「耳の戦争」と聞いても具体的にイメージできず、子ども向けアニメのタイトルみたいだ。でも、「ジェンキンスの耳の戦争(War of Jenkins’ Ear)」は18世紀に、イギリスとスペインとの間で起きたガチの戦争。
1739年のきょう10月23日、カリブ海での貿易をめぐって対立していた英蘭がついに激突した。
この戦い自体はあまり大したことはなかったが、これがきっかけでスペインとイギリスはオーストリア継承戦争(1740年 – 1748年)に巻きこれていく。これは、フランス、オーストリア、ドイツ、イタリア、スウェーデンなどが同盟を組んだり、敵になったりして争った大きな戦争で、オーストリアと組んだイギリスは、フランスやスペインと敵対し、ヨーロッパの歴史は大きく動いていく。
「耳の戦争」という変わった名前にはワケがある。
「イギリス初の首相」といわれるウォルポールは経済の安定と平和を重視し、国内で高まるスペインへの怒りをなんとか抑えて争いを避けてきた。しかし、それも限界をむかえた。
ある日、イギリス人の船長ロバート・ジェンキンスがスペインに拿捕され、その際スペイン人に耳を切り落とされた。イギリスに戻ったあと、彼は議会でそう主張し、塩漬けにされた自身の耳を証拠として提出した。
この事件のほかにも、さまざまな「スペイン人による略奪事件」があったため、イギリス人はこれを自国の名誉に対する侮辱であり、開戦理由になると理解したという。
The incident was considered alongside various other cases of “Spanish Depredations upon the British Subjects”, and was perceived as an insult to Britain’s honour and a clear casus belli.

ウォルポール首相に切断された耳を渡そうとするジェンキンス。
“切断された耳”を見せられ、「スペインだけは許せん!」とイギリス世論は沸騰し、ウォルポールも戦争に反対できなくなった。
ということで「ジェンキンスの耳の戦争」と呼ばれるようになる。

ウォルポール「わたしは戦争に反対だったんですけどね…」
こうして、1739年10月23日からカリブ海でスペインとの戦争が始まって、そのままオーストリア継承戦争に突入し、最終的に終わったのは1748年のこと。
「ジェンキンスの耳」がイギリス・スペインとの10年戦争の原因となったわけなんだが、実はそれが、スペイン人によって切り落とされたという話には根拠がない(no basis in fact)。
本当にそうかもしれないし、まったくの別件で耳を切断されたという説もある。
こんなもん今さら確認できるワケもないし、いっそのことその設定で映画化したらいい。
でも国民への侮辱や蛮行は、国家が戦争を始めるに値するという考え方がイギリスにあったのはの事実で、これは今の日本じゃ考えられない。
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コメント
コメント一覧 (1件)
非常に多くの自国民に対して、たとえば「テロ行為による殺戮」などの蛮行を犯すような国がもしあれば、おそらく、どこの国でも戦争を始めるに値する理由となり得ますよ。2001年9月11日の米国での同時多発テロは、まさに、そのような戦争を始めるきっかけとなりました。
今の日本は米国とでは、その「きっかけとなるレベル」に違いはあるかもしれませんが、日本人にだって、国としてまとまって自己防衛する本能と権利は当然あります。それこそが軍隊の意味であり、義務と責任です。