日本と違いすぎるアフリカの成人式 割礼は人権侵害デス

 

1月のある日曜日、タンザニア出身のアフリカ人(30代・男性)と一緒に浜松にあるお寺へ行ってきた。
入り口(山門)から中に入ろうとすると、向こうに着物を着た4人の若い女性が立ち話をしているから、「今日は何か特別な日なのか?」と質問されたでござる。
この格好で葬式のはずはないし、これは…、これは成人式か!とピコーンときた。
日本にいるのに「kimono」を知らなかった彼は、「とてもキレイで素晴らしい!」とやまとなでしこを絶賛。

 

 

そこから話題は宗教から成人式へと変わる。

日本では各自治体がお祝いイベントを開いて、着物やスーツを着た新成人がそれに参加する。
それを公民館で行う自治体があれば、ディズニーランドで開催するところもあって国内格差は深刻だ。
日本の成人式は同窓会を兼ねていて、そのあと一緒に飲み食いする人も多いし、羽目を外しすぎて捕まるバカもいやがる。

そんな話をすると、「あの伝統的衣装といい、日本の成人式はとても楽しそうだな。うらやましいよ」とアフリカ人がため息をつく。
楽しくない成人式なんてあるのか? と思ったボクはまだ世界を知らなかった。

「いまタンザニアでは、成人式はだんだんと禁止されているんだよ。あれは人権侵害だからね」

そうそう。成人式は本当に残酷で、って何の話デス?
それはバンジージャンプの起源といわれるバヌアツの「ナゴール」のような、高いところから無理やりジャンプさせられる成人式(通過儀礼)みたいな?

「人権侵害の成人式」に引っかかって、それについてくわしく聞こうとしところで、「あの着物の女性と一緒に写真を撮りたい。君が頼んでくれないか?」と言われた。
「すみませんが、彼があなたたちと一緒に…」と外国人タレントの付き人みたいなことをしている間に、タンザニアの成人式のことはすっかり忘れた。

 

なので後日、メールで聞いてみるとこんな返事がきた。

「Coming of age ceremony means a child turn into an adult after becoming 18 years. The ceremony included circumcision of both male and female children using shared local knife (blunt knife) which was deemed unhygienic and reduces female desire towards men.」

タンザニアの成人式とは18歳になった子どもが大人になる儀式のこと。
この儀式では、男女ともにナイフを使って不衛生な割礼(circumcision)を行う。
女性にとっては、男性への欲望をなくすためのもの。

 

ということで、彼のいう成人式とは割礼のことだと判明。
割礼はユダヤ教徒、イスラム教徒、一部アフリカ人などがする風習で、ナイフや鋭い石などで男女の性器の一部、または全体を切ったり切除したりする。
男の場合は包皮を切り取る包茎手術のようなものだから、これはまだいいとして、女の方は性器に刃物を入れられるから、生死にも関わるし地獄の苦痛は避けられない。
むかし見たテレビ番組では大勢の大人に押さえ付けられて、本人が泣き叫ぶなかでこの儀式が行われていた。

参考までにユーチューブ動画をここに載せようかと思ったけど、サムネイルを見ただけ無理。
日本の成人式では着物を着た女の子がミッキーやミニーに祝福されて、プレゼントまでもらうというのに…。

この目的は、女性の場合はさっき書いたとおりで、男性の場合は不浄とされる包皮を切除することだという。
2019年にはイタリアで割礼を行った生後5カ月の赤ちゃんが死亡するなど、アメリカやドイツなどでも割礼は社会問題になっている。
それで国連は2月6日を「女性器切除(女子割礼)の根絶のための国際デー」と定めた。

 

小児への割礼(1870年ごろ)

 

割礼はユダヤ・イスラム教徒がすることと思っていたんだが、タンザニア人の話によるとそうでもない。

「No, Christian do it hygienically to male only. That one was done as custom during local ritual ceremony」

キリスト教では衛生的に男性だけにする。
割礼はその土地の祭礼儀式で習慣として行われていたものだ。

ただ割礼を成人の通過儀礼にするのは、アフリカの北部や東部で全体ではないらしい。
日本の成人式については若者のモラル低下などから、「もう止めてもいいのでは?」という声がある。
でもアフリカの成人式はそれとは違い、違いすぎて別もので、どうみても人権侵害だからすぐに、今週中にも廃止していい。

 

 

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3 件のコメント

  • > 日本と違いすぎるアフリカの成人式 割礼は人権侵害デス

    このタイトルは、ちょっと誤解を招きそうで好ましくないですね。「女子割礼は人権侵害」と正確に表現すべきだと思います。というのも、「割礼(=男性器の包皮先端の一部を除去する行為)」は、欧米、中東、アフリカ、その他世界三大一神教の成立と信仰に深い関わりがあるからです。
    「割礼」という行為は、もともと、中東地域においてはユダヤ民族を含めて多くの人々の間で成人式等の儀式として一般的に行われてきた行為だったのです。特にユダヤ教では、「割礼」することを「神との契約の証」としてみなしていました。(旧約聖書:創世記17章、新約聖書:ルカ福音書)
    それと反対に、当時のヨーロッパ、特に一神教が広まる以前のギリシャ・ローマ文明では、包皮の先から陰茎を剥き出しにする行為は非常に野蛮な風習だと思われていて、割礼手術を受けるような者は「野蛮人」だと思われていたのです。そのことは、例えば、ギリシャ・ローマ時代やルネサンス時代の男性裸像彫刻の局部を見ても明らかです。

  • ローマ時代になって、ヨーロッパにイエスの教え(=原始キリスト教)が広まるにつれて、「入信するのに割礼は必須か?」という点が大問題となり、使徒たちの間で討論された結果、「割礼は必要ない」という結論が得られました。(新約聖書:使徒行伝15章) この合意によりイエスの教えの信者は激増し、やがて教会組織ができて、カトリックとして確立していくのです。
    そのようなキリスト教(カトリック)の成立の流れを汲んで現在でも、ヨーロッパのキリスト教信者には、割礼手術を受ける人はほぼいません。(F.フォーサイス「オデッサ・ファイル」、ゴルゴ13 第23巻3「潜入者の素顔」、A.C.クラーク「3001年終局の旅」) さらに現在のヨーロッパでは、自然の状態に戻すために「包皮回復手術」や「処女膜回復手術」を受ける者も多いのだとか。

    しかし米国での事情は違っていて、アメリカ移民が既存カトリック勢力に反抗する復古主義や福音主義から始まったことと、アメリカへ移民したユダヤ教徒に医療関係者が多かったことから、「衛生確保、性病防止、性欲抑制」などの観点から、割礼(包茎手術)を誕生直後(洗礼式の年代?)に受けることが一般的になりました。今でも米国とカナダでは赤子の時に「Circum Surgery」を受けた人が多数派です。(向こうで会話した多くのMomsが皆、そう言っていました。因みにヒスパニック男性に対する蔑視の要因でもあるとか。)
    この習慣は、米軍が駐留した韓国やフィリピンにも広がっています。特に徴兵制が残っている韓国においては、軍隊生活に入る前に包茎手術を受ける男子がとても多いようです、

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。