「感情的で卑劣だ」と中国に怒った韓国が日本にしたこと

すこし前の話だけど、韓国が高高度防衛ミサイル（THAAD：サード）を国内に配置したとき、これに激怒した中国は報復（韓国の表現）を開始した。

中国政府は北京などに進出した韓国企業に税務調査を始め、韓国の芸能人の活動を厳しく制限する。（いわゆる限韓令）

韓国の全国紙・朝鮮日報は社説でこれを取り上げ、こう怒りをあらわにした。（2016/12/03）

政府機関でもなく、対応手段もない私企業に報復するというのは、大国の行為というには成熟していない、感情的なやり方だ。
卑劣という印象すら与える。中国政府のこうした行動を、国際社会は全て見守っている。
いつか、中国市場の力が落ちた時、全てブーメランとして返ってくるだろう。

THHAD憎しで韓国企業に報復する「大国」中国

これは当時の韓国の政府・メディア・国民の総意。

国内でのサード配備は北朝鮮の核の脅威があったからで、韓国政府の対応は仕方がなかったと個人的には同情していた。
それに外交的な対立で、相手政府ではなくて私企業に圧力を加えるという中国のやり方もたしかにムゴイ。

でも時代と相手が変わると、同じようなことをするのが韓国の悪いクセ。
またはご都合主義の二重基準。

きょねん日本が韓国に対し、貿易上で優遇するホワイト国から外すと発表すると、文政権は激怒して大統領が国民に向かってこう言った。

朝日新聞の記事（2019年8月2日）

文大統領「日本、盗っ人猛々しい」　ホワイト国除外で

日本のこの措置は、2018年に元徴用工訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた判決に対する「明白な経済報復だ」と言う。

サードのことはいざ知らず、これについては全面的に韓国が悪い。
この判決は日本との合意をひっくり返し、国際法にも違反する暴挙だったから日本が反発するのは当たり前。

でも文大統領は、「人類の普遍的な価値と国際法の大原則に違反する」「韓国経済への攻撃であり、その未来の成長を妨げようとする」と主張し、「国際社会からの指弾を免れることはできない」とどこかで聞いたようなセリフを口にする。

国のトップが「加害者である日本が、盗っ人たけだけしく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と呼びかけたことは、もはやゴーサインを出したも同然。
国民の反日感情に火がついて、全国的な日本製品の不買運動が展開された。

韓国の政府・与党が支持率アップのために、国民感情をあおって日本に怒りを向けさせるのはいつもの手。
2020年の選挙でも与党側は「反日マーケティング」を選挙戦略にしていたと、朝鮮日報の記事にある（2020/04/02）

政府・与党も総選挙を前に反日ムードを助長している。与党「共に民主党」は候補者たちに配布した「総選挙戦略・候補マニュアル」で「未来統合党は日本の安倍政権を擁護し、日本には一言の批判も言えない。わが国民は今回の選挙を『韓日戦』と呼ぶ」として反日マーケティングを隠していない。

もう一つの安全弁「韓日通貨スワップ」再開は霧散

これが成功して選挙は与党の大勝に終わる。

そういえば４年前、中央日報がこんな記事（2016.12.02）を載せていたっけ。

「中国で韓流制限令出された今こそ、韓流が中東・南米に目を向けるチャンス」

今回も同じようなことがあって、韓国には「日本の輸出規制は貿易の多角化に向けたチャンス」という声が上がったけど、具体的にどうなったかは知らない。

韓国の地下鉄（たぶんソウルメトロ）に貼られた不買を呼び掛けるステッカー
東京メトロがこんなことをしたら、「公的な機関が嫌韓なんて許せない！」とぶったたかれる。

外交問題は政府間で対応するべきで、国民を利用してはいけなかった。
韓国の国会議員やメディアも日本政府の措置を「日本の経済侵略」と連日連呼し、国民に燃料を与えていたから、ノージャパン運動は高いレベルで長続きして韓国にある日本企業は大きなダメージを受けた。

「私企業に報復するというのは、大国の行為というには成熟していない、感情的なやり方だ。卑劣という印象すら与える」と怒っていた自分たちが、相手が日本なら同じようなことをする。

共同通信の記事（8/13）によると、怒りの炎はまだ消えていない。

現在も不買運動を続けているとの回答は75％で、70％が今後も続けるとした。日韓関係悪化が長期化し、日本製品排除が韓国社会で定着している。

韓国、75％が不買運動を継続　日本製品排除、1年たち定着

不買運動に加えて新型コロナウイルス流行の影響もあって、日産自動車など韓国から撤退を決める日本企業も増えている。
このへんも、「全てブーメランとして返ってくるだろう」という韓国紙の予言どおり。
「成熟していない、感情的なやり方だ。卑劣という印象すら与える」と中国に向けて言った言葉も、そのまま韓国を直撃している。

おまけ

支持率アップのために、反日を利用するのは韓国政府のお約束。
でも、いまの文政権はその手を使い過ぎるため、韓国メディアから批判を受けている。

朝鮮日報の社説（2020/08/18）

支持率急落の韓国与党勢力、頼みは「反日フレーム」のみ

これも通じなくなると、政権にとっては本当の地獄がはじまる。