日本は「ダメの見本」ですか? 韓国紙の報道に異議と違和感

 

「ダメになった」、「凋落」、「縮小・撤退が続く」

日本の半導体についてネットで検索したら、いろんな記事のタイトルにこんなネガティブな言葉が使われていた。
それもそのはず。
日本半導体産業は1980年代後半は世界シェアの約50%を占めていたのに、2019年には10%にまで縮小してしまった。これはライザップもビックリのレベル。
逆に急成長しているのがアジア諸国だ。
80年代後半のシェアはわずか数%だったのに、いまでは約25%になって勢いが止まんない。
世界と現実をみれば、日本の半導体産業が落ちぶれていることは間違いないから、ニュースではウツな言葉がどうしてもセットになってくる。

でも韓国メディアの表現には、「上から目線」があると思う。
全国紙の中央日報はこんな見出しをつけて報じた。(2022.01.12)

「日本のように完全に衰退しかねない」韓国半導体危機論の根拠

世界の主要国が積極的な半導体投資を行って技術の獲得に乗り出しているから、韓国の足場が狭まりつつあるという。
まあ韓国のことは韓国にまかせるとして、気になるのは日本に対する視線と報道だ。
全盛期に比べると凋落したとはいえ、日本はまだ10%ほどの世界シェアを保っているのに、「完全衰退」と”ダメの見本”のようにいう。

でも、その具体的な現状や根拠についての記述はなし。
韓国の大学教授が「半導体激変期に我々が先頭に立たなければ今後10~20年、遅くとも30年以内には」日本のようになってしまうと言っただけで、日本が完全衰退したという中身については特に書いてない。
それどころか、こんな情報をサラリと載せる。

そのうえ半導体供給の基礎段階である「素材・部品・装備(素部装)」分野では日本の依存度が依然と高いことが分かった。

 

いま現在、韓国が半導体素材を最も多く輸入している国は圧倒的に日本(38.5%)で、半導体素部装のうち、国別依存度でも日本(40.7%)が最も高いという。
つまり、日本が部品供給をストップしたら、韓国の半導体は完全に衰退しかねないのだ。
もちろんそんなコトになったら日本企業もダメージを負うし、日韓双方が望まない事態は起こることはない。と言いたいところなんだが、日本と韓国の間では“マジで?”や“まさか!”があるからわからん。

これからも韓国が「半導体強国」としての地位をキープするためには、いまここで危機感を持つ必要があって、国民に広くそれを伝えるには日本を”だし”に使う報道が有効だ。
韓国メディアにはそんな意図があって、特に悪気はないのだろう。でも、いまは韓国紙の報道がリアルタイムで日本にも伝わるから、国内向けの記事を日本人が読むと当然、こんな感想を持つ。

・その衰退した日本から素材や製造機材を仕入れないと作れないのが韓国の半導体では?
・ようするに基礎部分をおろそかにして上屋だけを建てている工務店みたいなもんでしょ。
・日本が中国が尿素でしたように輸出を停止したら終わりってことでしょう?
・その状況でどうして自分たちの方が勝っていると上から発言できるのでしょうか?

 

中央日報は1か月前にも記事にこんな見出しをつけた。(2021.12.06)

韓国金融委員長「失われた20年」に言及…「日本の轍を踏まないようあらかじめ対応を」

コ・スンボム金融委員長が記者に向かって、「日本のようにならないようにあらかじめ対応しよう。」と発言した。
この記事への日本人の反応は知らないけど、また日本を”ダメの見本”のように捉えているから、さっきと同じようにほとんどの人をイラっとさせはずだ。
日本からの部品供給以上に、通貨スワップを必要としているのは韓国の方では?
誇張や誤解をまねく表現が当たり前のネットメディアじゃなくて全国紙なんだから、もう少し穏やかに報道してほしいところデス。
(朝日新聞や読売新聞が「韓国のようになるな」と露骨に書くのは見たことない)
こんな報道が当たり前になると、日本に対する「上から目線」の見方が国民の間でもスタンダードになりかねない。

 

 

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

1 個のコメント

  • > 韓国メディアにはそんな意図があって、特に悪気はないのだろう。

    ははははは、私の目には「悪気だらけ」にしか見えませんがね。
    それで国民の不満をガス抜きすることは韓国メディアの基本路線です。
    ま、こちらが何か言ってもどうせ聞く耳持たないのだから、自分たちで改めるより他ありませんから。どうぞご勝手に。
    最近、次第にウォン安が進行しているようですが・・・。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。