去年、韓国の観光業界は希望に満ちていた。
「2015年に韓国を訪れる外国人旅行者の数は、過去最高になるだろう」という予測がでていたから。
2015年1月7日、韓国・聯合ニュースによると、韓国文化観光研究院は、今年、韓国を訪れる外国人観光客数が1620万人を超え、過去最高に達するとの予測を発表した。
外国人の旅行客のなかで、特に多いのが中国人。
2014年は、観光で韓国を訪れた外国人のうち中国人が約40%をしめていた。
ちなみに日本人の旅行者は約16%で、中国人についで2番目に多い。
05年には訪韓外国人の40%を日本人が占めていたが、昨年は16.1%に激減、一方で中国人は11.8%から大きく増加し43.1%を占めた。
今思うと、日本での韓流ブームが懐かしい。
この中国人の韓国旅行ブームを知った韓国人は、いろいろな感想をネットに書き込んでいる。
「再訪率は最悪な上に外国人観光客全体の80%は中国人というのが現実なはず。中国人観光客に対しては、野蛮と見下さず歓迎すべきだ。後で痛い目を見る」
「日本の放射能汚染のおかげで韓国の観光業が潤った」
中国人の爆買いの力は韓国でも圧倒的で、観光にかかわる多くの韓国人を狂喜させた。
昨年外国人に最も売れた商品は、中国人の84.4%が買った香水・化粧品で全体の6割近くを購入。
日本人の観光客が激減して、中国人観光客が激増した。
そうしたら、韓国のお店も当然「中国人向け」に変えられる。
多くの店が、中国人や中国語を話す韓国人を雇ったり、中国人が好きな品揃えにしたりと店を中国人仕様にした。

韓国の観光地には、中国語の看板も多い。
ここは、仁寺洞(インサドン)。
この北側に両班という貴族たちが住んでいて、お金がなくなったときにここで家財を売っていたことから、工芸品を売買するところとなったという。
韓国の観光業界が期待に目を輝かせて、胸をワクワクさせていた昨年から一年が過ぎた。
今はどうなっているのか?
2016年の末、韓国の観光業界には悲鳴が聞こえるという。
韓国観光業界が悲鳴!日韓GSOMIA締結でうそのように消えた中国人観光客=韓国ネット「自業自得」「指導者を選び間違ったせいで…」
2016年12月8日、韓国・ソウル新聞によると、韓国への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備決定や日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結による中韓関係の冷え込みが、訪韓中国人観光客の激減という形で表れている。
特に影響が大きいのが、一時は中国人であふれたソウルの明洞や東大門の商店や問屋だ。
今年7月には、92万人の中国人がソウルの繁華街「明洞(ミョンドン)」を訪れていた。
けれど、10月には68万人に激減してしまったという。
中国語がとびかっていた明洞から中国人旅行者の姿は消えて、明洞の店は大きなダメージを受けている。
中国人に人気のショッピングストリートとして知られた明洞の場合、今年7月に92万人近く訪れた中国人観光客が10月には68万人余りと、3カ月で25%近く減少した。ある飲食店の店主は、「GSOMIA締結の発表直後からうそのように中国人が来なくなり、売り上げは2割以上減った」と嘆く。
(同記事)
特に「中国人シフト」にしていた店ほど、ダメージは大きい。
屋台を営んでいたキムさんは肩を落とす。
中国人観光客が好む屋台の被害はさらに大きい。客の8割が中国人だったというキムさんの屋台は、最近になって売り上げが4割ほど減少したという。
(同記事)
韓国に来る中国人は、個人的な目的で買い物をするだけではない。
韓国で大量の衣類を買って中国で売るという、仕入れのために訪韓していた中国人もたくさんいた。
その中国人もいなくなって、東大門の店では危機的な状況におちいっているらしい。
衣料品をメーンに扱う東大門市場でも、これまで買い付けに来ていた中国人商人の姿が最近は大幅に減っている。衣料品問屋で働き25年目というイさんは「昨年の今ごろと比べ売り上げが35%も落ちた。こういう雰囲気が来年春まで続けば、東大門で生き残れる店はないだろう」と話す。
(同記事)
韓国の観光業界や商店にとって頭が痛いことは、中国人減少のもっとも大きな原因は韓国観光にはないこと。
ぼったくりやホテル不足といったことなら、韓国の問題だから韓国が改善できる。
中国人の減少は、韓国と中国の対立という政治的な理由だから、韓国が観光キャンペーンをしたり、赤字セールをしたりしたところで客の回復は望めない。
中国共産党が政治的な理由で、韓国に行く中国人の数を減らしているのだから、韓国の観光業界ではどうしようもできない。
韓国の旅行業界では、こうした厳しい状況は当分続くとみている。関係者の一人は「政治的な問題が原因だとすれば、中韓関係が良くならない限り、中国人観光客の増加は見込めないだろう」と話した。
(同記事)

こんな韓国の観光業界に、同情する韓国人はいる。
けれど、それまでの「中国人頼み」の姿勢を批判する人もまた多い。
一方で、
「今まではもうかってたんだろ。内需をばかにして」
「中国人ばかり優遇して自国民をクズ扱いしたからだ」
「韓国で商売するのに、中国人がいないと維持できない店なんて存在理由がないよ」
「単に元の状態に戻るだけ。もともともうかってたわけじゃないでしょ」
「いつまで中国人でもうかると思ってたの?そろそろ高品質と多様性にチャレンジして」など、韓国観光業界の姿勢を糾弾するコメントも目立った。
韓国にやってくる中国人が増えたことを受けて、さらに一儲けしようと店が考える。
そして中国人をターゲットに経営の戦略をしぼって、店を中国人用に整えた。
予想どおり中国人が来てくれたら笑いが止まらないけど、中国人が消えたら涙が止まらなくなる。
それが、中国人頼りだった韓国の店の現状。
でも、これは韓国だけのことではない。
中国人を頼りにしてきた日本の百貨店も、今似たような困難におちいっている。
次回、そのことを書きます。
おまけ
2016年12月12日の「Record china」に、中国が中国人旅行者を「外交の道具」にしているという記事をのせている。
観光客を武器とする中国=韓国、台湾、香港に「制裁」発動―米メディア
中国の複数の官僚、旅行業界関係者によると、中国政府は観光客を戦略資源として扱っており、中国と対立した国・地域への観光客数を絞っているという。
その苦しみに直面しているのが韓国だ。7月のTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)配備決定後、中国人観光客が急減した。さらに日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結など敏感な問題が多く、今後さらなる打撃が予想される。
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