泣き寝入りしない。日本人が海外で人種差別にあったときの対応

日本人は海外で、「礼儀正しい」とか「配慮がある」とか言われていてわりと評価が高い。
「世界のベストツーリスト」に選ばれたこともあるし、サッカーワールドカップやオリンピックでのゴミ拾いは海外メディアから絶賛された。

そんなホルホル感を吹き飛ばしてくれたのが新型コロナウイルス。
感染と恐怖が広がるにつれて、眠っていた偏見や差別意識が呼び覚まされて、いま欧米や中東、東南アジアなどで中国人・韓国人・日本人といった東洋人への嫌がらせや差別的言動が相次いでいる。

親日国のインドネシアでも、日本人が日本人であることを理由に飲食店から入店を拒否される悲しい出来事が起きた。
くわしいことはこの記事を。

親日国で“感染源”と日本人を拒否。インドネシア人の見方は？

今月はじめには、イタリアで暮らす日本人女性が受けた差別についてsirabeeが記事（2020/03/03）にしていた。

イタリアで飲食店経営の日本人女性が新型コロナ差別被害　「顔を見て逃げられる」

＊内容は２月のことだと思う。

イタリア在住の日本人が知人のイタリア人に、いつものようにあいさつのハグをしようとしたら、すごい勢いで避けられた。
また日本から戻ってきたと知ると、みんなから『日本からウィルスを持って来たんじゃないだろうな』と言われて嫌な気分になったという。

でも、いまの状況でハグはマズいと個人的には思う。
これは差別とは違うような気がするけど、本人がそう感じたことは事実。

このほかにも、車が故障したからレンタカーを借りようとしたけど、自分が日本人と知っているレンタカー店から『今はどの車も予約でいっぱいだ』と拒否されて、「これにも大変ショックでした」とある。

スーパーへ買い物に行くだけでも心が折れそうになるらしい。

全員ではないですが、私の顔をみるなり逃げて行ったり、即座に口に被せものをされたり、私が並ぶレジには並ばなかったり、一度は子供が私のことを見てすぐにお母さんの所へ走って行き、『中国人だよ』と耳打ちしていました！

でも万物は流転するもので、いまでは立場がすっかり逆転した。
３月11日朝の時点でイタリアの感染者は１万人以上（死者631人）で、日本の587人（12人）よりずっとずっと深刻な事態になっている。
でも残念ながら、いま欧米で東アジアの人間に対する差別的な言動が止まらない。

世界のどこの国にも、ナイスガイがいれば人種差別主義者もいる。
実際ボクが海外旅行でそういう目にあったことがあるし、日本人からそういう話は何度も聞いた。

５年前、フランスに滞在していたミュージシャンのGACKTさんもそんな目にあっている。
朝食を食べようとレストランに入って、外の風景が見られる窓側の席に座ると、店員にやってきて奥の席へ移るように言う。
言われた席に移動したあと、白人の客が店内に入るとGACKTさんが座っていた席に案内された。
あれ？と思って観察していると、白人客は店の入り口近く、アジア人は奥の席へ行くように指示されていたのだ。

これは明らかな人種差別行為。
GACKTさんは店を出て再び入店すると、店員からまた奥の席へ座るよう言われる。
そこで笑顔を浮かべながら、「なんでだ？説明してくれ」「大きい声で、わかりやすく言ってくれ」」と店員に詰めよった結果は、日刊スポーツの記事（2015年3月31日）に書いてある。

「諦めたのか向こうに行って他の店員となにやらボクを見ながら話していた。あはははは。こういうことっていまだにあるんだよなぁ…」と、露骨な人種差別にあきれていた。

ＧＡＣＫＴあきれた、フランスで露骨な人種差別

これで外を眺められる席を獲得したらしい。

この「人種差別撃退法」をフランス在住で、ヨーロッパの事情にくわしい作家の辻仁成さんがこう賞賛する。

ミュージシャンのガクトさんがパリで差別受けた記事読んだ。彼の対応、よいね。差別されたと感じたら、パリでは、相手を徹底的に問い詰めるべき。ただ差別してるのがフランス人とは限らない。堂々と挑めば差別は受けにくい、とおいらは思う。おいらは相手をじっと睨みつけ、最後は日本語で罵倒します。

— 辻仁成 (@TsujiHitonari) 2015年3月31日

＊ツイートが削除されることがあるから、文章をここに載せさせてほしい。

「ミュージシャンのガクトさんがパリで差別受けた記事読んだ。彼の対応、よいね。差別されたと感じたら、パリでは、相手を徹底的に問い詰めるべき。ただ差別してるのがフランス人とは限らない。堂々と挑めば差別は受けにくい、とおいらは思う。おいらは相手をじっと睨みつけ、最後は日本語で罵倒します。」

もし自分が人種差別行為を受けたら？

まえにアメリカ人の黒人女性とそんな話をしたことがあって、彼女もこれと似たことを話していた。
状況にもよるけど、まず差別に泣き寝入りはしない。
そして相手の目を離さないで、ゆっくり大きな声で説明を求める。
ポイントは「笑顔」で、心底腹が立った時にはこれを意識することで余裕が生まれて、相手と感情的なトラブル、下手すれば暴力沙汰に発展するのを防ぐことができる。

それと周囲に聞こえるような声で言うことが大事。
相手の行為が明らかな人種差別でそこがニューヨークなら、きっとだれかがこちらの味方になって相手を非難してくれるという。
世の中にはナイスガイもいるから。

そこまでの英語力がなかったら、日本語で罵倒しよう。
でも周囲にだれもいなくて一対一の状況なら、泣き寝入りも選択肢のひとつだ。
人種差別主義者を怒らせるのはそれはそれで危ない。