【日本の姓】源氏は“天皇と同じ源”、平氏は“平安京”から

 

このまえ知り合ったタイ人に名字を聞いたら、「日本人と違って、長くて覚えられないですよ~」と言うから、それでもいいからと言ってもらったら、やっぱり長くて覚えられなかった。
昔のタイでは、王族や貴族でもない庶民に名字なんてものは必要なくて、1913年に政府から法律が出て、すべての国民が名字を持つようになる。
そのタイ人の話では当時は、「長い名字ほど貴族や王族みたいでカッコいい」という中二病的な空気があって、国民は利便性よりも、「長くすること」を目的に名字を付けたから今みたいになったとか。

タイの首都名が世界一長いのも、いろんな言葉をくっ付けてカッコよくしたからでは?

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同じアジアの国の日本でも、タイとだいたい同じころ、明治府から1875(明治8)年に、すべての国民は名字を持つようにという法令が出された。
近代国家を目指すなら、国民に名字は必須。
江戸時代までの庶民なら、そんなものがなくても生活で困ることはなかったから、名字を必要としたのは武士や公家などの上級国民だけ。

さて、きょう4月19日は1160年に、平氏との戦い(平治の乱)に敗れた源頼朝が伊豆に流された日だ。
この平(たいら)や源(みなもと)は、名字と違って「姓」になる。
名字も姓も英語にしたら「ファミリーネーム」で同じなんだが、歴史をたどると、名字より姓のほうが早く誕生した。
古代の日本で名門一族として繁栄したのが源氏・平氏・藤原氏・橘(たちばな)氏で、この四姓を「源平藤橘」と表現する。
名字との違いとしては、高貴な人たちの姓には「みなもとの」「たいらの」「ふじわらの」というように「の」が入る。
この「源平藤橘」の中の源と平は、皇族が臣籍に降下した(一般人になる)ときに与えられたものだ。
平安時代になると、皇族のために使う出費が増えて財政を圧迫したから、臣籍降下させて経費削減をねらったらしい。

 

9世紀の初め、嵯峨天皇の8人の子供が臣籍降下したとき、源姓を与えられたのが源氏(嵯峨源氏)の始まりになった。
そして同じ9世紀、清和天皇が臣籍降下した子供らに源氏を与えて「清和源氏」が 誕生し、後にこの一族から源頼朝が生まれて武家のトップになる。
「源」とは皇室と同じ源(みなもと)でという意味で、源氏には、その始まりとなる天皇ごとに21の流派(源氏二十一流)がある。
『ドラえもん』に出てくるしずかちゃんの本名は「源 静香(みなもと しずか)」だから、きっとこの「源氏二十一流」のどこかの出身だ。

「平」も源と同じく天皇から始まった。
桓武天皇が臣籍降下した自分の子供に「平」を与えて「桓武平氏」が生まれて以来、仁明天皇から「仁明平氏」、文徳天皇から「文徳平氏」などが誕生した。
平治の乱に勝利して源頼朝を伊豆に流して、日本初の武家政権をつくった平清盛は桓武平氏の人間だ。
「平」の由来は、その始まりである「桓武平氏」の生みの親、桓武天皇が築いた都の平安京にちなむといわれる。
タイ人と違って、「源平藤橘」はシンプルで覚えやすし。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。