【菩薩とムハンマド】日本にいるイスラム教徒が感激したワケ

 

きょう8月10日は、全世界のイスラム教徒にとって記念すべき日。
伝承によると610年のこの日、アラビア半島のメッカ郊外にあるヒラー山の洞窟で、商人のムハンマドが瞑想にふけっていると大天使ジブリール(ガブリエル)が現れてアッラーの意思を伝えた。
これが後に聖書クルアーン(コーラン)にまとめられる。
この不思議体験によって、預言者として目覚めたムハンマドがイスラム教を説き始めると、その教えは世界中に広がって現在では19億人にまで達した。

 

洞窟で天使ジブリールから啓示を受けるムハンマド

 

人類の約4分の1という規模なのだから、いまの日本にもたくさんのイスラム教徒が住んでいる。
むしろ、こんな先進国にムスリムがいないほうがおかしい。

まえに日本の大学へ通うバングラデシュ人とインドネシア人のイスラム教徒(2人とも20代の女性)とハイキングへ行った時、「最近聞いた話で、とても印象的だったことある!」とバングラデシュ人が言いだす。
「え?それは何?」と言うしかない雰囲気になったから、その話とやらを聞くと、それは彼女が友人の日本人と行ったお寺で聞いた菩薩のことだった。
古代インドの言葉サンスクリット語で「悟りを求める人」を意味するボーディサットバ(bodhisattva)を中国人が漢字で「菩提薩埵」(ぼだいさった)と表現し、それを省略して菩薩になった。
*bodhi(菩提=悟り)+sattva(薩埵=人)の意味。

バングラデシュ人がお寺のお坊さんから聞いた話では、観音菩薩や地蔵菩薩といった菩薩はすでに悟りの境地に達していて、いつでも「涅槃(ねはん)」に行くことができる。
涅槃とは仏教における最終的なゴールで、輪廻の苦しみから解放された、最高に自由で幸福なところ。
苦しい修行を経てやっとそこへ行く資格を手に入れたのに、菩薩はそれを拒否して(あえてね)、苦しみや悩みをかかえる人びと(衆生)を救うために、この世に残って救済活動をしている。

そんな菩薩の話を聞いたイスラム教徒のバングラデシュ人は、「ムハンマドとそっくりじゃないですか!」と驚いた。
予言者となったムハンマドも自分が天国へ行くのを拒否して、この世にいる人びとを救うためにアッラーの教えを広めることに人生を捧げた。
だから彼女のなかでは、菩薩とムハンマドの思想や行動はピッタリ重なる。
この一致はもはや偶然とは思えず、仏教とイスラム教は歴史のどこかでつながっているのではないかと考えたと言う。

そんな話を聞いて、インドネシア人のイスラム教徒も激しく同意。
彼女が見た韓流ドラマで、迷える人びとを救うために菩薩が涅槃に行くのを拒否したということを知って、心が震えるほど感動したと話す。
その時はそれ以上のことは思わなかった。
でも、いまバングラデシュ人の話を聞くと、たしかにムハンマドと菩薩はよく似ていると言う。

 

「ムハンマドが天国へ行くのを拒否した」という部分は個人的には初耳で、いまネットで確認してもそんな話は出てこない。
が、2人ともそうだと太鼓判を押す。
無宗教のボクがイスラム教の知識でこの2人に勝てるはずないから、これについては特に反論も否定もしない。
バングラデシュ人の言うとおり、(大乗)仏教の菩薩信仰とイスラム教には関係があるかもしれない。
ただ多少の違いはあっても、この手の“救世主伝説”はキリスト教にもゾロアスター教にも、北斗の拳にもあるからそんなに珍しいことじゃないと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。