アメリカ人とイギリス人と一緒にファミレスに行くと、テーブルの上にこんな広告があったから、イギリス人が「ナンデスカコレハ?」と違和感をおぼえた。
日本語で書かれたこの広告は、主に日本人を対象にしたモデル募集のはず。
なのになんで日本人ではなく、いま日本で一番多い外国人のベトナム人でもなくて、白人の女の子を使っているのか?
その答えは日本人の「白人コンプレックス」だ。
2010年代でも芸能界の一部やファッションモデル業界における白人や白人系ハーフを起用する傾向は浸透している。一方で白人でない外国人の広告への起用は稀である。
「白=美しい」という価値観はい最近の欧米社会では、差別的なニュアンスがあるという。
このときいた2人は白人の女の子だけというのは不自然だから、せめて日本人のモデルと一緒に写っていればよかったという。
まぁこれには同感ですわ。
いま世界的に、特に白人の多い国では「白」への見方が厳しくなっている。
サッカー日本代表が「サムライブルー」と呼ばれるように、ニュージーランドの男子代表チームには「オールホワイツ(All Whites)」というニックネームがある。
代表選手が真っ白のユニフォームを使っていることからこの愛称がつけられた。
でも、現代の価値観とは合っていないということで、多様性の尊重をうたうサッカー協会は「オールホワイツ」の廃止を検討している。
AFPの記事(2021年8月23日)
サッカーNZ代表「オールホワイツ」の愛称廃止も 多様性推進の一環で
元NZ代表選手のライアン・ネルセン氏は「人種的な意味合いがあると捉(とら)えられかねない名前は好ましくない」、「ほんの少数でも不快に思う人がいるなら、私にとっては変更する理由として十分だ」と変更を支持。
でも一方で、チームの歴史に対する誇りが失われかねないし、「完全にばかげている」と指摘するスポーツキャスターもいて、NZ国内では「All Whites」をめぐって激しい議論が起こった。
いまの欧米社会で「人種差別」のレッテルを張られることは致命的だから、それに1ミリでもつながる可能性のあるものは排除しようとする動きが進んでいる。
このまえ紹介した米大リーグの「インディアンス」から「ガーディアンズ」への変更もその流れにある。
日本は伝統的に、白人による異人種への蔑視や差別とは無縁の社会だったから、ネットの反応をみても「オールホワイツ廃止」に共感する人は少ない。
・意識し過ぎで笑えてくる奴か
・連想ゲームいい加減にしろ
・カラーと人種は分けるべき
・紳士が野蛮人の真似事をするのがラグビー
野蛮人が紳士のふりをするのがサッカー
・ほんとくだらねー
・オールブラックスはええんか?
白人のヨーロッパ人がアフリカの黒人を奴隷として家畜同然に扱っていたこと、先住民を虐殺したりその土地を奪ったという闇歴史は日本にはない。
だから「白」に対して鈍感で、広告に白人モデルだけがいても特に問題視されることはない。
でも欧米人なら、歴史的背景から「肌の色」にはどうしても敏感になる。
あの広告を見てどう思うか、ドイツ人とアメリカ人に意見を聞いてみたんでそれを紹介しようと思う。
〇30代のドイツ人男性の感想
日本人は肌が白いから白人だと思う。
日本人や韓国人などのアジア人を「イエロー」と表すことは知らなかった。肌が黄色には見えない。
あの広告ではモデルが白人ということより、これはきっとアメリカ人だから、なんで日本人ではなくて外国人を使っているのかがわからない。
アメリカならいろんな人種のモデルを起用するのが適切なんだろうけど、日本で白人や黒人を入れたら社会と合ってないしおかしいと思う。
ドイツだったら、このポスターは「多様性への配慮に欠けている」と批判される。
アフリカ人やトルコ人などいろんな肌の色の人がいるから、白人を“ドイツの代表”のように表現するのはマズい。
いまヨーロッパでは白を美しいとする感覚はどんどん減っていて、多様性が重視されているから、いろんな「美」が見直されている。
〇20代のアメリカ人女性の感想
この広告はおかしい。
白人だけのモデルというのはアメリカならひと昔前の、時代遅れのイメージがある。
いまのアメリカでは「美白」を口にするのはタブーという雰囲気があるし、広告のモデルが白人だけというのは、米社会が最も大事する「多様性」の価値観に逆行するものだからきっと叩かれる。
アメリカではいまでも白人が大きな力を持っているけど、有名人がそれを強調するのはマイナスだから、最近では肌を黒くする白人セレブがよくいる。
たとえばキム・カーダシアンやアリアナ・グランデは肌を黒くしたり、肌を黒く見せようとするから、まあこれはこれで批判はされる。
でもいまのアメリカで、白をアピールするのはバカのすること。
ここ最近のアメリカ人の価値観を象徴しているのはアカデミー賞。
白人の受賞者があまりに多いと批判されたことを受けて、今後は多様性を重要な基準にすると発表したことは、アメリカ人の意識の変化をよく表している。
CNNニュース(2020.09.09)
米アカデミー賞、24年に多様性の基準を導入へ
2016年には、俳優部門でノミネートされた人が全員白人だったという、とても分かりやすいことをしたことで大炎上し、授賞式のボイコットや「#OscarsSoWhite(アカデミー賞はあまりに白い)」のハッシュタグの拡散を招いた。
アメリカ社会では白人・黒人・ヒスパニック・アジア人のいろんな人種をバランスよく配合することは、都市部や大きな組織では欠かせない配慮になっている。
そんな国に住む人から見ると、この広告には「コレジャナイ」という違和感しかないらしい。
日本が移民大国のアメリカのマネをして、「黄・白・黒‥」と複数の色を同時に見せる必要はないとしても、「白人崇拝」や 「白人コンプレックス」はいい加減卒業した方がいい。
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「色々と雑多な宗教があり、それらの複数を信仰・尊重する」という価値観を有する人々は、「多様性を重視する」うちには入らないのですかね?
人間以外の様々な動物を食することはどうなんですかね?
白人崇拝というと、昔の日本の有名漫画家たちの作品が思い浮かびます。
・石森章太郎・・リュウの道(TVアニメでは「原始少年リュウ」)、サイボーグ009の第1話(詳細は忘れましたけど)
・手塚治虫・・・ジャングル大帝(白いライオン「レオ」の物語)、他に「火の鳥」「ブラック・ジャック」にもその手の話があったかな?
両者とも既に故人です。昔は、それが当たり前だったのでしょうねぇ。
そう言えば、今では「ちびくろサンボ」という童話も出版されなくなったのですか。時代は変わりました。