【筋肉の日本語】ムキムキはドイツ語(Mucki)だった件

 

英文学者で翻訳家の柳瀬尚紀(やなせ なおき)さんは、日本語を「胃袋が強い」と表現した。
たしかに日本語(日本人)には海外にあるいろいろなことばを積極的に取り入れて、消化吸収するという特徴がある。

個人的には最近、スペイン人をお寺に連れて行ったとき、上の仁王像の体を「マッチョ」と言ったら、「そのことばはスペイン語のマッチョ(macho)なんです。日本人にきいても誰も知りませんでしたけど」と言われてサプライズ。

「マッチョ」はスペイン語。しかし女性はこれを嫌うらしい

「ガチムチ」のムチの由来もきっとこれだ。

 

マッチョにふれたのなら筋肉を表すもうひとつの代表的な日本語、「ムキムキ」を取り上げないのは誰が見ても公平に欠く。
肉体美を表すことばには、筋骨隆々・鍛え上げられた・引き締まったなどいろいろあるけど、やっぱりマッチョとムキムキが日本語の双璧。

このことばは日本社会にすっかり定着していて、いまネットを見たらこんなニュースがある。

シネマカフェの記事(2021.4.8)

ドウェイン・ジョンソン、ムキムキの太ももで「ブラックアダムの準備完了」  

ほかにも筋肉ムキムキな転校生がメインキャラの漫画「筋魂!ムキムキくん」の第1巻が4月2日に発売されたという。
昭和の時代なら、ボディビル出身の肉体派タレント・対馬 誠二さんの演じる「ムキムキマン」が人気を集めた。
アニメ『SHIROBAKO』16話に出てくる「エンゼル体操」の元ネタは、実はムキムキマンのエンゼル体操だった事実を平成世代の日本人は知らないのでは?
一方、昭和の人はSHIROBAKOの方を知らないかも。
エンゼル体操でピアノを弾いていた「カツヤクキン」が、大学生だった佐野元春さんだったというのはもはや伝説。

 

2019年に『世界ふしぎ発見!』で、ムキムキの由来はドイツ語の筋肉(Mucki)だったことが紹介されて、「これは衝撃的事実!」とちょっとした反響を呼んだ。
ムスケル(Muskel)というドイツ語の口語が「ムキ(ムッキ)」で、これが日本語の「ムキムキ(Mucki)」になる。
餅は餅屋、ムキの使い方はドイツ人に聞くのが一番。
知人のドイツ人はこう言う。

We use it like “This person got a lot of Muckis” or a gym is also called “Muckibude” which means literaly muscle room.

「この人にはたくさんのMuckis(ムキ:筋肉)がある」とか、ジムのことを「Muckibude」と言う。これは文字通り「筋肉の部屋」という意味になる。

スポーツジムを「筋肉部屋」と表現するのが本場ドイツの発想らしい。
日本で「ムキムキ部屋」だと、ボディービルダー専用ジムのような響きがあって一般受けしないような。

「ムキムキ」とことばを重ねるのは、「キラキラ」「ワクワク」「スベスベ」「ゴロゴロ」といった日本語のオノマトペと同じ理由だろう。
いまではこんなオノマトペのひとつになっていて、ほとんどの日本人はムキムキの由来を知らない。
やっぱり日本語という胃袋の消化能力は本当に強い。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。