曲し、友好関係を先に壊したのはサンフランシスコ市なのだから、大阪市長の決定は仕方がない。

くわしいことはこの記事を読んでください。

サンフランシスコの慰安婦像。大阪市は姉妹都市は解消するべき?

 

この記事を書いていて、「日本人の考え方が変わったなあ」と思った。
今回はそのことを書いていこうと思う。

一言でいったら、「日本の強い姿勢を支持する人たちが増えた」ということ。

 

どんな問題でも一面的に見てはいない。
だから、「大阪は姉妹都市を解消するべきではない」という反対意見も紹介したい。

アメリカ在住のジャーナリストが、ニューズウィーク誌にこんなコラムを書いている。

サンフランシスコ「従軍慰安婦像」への大阪市対応は慎重に

 

「慎重に」というのは、「大阪市は姉妹都市を解消するな」ということ。
その理由をコラムから抜き出す。

・イメージダウンは避けられないでしょう。
・旧軍の非人道性を擁護するというのは、大阪は今でも悪の側に立つのか?」という言われ方をしてしまう可能性があります。
・現在の良好な日米関係全体に影響が出るようになっては大変です。
・大阪が関係を悪化させた場合に、ビジネス上のパートナーシップに影響が出るようでは困ります。

 

こうした言葉は、今までにもよく聞いた。

「日本の評判が悪くなる」
「相手を怒らせて、問題が大きくなってしまう」
「友好関係に傷をつけてしまう」

だから日本は「慎重に対応するべきだ」となり、「遺憾の意」をしめすだけで強い抗議はしない。

 

 

昔はボクもそんな対応を支持していた。

「相手との和を大切にして、日本は騒がない方がいい。大人の対応で、放っておけばいい」なんてことを思っていた。

でも、今から考えるとそれは間違いだ。
特に慰安婦問題をはじめとする日韓の歴史問題では、日本が強い姿勢で抗議しなかったから、問題がより大きく解決困難になってしまった。

 

日本が外国に抗議すると、「イメージダウンは避けられない」「現在の良好な日米関係全体に影響が出るようになっては大変です」と言う人がいるけど、なんでこの逆は言わないのか?

今回の場合、サンフランシスコ市が先に行動をおこして、日米関係を損(そこ)ねている。
「日本が抗議すると友好関係が壊れてしまう」と、日本を常に”加害者”とする見方は不公平だ。

 

大阪市長はこう言っている。

サ市の意思として像と碑を受け入れることは「日本や大阪に対するバッシング」であり、「姉妹都市の前提となる信頼関係が築けない」と強調した。

サンフランシスコ慰安婦像、公共物化なら姉妹都市「年内に解消」大阪市長明言 日本、大阪へのバッシング、「信頼関係築けぬ」

大阪市長はサンフランシスコ市長に面会を求めたけれど、「都合がつかない」とサンフランシスコ市から断られている。
サンフランシスコ市長は話し合いにも応じない。
「現在の良好な日米関係全体に影響が出るようになっては大変です」という言葉は、サンフランシスコに言うべきだ。

 

上のコラムは大阪市長にこんな注文をつけている。

「日米関係への様々な悪影響を考慮すれば、政治問題化させない慎重さが必要」

この慎重さが必要なのはサンフランシスコ市だったはず。

 

インターネットを見ると、「姉妹都市の関係は解消する」という大阪市長を支持する意見が圧倒的に多い。

・いや、大阪が正しい。
・そういう曖昧な姿勢がここまでこの問題を大きくした。
・書かれている滅茶苦茶な文言はどう考えても見過ごす訳にはいかないと思う。
・欧米諸国へは主張することが重要
大人の対応とか言い訳して何もやらないのが一番ダメ
・日本に対する偏見に繋がる像は看過できない

こんなコメントが本当に多い。

 

「日本人の意識が変わってきたなあ」と思う。

たくさんの人が「日本が黙っていても、まったく問題の解決にはならない。誤解が広がって、未来の日本人が困ってしまう」と感じているのだと思う。

アメリカの公有地で慰安婦像が設置されたのは、グレンデール市、ブルックヘブン市に続いてサンフランシスコ市が3つ目になる。
この原因には、日本が「慎重に」対応して、強く抗議しなかったことがあるだろう。

