物を盗んだり、人を脅して金品を奪ったりするなど汚い仕事を始めると、日本語では「(悪事に)手を染める」なんて表現をする。
そして心を入れ替えてそういう闇社会から抜け出し、まっとうな仕事をするときは「足を洗う」という。
ただアニメの場合、「これを終わらせたら、オレはもうこの業界から足を洗うよ」と笑顔を見せたキャラは、仕事を達成したら組織に消されてしまって結局は足を洗えない。
という展開がよくあると思うんだ。
国が変われば、発想も言葉も変わる。
日本でいう「足」は中国では「手」になって、「もう悪いことはやめる」と言うとき、中国語では「手を洗う」(洗手不干)と表現するのだ。
英語でも「wash someone’s hands of 〜」になるから、この発想は中国と同じ。
日本では「手」じゃなくて、「足」になる理由についてはこの記事をどうぞ。
さて、これはインドネシアにあるホテルの壁だ。
「時間」は世界のどこでも貴重と考えられているから、「時は金なり」(The time is money)の表現は東洋でも西洋でも、きっと宇宙人にも通じる。
時も金も人類に共通して高い価値が置かれているけれど、価値のないモノは国や地域によって大きく違う。
そして、そういう価値観や文化は言葉に表れる。
世界的にみても雨が本当にたくさん降って、豊かな森林のある日本では、干ばつなどの異常気象でもない限り、海外に比べたら水はわりと簡単に手に入る。
昔から深刻な水不足に悩まされてきたイスラエルでは、水を掘りあてると人びとは歓喜の踊りをしてそれが「マイム・マイム」になった。
*マイムはヘブライ語で「水」の意。
金銭など貴重なものを好き放題に使う、無駄使いをするといった意味で日本語には「湯水のように使う」という表現がある。
こんな言葉ができたのも日本には水が豊富にあるからで、少なくともこの表現ができたころは、水はもうほとんど価値がないと思われていたはず。
飲み水は有料が当たり前と考えるヨーロッパ人が日本に来ると、レストランではおいしい水が無料でサービスしてくれることに感激する場合もある。
このまえ中国人がネット投稿で「湯水のように使う」という日本語は、中国語だと「挥金如土」になると書いていた。
つまり日本の「湯水」は中国では「土」ってこと。
中国北部で水は大事にされていて、「滴水贵如油」(水は油のように貴重だ)という言葉があるほど。
*川の多い南部は船を使い、北部では馬に乗って移動することを意味する「南船北馬」という言葉があるように、中国は南北で風土が大きく違う。
でも土なら有り余るほどあるから、中国ではほとんど価値のないものと考えられていた。
それで金銭など貴重なものを惜しげもなく使うことを、中国語では「挥金如土」というそうだ。
トキやカネはどこの国でも同じように大事にされている。
でも価値のないものは、その土地や社会の条件によっていろいろと違っていて、それは文化や言葉から分かることもあるのだ。
とても貴重な物を与えても、本人がその価値を理解できなかったら何の意味もない。
そんなことを日本語で「豚に真珠」や「ネコに小判」というように、フランスでは「豚にジャム」、インドでは「サルにしょうが」という。
それぞれの表現に“っぽさ”が出ている。
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