春は日本人にとって、言うまでもナッシングの桜のシーズンだ。
それはお隣さんも同じ。
韓国でもこの時期にはキレイな桜が全土で咲き誇り、人びとは花見に出かけては、SNSにお気に入りの一枚をアップして楽しみをシェアする。
ただ困ったことに韓国ではこのころになると、「日本のサクラ(ソメイヨシノ)は韓国が起源」といった主張が大手メディアに浮上する。
韓国の文化財庁までソメイヨシノの「韓国起源」を唱えるほど、この説は常識化している。
これは毎年くり返されることだから、「春の風物詩」とあきれる日本人もあり。
とはいえ、長年にわたるこの桜の起源論争については、最近になって日本で生まれたことが最終確認されたから、このところは「韓国起源説」も下火になってきている。
サクラをはじめマンガ、剣道、空手、お菓子、忍者、たくあん、折り紙などの日本文化についても「韓国が起源」と主張する人がいる。
ネット空間に国境なんて無いから、そんな韓国メディアの報道は一瞬で日本にも伝わって、「またか…」とウンザリする人や怒る人が出てきて、積もり積もって日韓関係にも影響を与えることになる。
韓国でこうした説が出てくることにはタイミングがあって、その日本文化が世界的に有名になると、起源説も提起されることが多い。
ただ残念ながら、日本での説得力や共感はほぼ皆無だ。
事実無根の起源説が別の起源説の根拠になるなど、仮説や希望的観測に基づいた虚構が「歴史的事実」として流布されている。
では視野をグローバルに広げてみよう。
日韓のこんな起源論争について、第三国の外国人はどう思うか、ドイツ人に聞いてみた。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756年 – 1791年)
なるほど。
きょう9月6日は1791年に、モーツァルトの歌劇『皇帝ティートの慈悲』がプラハで初めて上演された日か。
モーツァルトはオーストリア人だ。…と一般的に思われているが、ドイツ語を話すこともあって、彼をドイツ人と考える人もいる。
それでまえにドイツのテレビ局が「史上もっとも偉大なドイツ人は誰か」というアンケートにモーツァルトをノミネートしたところ、「オイこら!」とドイツのオーストリア大使館が抗議する事態に発展した。
日本と韓国の「起源論争」についてどう思うか?
ドイツ人に意見を求めると、彼はこのモーツァルトの話を持ち出す。
まず、そのドイツ人は日本が大好きだけど、日韓のそんな争いには1ミリも興味が無い。
ドイツだけにミカサの言葉を借りるなら、「不毛」のひと言かと。
彼はサクラを日本文化だと思っているが、もしそれが韓国起源だったとしても、自分が困ることは無いからハッキリ言えばどーでもいい。
自分には無関係で、まったく知らないことについて聞かれると困ってしまう。
それで彼はその問題をヨーロッパに置き換えて考え、似たようなコトとして「モーツァルトはオーストリア人か、それともドイツ人か?」の論争を取り上げた。
これと逆の発想(願い)から、ヒトラーはオーストリアで生まれたという理由で「ヤツはオーストリア人なんだ」と言うドイツ人もいる。
陸続きのヨーロッパ諸国では、歴史的に人の移動がよくあったし、国境は何度も変わっていたから、いまになって偉人(や悪魔)の帰属について議論になることがある。
でも、ある文化の起源をめぐって”奪い合い”になることは少ないようだ。
イタリア人がドイツのケルンで作って、いまでは「オーデコロン」というフランス語で世界的に有名な香水がある。
彼はこの香水の起源をめぐって、論争があるなんて聞いたことない。
日本と韓国の間には玄界灘があって、海で明確に隔てられているから、日本統治時代といった例外をのぞけば、歴史的に両国の国境が変わることはなかったし、交流はあっても人の移住は少なかった。
文化の起源をめぐって、よく論争がぼっ発するのはそんな背景があるからだ。
対して国境は流動的で、人の流入も多かったヨーロッパでは文化よりも特定の人物について、その帰属をめぐる論争が起こりそうな気がするのですよ。
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