「日本は慎重に対応するべき」というのは、実質的に「日本は何もするな」ということ。
「大人の対応をするべき」とは、「黙ってろ」と同じ。

それでうまくいったら良かったけど、これで解決したことが思いつかない。
今の日本でこんな消極的な姿勢は共感を得られそうにない。

 

日本の政治家の意識も変わろうとしている。

アメリカでは次々と慰安婦像が建てられ、日本に対する誤解が広がっているのが現状だ。
それで、自民党の二階幹事長がこう言っている。

産経新聞の記事(2017.11.17)から。

自民党議員が米国や関係国に出張する際、慰安婦問題に問題提起させる考えにも言及した。「これからは慰安婦問題について必ず意見を申し述べてくる。日本から来た国会議員はみんな意見を持っていて、気を良くしているわけではない(と相手に理解してもらう)」と強調した。

自民・二階俊博幹事長、サンフランシスコ市議会の慰安婦像寄贈受け入れ決議に不快感 「日本が喜ぶか、答えはおのずと明らか」

慰安婦問題を持ち出せば、相手が嫌がったり場が気まずくなったりするかもしれない。
だから今までは、日本の議員からは問題提起をしてこなかった。

でも、そんな消極的な姿勢ではダメだったから、「これからは必ず意見を申し述べてくる」と強い姿勢で出ることにしたのだろう。

 

 

日本の立場や考え方を外国の人たちに積極的に伝えようとしする”攻め”の姿勢は、今までの日本の議員にはあまりなかったと思う。

「慎重になるべき」といって、具体的には何もしない。
遺憾の意をしめして終わりにする。
それで問題は解決しないで、むしろ悪化してしまった。
慰安婦像の問題はその一例だ。

 

そんな現実を見て、「日本は外国に対して、もっと強く抗議した方がいい」と考える日本人が増えた。
その声に応えるかたちで、「これからは~必ず意見を申し述べてくる」と政治家の意識が変わったのだと思う。

何事も「0か100か?」ではないし、やり過ぎもいけない。
でも、国民や政治家のこの意識の変化は、日本にとってきっと良い方向に向かう。

 

2 件のコメント

  • 今までは、韓国人を始めとする外国人が慰安婦問題を言い出して、それに対し日本人が反論するというケースが多かったですが、今後は日本人の方から慰安婦問題をとりあげ、主張することも大事かもしれませんね。
    そのためには、日本に対し不利益になる事実も合わせた、根拠に基づいた教育が必要になると思います。
    最近ネットでは「強制連行はなかった」「慰安婦は性奴隷ではなく売春婦だった」という発言が目立ちます。
    ですが依然として、旧日本軍人だった方たちの、過去に慰安婦に対する過酷ともいえるふるまいがあったという証言も散見されます。
    正直なところ私としては、どちらが正しいのかという判断はできません。
    (ただ、負け戦続きで、ろくに食も足りていない状態で、果たしてそれほど人が紳士的にふるまえるだろうか?という疑問はあります)
    日本側や韓国側の証言だけでなく、第三者から見た証拠の積み重ね、更には当時のそれ以外の国の行い、その後の日本や韓国の行い等も合わせた客観的な総括をつまびらかにしてほしい。
    そう思うこの頃です。

  • >今後は日本人の方から慰安婦問題をとりあげ、主張することも大事かもしれませんね。
    まったく同感です。特に政治家の人たちは受け身にまわらないでほしいです。
    >「強制連行はなかった」
    現時点で、強制連行があった根拠は何一つ見つかっていません。だから「強制連行があった」というのは、歴史のねつ造になります。
    >「慰安婦は性奴隷ではなく売春婦だった」
    この表現は適切ではないですね。ネットの書きこみではなくて政治家が公での場で言ったら問題になります。
    不幸な女性がいたことはたしかです。ですから、安倍首相は「心からのお詫び」を表明したのですから。
    >根拠に基づいた教育が必要になると思います。
    本当にその通りです。
    先入観や感情をなくして、事実にもとづいて議論するべきです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。