【韓国人の視点】日本統治を経験したのに、台湾人はなぜ親日?

 

きのう19日に台湾人の Hsu Hsu さんが、韓国だったら天地がひっくり返るような日常をSNSにアップしてくれた。
それは「杉浦茂峰少尉のお誕生日(御神体入魂式の記念日)」のようすだ。
杉浦茂峰(すぎうら しげみね)は旧日本軍の軍人で、自分を犠牲にして村人を守ったことから地元の人から「飛虎将軍」という神にされて、日本でいえば神社のような「廟」に祀られている。
ご神体である彼の像に魂を入れた日がきのう19日だったから(入魂式はずっと前)、多くの台湾の人たちがこの廟に足を運んで手を合わせたという。

杉浦についてくわしいことはこの記事を。

台湾で“神”となった日本軍人・杉浦茂峰が残してくれたもの

 

 

旧日本軍の軍人が神になって祀られて、旭日旗の飾られた廟で手を合わせる人がいたら、韓国ならショッキングな事件になる。

 

日本の隣人である台湾さんと韓国さんには、日本統治という共通点がある。
同じ歴史があっても、当時やいまの日本に対する認識や見方がまったく違うことから、日本では韓国と台湾を見て、「どうして差がついたのか…慢心、環境の違い」といった議論がネットでたまにあり。

「なんでここまで違うのか?」という思いは韓国人にもあるようで、コリア・エコノミクスがこんな記事を載せた。(2021年11月8日)

韓国紙「台湾はなぜ日本統治期に寛大なのか」「韓国では想像すらできない…二重的歴史認識」

韓国メディアのオーマイニュースが『半世紀日本の植民地だった台湾が日本に寛大な理由』を掲載し、台湾人が親日的なワケを分析する。

15世紀に侵入してきたオランダを撃退した鄭成功を、台湾人が尊敬して祀ることは韓国人にもわかる。
でも、統治時代の日本人の銅像をつくって、その時代を肯定的に考える台湾人についてオーマイニュースは「矛盾」という。
「(韓国人の)私たちがどうも納得できない見どころ」として、同紙は台南にある「赤崁楼」(せきかんろう)を挙げた。
赤崁楼の建物の中には、台南市長だった日本人の羽鳥又男を称える銅像が祀られているからだ。
台南の文化や伝統を積極的に保護し、赤崁楼の修復作業を進めたことで知られる羽鳥又男は、地域の教育・発展に貢献したことが認められ、台南の人たちによって像が立てられて今でも尊敬の対象となっている。

韓国人の価値観からすると、羽鳥又男氏はこんな人物になるらしい。

記録通りなら植民統治の走狗として、台湾の人々の国民的避難を受けて然るべき物のはずだが、私たちとは異なりそのような雰囲気を全く感じることができない。銅像の前で礼をする人々がいるほどだ

*「避難」は「非難」の間違い。

 

ほかにも、台南にあるデパートが統治時代の名前や建物をそのまま残していることに触れ、「いくら日本資本であっても、韓国ではそのような名前を使うというのは想像すらできないことだ」と驚く。
ソウルにある新世界百貨店がまさにソレ。
1930年に韓国で最初の百貨店として「三越京城店貨店」がオープンし、戦後、韓国人経営になると日本色を一掃して「新世界百貨店」に改名した。
でも、「韓国初」というオイシイところは引き継いで、2015年に創業85周年をアピールしたから、韓国内で批判の声が上がった。

また、「日本の助けがなければ台湾の近代化は大変だっただろう」と気軽に話す台湾人がいることは、韓国では考えられないという。
そして、「私たちより15年も長く日帝植民地時代を経験しながらも台湾の人々からは私たちのような《反日感情》を探しにくい」と、その寛大さをもはやミステリーのように感じている。

韓国と台湾のと歴史認識の違いについてオーマイニュースは、台湾人が帝国主義時代の歴史で日本だけは例外と考えるから、彼らは「洗脳された」から、などと親日の背景を分析する。
韓国の視点だと、「彼らは歴史上一度も自分の国を持ったことがない」という違いが大きい。
オランダ・中国・日本・国民党と「支配者が変わってきた歴史がそうさせたのではないか」とこの韓国紙は主張する。

この記事に韓国のネット民は、

・自分も台南に行ったことがあるがメンタルをやられた…我々と日本帝国主義への評価があまりにも違って当惑した記憶がある…
・俺も行ったことがあるが、国民党があまりに酷かったので、日本が相対的に良かったと言ってたよ
・清国の支配があまりに惨かったから日本の支配が良かったと思うのさ。

といったコメントを書き込み、なかには「我が国ほど反日の国は無い」という自嘲気味の意見もある。

 

現在の台湾人が日本に親近感以上のものを感じる理由は、日本のあとに来た「国民党があまりに酷かった」ということは確かにある。
ルールを無視したり暴力的だった国民党の中国人と、統治時代の日本人とのギャップは知人の台湾人も指摘していた。
それで戦後は日本人を「犬」、中国人(外省人)を「豚」にたとえて「犬去りて、豚来たる(狗去豬來)」という言葉が台湾社会で流行ったという。

まわりの台湾人に聞いても日本の統治を肯定的に評価する人は多いし、感謝する人もいるけれど、当然、反対の見方をする人もいるから、それ前提で話を進めるのはやめるべし。
あの時代には、霧社事件のような悲惨な事件も起きていて、良い/悪いのどちらか一方で割り切れるものでもない。

必読!台湾人が日本を好きな理由・日本人が台湾を好きな理由。

 

でも、全体的にみれば韓国とは別天地。
統治時代の日本人の像を地面に埋めることはあっても、保存したり新しくつくって祀ることは韓国社会でありえない。
特に日本軍の軍人を神にする発想は、韓国の歴史認識や価値観を根底からひっくり返すものだから、そんな台湾の現実を目の当たりにすると、「メンタルをやられた…」となるのも当然。
韓国と台湾、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い。
それは結局は歴史の伝え方、つまり教育の違いだ。

 

日台友好を目的に最近、福島県の伝統工芸を紹介する展覧会が開かれた。
韓国では「福島」に敏感に反応する人が多いから、これはきっと無理だろう。
福島でなくても、こんな文化祭ができたかどうか。

 

 

 

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1 個のコメント

  • > 韓国と台湾のと歴史認識の違いについてオーマイニュースは、台湾人が帝国主義時代の歴史で日本だけは例外と考えるから、彼らは「洗脳された」から、などと親日の背景を分析する。

    彼らは、「自分たちが『洗脳された』から」という理由を想定して反日の背景を分析することには、思い至らないのでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。