むずかしい隣国関係 高圧的な中国 vs 反発する韓国

 

「隣国とはいつも仲良くしないといけません。」って教えは小中学生にはいい。
でも高校生にもなったら、そろそろ現実的に考えないといけなくなる。
有名なイタリアの政治思想家のマキャベリは「隣国を援助する国は滅びる」と言う。
古代中国の政治家、范雎(はんしょ)は遠い国とは仲良くして、近くの国を攻略するという「遠交近攻」(えんこうきんこう)を説いた。

国と国の関係は、隣国が滅亡したら、自国も滅びるという運命共同体になってはいけない。
政治家の最も大事な仕事は国民の生命や財産、つまり国益を守ることだから、隣国がどうなっても自国は生き延びるようにしないといけない。
もちろんあえて敵対したり、挑発する必要はない。
基本的には自国の利益のために、隣国同士では良好な関係を築いておいた方がいい。
「いつも仲良し」というのは国民同士の個人的な関係で十分で、隣国の連帯保証人になってはいけないのだ。

 

さて、いまも韓国が中国との関係で頭を悩ませている。
韓国にとって中国は経済的に最も大事なパートナーなんだが、安全保障上では“敵”とはいかないまでも、警戒すべき相手ではある。
2021年に行われた世論調査では、中国を軍事的脅威と感じる韓国民は70%を超えた。
韓国にとってはいろんな意味で重大な影響力を持つ相手だから、中国との距離感がとても悩ましい。
中国は韓国にアレコレと口を出すから、韓国では保守派の人たちがよく怒る。
保守派メディアの朝鮮日報はきょうも社説でこう反発してた。(2022/07/29)

韓国のMD参加や他国との軍事同盟を行うかどうかは韓国自身が決定すべき事項であって、中国が関与する事案ではない。

韓国が守らなければならないのは「3不」ではなく国家主権

 

韓国の立場では、北朝鮮の核・ミサイルの脅威から国民を守るため、2017年にTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備した。
でも中国の立場からすると、それは国益を損ねることになるから、黙っているわけにはいかない。
それで中国と文前政権が話し合い、次の「3不」を確認したという。

・THAADの追加配備はしない。
・米国のミサイル防衛システム(MD)には参加しない。
・「韓米日同盟」は行わない。

中国はこの「3不」を韓国が約束したと主張するが、韓国はそれを否定し、それは政府の立場表明にすぎないと言う。
この「3不」について「話にならない内容」、「国家的な恥」とぶった切る朝鮮日報は、韓国が自国の安全を守るために、他国と何をしようとそれは韓国に決定権があり、中国が関与することではないと強調する。

 

そんな「3不」で「另約三論」を思い出した。
19世紀後半に開国して欧米との交流を始めると、朝鮮はそうした国に政府を代表する公使を派遣した。
でも、朝鮮を属国とみていた中国(清)には、この動きが気に食わない。
それで、中国を無視して他国と条約を結ばせないようにした。
中国は朝鮮に対して「全権」の二文字を使用禁止とし、次の「另約三論」を守るよう圧迫する。(中国朝鮮関係史

・朝鮮の公使が駐在国に赴任したら、必ず清国公使館に連絡をし、清国公使を通して相手国と交渉を行う。
・朝鮮公使は必ず清国公使の次席に座る。
・重要な交渉がある時は必ず事前に清国へ報告する。

要するに、中国の許可なく朝鮮は動くなと。
でも、駐米公使の朴定陽(パク・ジョンヤン)はこれを守らなかったから、怒った中国が朝鮮政府に働きかけてパクを帰国させた。
これは中国が朝鮮の自主・自立をガン無視して、第三国にも「属国」として印象付けるねらいがあったから、パクにはそれが不満だったのだろう。
でも、全体的な決定権が中国にあったことは否定できない。
この構図は中国の圧迫を受けて、「韓国自身が決定すべき事項であって、中国が関与する事案ではない。」と反発する今と変わらない。

韓国は伝統的に中国さえ怒らせなければ、平和や安定を保つことができたから、最上級の礼を示していた。
中国に従属的な朝鮮を見て、「(中国は)朝鮮のゆるぎない精神的な支配者」と表現したロシア人もいる。

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韓国にとって中国との関係は、今も昔もホントにむずかしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。