イスラム教徒に聞く、日本のお寺とモスクの違い:立地条件

 

「イスラーム教徒だってお寺に行きたい!」という声にこたえて、浜松に住んでいるインドネシア人イスラーム教徒3人を方広寺というお寺に連れて行った。
今回はそのとき彼らから聞いた、イスラーム教のモスクと日本とのお寺の違いについて書いていきたい。

でもその前に、モスクという施設について簡単に知っとこう。
仏教には在家の信者が守るべき五つの戒(いまし)めがある。

不殺生戒:生き物の命を奪ってはいけない。
不偸盗戒:ものを盗んではいけない。
不邪婬戒:不道徳な性行為を行ってはいけない。
不妄語戒:うそをついてはいけない。
不飲酒戒:酒類を飲んではいけない。

仏教の五戒と似たものにイスラーム教の五行があって、信者は基本的に次の五つを守らないといけない。

信仰告白:「アッラーの他に神は無い。ムハンマドは神の使徒である。」と証言する。
礼拝:一日五回、キブラに向かって神に祈ること。
喜捨:収入の一部を困窮者に施すこと。
断食:ラマダーン月の日中、飲食や性行為を慎むこと。
巡礼:メッカのカアバ神殿に巡礼すること。

この五行のひとつ、イスラーム教徒が礼拝する施設をモスクという。
安息日の金曜日になると、イスラーム教徒はモスクへ行って、メッカの方向にひざまずいて礼拝をおこなう。
もちろんそれ以外の日にもモスクで礼拝できるけど、毎日そうできるのは時間に余裕のある人(日本でいう自宅警備員)で、職場にある礼拝スペースで行う人も多い。
極端な話、ひざまづくためのマットさえあれば建物はいらない

さて、そんなモスクとお寺はどう違うのか。

 

トルコ・イスランブールのスルタンアフメト・モスク(ブルーモスク)

 

インド礼拝

モスクで礼拝するイスラーム教徒の女性(インド)

 

方広寺は浜松駅から車で1時間30分ほど走った山の中にある。

 

駐車場からはこんな山道を通って、

 

こんな橋をわたって、

 

本堂に到着する。

 

「まるでハイキングみたいですね」という彼らの感想に、モスクとの違いがよく表れている。
モスクは礼拝施設で人々の身近なところにあるから、こんな人里離れた山奥にはない。
イスラーム教徒にとって礼拝は重要な義務だから、それを行うところは近いほうが都合がいい。
だから不便な山の中に、あえてモスクを建てる理由はふつうならない。

これはインドネシア人の意見だから他の国はわからないけど、トルコやシリア、エジプトなどの中東を旅行したボクの経験でも、モスクはいつも市街地にあって山で見た記憶はない。

これに対して、日本のお寺は町の中にも山の上にもある。
だから川の流れを見たり山道を歩いたりして建物にたどり着くというハイキング気分が味わえるのが日本のお寺の特徴という。
インドネシアは自然豊かな国だけど、モスクは人工的な空間の中にあって、日本のお寺のように緑に囲まれてはいない。
モスクとお寺は建物のまえに、立地条件が全然ちがうと3人が話す。
もし人の気配のない山奥にモスクがポツンとあったら、彼らは強烈な違和感を感じると思う。

イスラーム教徒の五行のひとつ「礼拝」ではモスクが必要だけど、不殺生や不飲酒などの仏教の五戒は個人の心がけの問題だから寺はなくてもいい。

 

仏教のお寺はお坊さんの修行の場でもあったから、世間から離れた山の中に建てられることが多い。
そんなわけで、その山の名前が寺の名称になることもあった。
それを「山号」という。

山号

もと、寺は多く山に建てられたため、その山の名でよばれたが、のちに平地の寺にも用いるようになった。

「デジタル大辞泉の解説」

 

だから以前は、比叡山にある延暦寺は「比叡山寺」、高野山にある金剛峯寺は「高野山寺」と呼ばれていた。
いまでは山号と一緒に比叡山延暦寺、高野山金剛峰寺といわれることが多い。
新勝寺の場合は「成田山」という山号のほうが有名かもしれない。
ちなみに方広寺の山号は深奥山(じんのうざん)という。

この考え方は古代中国から日本へ伝わった。
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山号

韓国でもお寺は山にたくさんある。
まあこれは朝鮮時代に仏教が弾圧されて、お寺が街から追い出された結果でもある。
韓国にはハイキング好きが多くて、山登りをするとよくお寺を見るという。

これはひとつの見方だけど、日本でお寺は観光スポットになっているから遠くてもいい。
でもイスラーム教徒にとってモスクは生活の一部だから、身近なところにないと不便で困る。
それぞれの立地条件の違いにはこんな事情があるようだ。

 

 

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2 件のコメント

  • お寺(仏教)とモスク(イスラム教)との間での違いがもう一点、お寺には「坊さん」「尼さん」という聖職者が常勤しているのですが、モスクにはそのような人達がいないのでしょうか?イスラム教のモスクで聖職者として働いている人達のことは、何と言うのでしょうか?
    キリスト教だったら、神父(カソリック)または牧師(プロテスタント)ですよね。
    イスラム教にもあるはずですが。それが日本社会であまり知られてないということ自体、イスラム教が日本社会に未だに根付いていないということを意味しています。

  • お寺とモスクの違いはいくつかあったので、それはまたこれから書いていきますよ。
    僧がいるかいないかというのもそうです。
    モスクにはイマームという指導者、先生がいて礼拝に集まった人を前にクルアーンを読みます。ほかにも勉強会でイスラーム教について教えるそうです。
    日本でも最近、イスラーム教の理解が進んだと思いますが、キリスト教に比べたらまだまだでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。