「神道はキリスト教よりいい宗教だ!なぜなら、神道はキリスト教より女性を尊重しているから」
前回、そんなことを言ったアメリカ人を紹介した。
戦国時代にやって来たヨーロッパ人の宣教師も、日本では女性の地位が高いことに驚いている。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
女性蔑視①欧米人から見た神道とキリスト教、日本とヨーロッパの違い。
でもこれらは、神道とキリスト教、日本とヨーロッパ社会のほんの一面でしかない。
神道でも、「女人禁制は女性への差別や蔑視では?」と批判されることがある。
例えば、福岡県にある沖ノ島は女性の上陸が認められていない。
これは神道の「穢(けが)れ」の考え方にもとづくと言われている。
「huffingtonpost」の記事(2017年07月15日)から。
九州大学の服部英雄・名誉教授によると神道では血液を「穢れ」としてタブー視しているため、月経がある女性の来島を禁止したのだという。一方、宗像大社は「沖ノ島への航海は非常に危険なので、子孫を守るために女性たちの来訪を禁じた」と別の説明をしている。
この島が世界遺産に登録されるときも、「女性が島に上がることができないのは、女性差別や蔑視ではないか?」という議論が起きている。
一般開放はもとより、女人禁制の伝統的禁忌も継承される。このことについて女性権利団体などから抗議の声が上がり、観光業界でも懸念が広がった。
いろいろな議論はあったものの、沖ノ島は女人禁制の伝統を守ったまま、世界遺産への登録がみとめられた。
2000年にはこんな出来事があった。
女性の大阪知事が土俵に上がろうとしたところ、それを拒否される。
大相撲の優勝力士に贈る大阪府知事賞の贈呈を巡り、女人禁制の土俵に知事自らが上がりたいという意向を示したが、日本相撲協会に拒まれた
相撲は神道の考え方にもとづく神事でもある。
土俵は神聖なところだから、「女性が上がると穢れる」という見方があるらしい。
先ほどの「神道では血液を『穢れ』としてタブー視しているため」と同じ理由ではないかと思う。
島にしろ土俵にしろ、長い歴史や伝統にもとづく女人禁制の場所があることはいい。
でも、限度がある。
いま大相撲の興行中に起きたハプニングで、大騒ぎになっている。
京都舞鶴市の市長が、土俵に上がってあいさつをしていたところ、急に体調が悪くなってその場に倒れてしまった。
観客として来ていた医者がすぐにかけつけて、土俵の上で救命措置をおこなう。
でもその医者は女性だった。
それで、女性は土俵から降りるよう場内アナウンスが流れる。
京都新聞の記事(2018/4/4)にそのことが書いてある。
観客席から女性数人が土俵に上がり、心臓マッサージなどをしていた際、「女性の方は土俵から下りてください」とアナウンスが数回行われたという。
さらに女性2人が加わろうとした際に「女性の方は土俵から下りてください」などのアナウンスが少なくとも3回流れ、「男性がお上がりください」もあった。
救命中「女性は土俵から下りて」 大相撲巡業、市長倒れ
いくら土俵が女人禁制でも、これはやり過ぎ。
人命(救命措置)より伝統を優先してはいけない。
当然、これにはネットで非難の嵐が巻き起こっている。
・アナウンスガチだったな
・つべ動画見たけどアナウンスが女性限定してるのが悪い
救命関係者以外の方は土俵を降りてくださいとか言いようがある
・でも女子トイレで悲鳴が聞こえて男が入ると逮捕されるんでしょ?
・これが国技か
・まぁ、何でもかんでも今の基準に合わせろってのも無粋だと思うけど、 こういう緊急時はねぇ。
・女性客、抗議のために一斉に相撲をボイコットすりゃいいのに
・本気でムカついた
・いくらなんでもこれは酷い
・アナウンスした奴は頭を下げるべき
・人命救助が最優先だろ
・これで市長亡くなったらどうすんの?
このアナウンスがおこなわれた経緯はよく分からない。
消防署員がAEDでの処置をおこなったから、相撲協会の関係者が「下りてください」と言ったという報道もあるし、「女性が土俵に上がっていいのか?」という観客の言葉を聞いた関係者が慌ててアナウンスしてしまったという報道もある。
でも、日本相撲協会の八角理事長は「人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くおわび申し上げます」というコメントを発表している。
やっぱりこのアナウンスはマズかった。
伝統は歴史だけではなくて、民意によっても成り立っている。
しきたりや伝統を守ることはいい。
でもそれだけを考えていると、世間の常識から離れてしまって、一般の人たちの反感を買うことにつながってしまう。
伝統に固執することが、伝統を破壊する原因にもなる。
今回のアナウンス騒動を受けて、テレビでは「土俵の女人禁制をなくしてもいいのでは?」と言うコメンテーターも出て来ている。
テリー伊藤さんも、「女人禁制は時代遅れだし、廃止してもいいのでは」といったことを発言していた。
かつて富士山は女人禁制の山だったけれど、その伝統は明治時代に終わった。
今では、だれでも登ることができる。
伝統を維持するためには、人々の支持も必要だ。
愛される伝統でなかったら、長くは続かないだろう。
今回の騒動を見てそんなことを思った。
朝日新聞の記事(2018/04/05)によると、女性がいた土俵にはその後、大量の塩がまかれている。
日本相撲協会の広報担当は取材に「確認はしていないが、女性が上がったからまいたのではないと思う」と話した。
救命女性が降りた土俵に大量の塩まく 複数の観客が目撃
ここに書いてあるように、塩をまいた目的は「穢れを清めるため」ではない。
相撲の世界では、力士がけがをした後に塩をまくことがあるという。
でもこの言い分を信じない人たちは、ネットで相撲協会を叩いている。
一度で相手を怒らせると、関係ないことまで一緒にして批判されてしまう。
このアナウンスの一件で、相撲協会が受けたダメージはとんでもなく大きい。
まさに、注意一秒けが一生。
こちらもどうですか?
沖ノ島と富士山にみる日本の女人禁制。理由は神道に?守るか変えるか。
外国人から見た日本の男性差別①その例:プリクラ店とレディスデー
男性医師を用意していない相撲協会のミスとしか言えない。伝統よりも人命救助は大事ですから。ただ伝統という非科学的なものを否定する行為が行き着く先はタイで仏像などを軽視した行動をとる欧米人に通じるのかも。他人が尊重するものでも自分が信じないものを有り難がるのは難しいですから。自分とは違う考えを持つ人への敬意、今回の出来事では誰が誰にどのようなことをすれば敬意を体現する事になったのでしょうかね。
>男性医師を用意していない相撲協会のミスとしか言えない。
これは致命的なミスですね。なんで用意していなかったのか。
伝統には敬意をしめす必要はありますけど、人命が一番ですから今回のアナウンスはマズかったです。
「土俵を女人禁制にすることを廃止するべき」という意見を多く見ます。
敬意の体現の仕方はむずかしいですね。