ほんじつ5月18日は、アメリカでこんなことがあった日だ。
1896年に最高裁がプレッシー対ファーガソン裁判で、「公共施設での黒人分離は人種差別に当たらない」という判決を出した。(分離すれども平等)
2018年にテキサス州の高校で銃乱射事件が発生して10人が死亡。
人種差別や銃撃はアメリカ社会が抱える最も深刻な問題で、知人のアメリカ人はこの2つが心底イヤになったから、日本へ来ていまは楽しく生活している。
さて、ここで取り上げたいのは前者、黒人への人種差別だ。
もしバスや電車に「日本人専用席」があって、外国人がそこに座るのを違法としていたら、日本が世界中から「最悪の差別大国」と非難されても反論は不可能。
19世紀のアメリカ社会はちょうどそんな感じ。
1892年に黒人の血が少しあるけど、見た目は白人のプレッシーという男性が白人専用の車両に乗車した。
当時のルイジアナ州で彼は「有色(Colored)」の車両に座らなければならなかったから、これは違法行為になる。
席の移動を拒否して投獄されたプレッシーは、鉄道会社のほうこそ違法行為をはたらいたと裁判に訴えた。
結果、ファーガソン裁判官は鉄道会社の主張を認め、プレッシーは州の人種分離法へに違反したとして罰金を課せられた。
いまとなっては考えられないムゴイ人種差別を、このときアメリカは”合法”と認めてしまった。
くわしいことはこの記事を。
「これは差別ではなくて、区別だ!」という意見が通るケースもあるけど、現代の世界で白人専用車両はムリムリ。
当時は待合室も白人と“それ以外”で分けられていた。
プレッシー対ファーガソン裁判から100年以上が過ぎて、現代のアメリカ社会では異なる人種の融合ではなくて、共存が進んでいる。
といっても、差別意識がなくなったということはない。
もちろんそういう人もいるけれど、黒人への蔑視は心にしまって、「あいつは人種差別的だ」という非難を受けないよう表面上は差別をなくす動きがある。
20年ほどまえ、白人のジャーナリストで映画監督のマイケル・ムーアがアメリカ社会のそんな一面を鋭く批判した。
俺たちは必ず、「私の友人が―黒人なんですけどね…」と言う。黒人の友人がいることをアピールするわけだ。
黒人学校基金連合に寄付をし、黒人歴史月間を念頭に置き、たった1人しかいない黒人の従業員を、正面受付デスクに置く。
「見て下さい―私たちは人種差別なんてしていません。ちゃんと黒人を雇っていますよ」と主張するために。まさしく、俺たちはとても狡猾で、抜け目のない人種だ。
「アホでマヌケなアメリカ人 (柏書房) マイケル・ムーア」
最近のアメリカはというと、2020年に白人の警察官が黒人男性を暴行し殺害したことがきっかけで、全土で人種差別撤廃運動の「Black Lives Matter」(黒人の命は大切)が巻き起こった。
これによって、もともとタブー視されていた人種差別にさらに厳しい目が向けられるようになる。
その流れからアニメで白人の声優が、黒人やアジア系など違う人種のキャラの声を担当できなくなるとか、実写版『白雪姫』で始めてラテン系の女優が起用されるといった動きが起きた。
人種差別撤廃運動で結果的に白人は仕事を失い、そのぶん有色人種の人たちがチャンスをもらったことになる。
話を聞いた限り、アメリカ人の受け止め方は本当に人それぞれで、「白人への逆差別だ!」と怒る人もいれば、「これまでの特権が奪われて、フェアな世の中になっていく」と好意的にみる人もいる。
「これが時代の流れだよ」と淡々と受け入れる人もいるし、「自分には関係ないからどうでもいい」と関心を示さない人もいた。
100年ほど前は、白人専用車両に「Colored」が乗車すると違法行為として捕まった。
20年ほど前は「私たちは人種差別なんてしていません」アピールするために、黒人を雇って受付に座らせておいた。
そしていまでは、それまで白人が占めていた立場や地位を、有色人種が取って替わる動きが進んでいる。
でも、表立ってコレに反対することはできないから、見えないところで人種間の分断が広がっていく予感がする。
アメリカの人種差別⑦NYは肌の色で警官に射殺される確率が違う
> 全土で人種差別撤廃運動の「Black Lives Matter」(黒人の命は大切)が巻き起こった。
その日本語訳は、毎日新聞社に倣ったものですか。
だけど、ちょっと昔の日本語文法では、その言い方は「黒人の命は大切(でも白人のはそうじゃない)」という意味が強いのですが。副助詞「は」にそういう「選別」の意味を持たせるのは、特に理数系の学術論文で多用される使い方です。
もっとひねくれた読み方をする人だと、「黒人の命は大切(でも白人のはそうじゃない、ましてや東洋人なんかどうでもいい)」なんて歪んだ解釈も、できないことはありません。SNSとか見ていると、世の中にはそういう人が結構たくさんいるようですね。
日本語は難しいです。ピッタリの訳は何かないのかな?
でもこれ、必ずしも日本語だけの話じゃなくて、英語にもある程度は通じる同じ感覚が実はあるのです。そのことが、BLM運動やジェンダー平等運動に反発する人々が英語圏にも必ず現れる理由の一つなんです。
「黒人の命は大切(大事)」は読売新聞、毎日新聞、イギリスBBCが使っている訳で問題はありません。
いつも、楽しく読んでます。
kokonntouzaiさんの多義を含めた意訳ならどんな訳をつけますか?
近頃、ハリウッドがやりすぎでは?と思ったりします。
明らかに、過去には白人の姫しかいない童話に有色人種を登場させるのは違和感があります。
歴史ドラマや映画を軽薄にしてしまわないかと思うのです。
小さい頃に観たエリザベステイラーのクレオパトラという映画はさすがに変ですが。。白人ばかりだったから。
黄色人種の自分が意見しています。
ありがとうございます。
ボクなら「BLM」を「アメリカのこと」と訳します。
あれはアメリカが負っている独特の歴史や責任が背景にあるもので、他の国が同じことをする必要はありません。
それぞれの国の差別問題はその国に合わせた取り組みがあります。
人種に応じた俳優や声優の配役なんて日本じゃ無理ですし。