イスラム教 vs 欧米:“女性とヒジャブ”をめぐるの価値観の違い

 

時間の流れは人類共通でも、その始まりは文化圏によって違う。
例えば西暦2022年は日本の皇紀だと2682年で、イスラム教のヒジュラ暦だと1443年だ。

【始まりの歴史】日本の皇紀・イスラム教のヒジュラ暦

このぐらいならノープロブレム。
でも、「女性とヒジャブ」をめぐって最近、イスラム世界と欧米の価値観がぶつかってニュースになった。
イスラム教で女性は、ヒジャブと言われる布で髪を隠すことになっている。
欧米ならその着用は完全に個人の自由で、これを義務とするイスラム教の考え方とは正反対。
それでヒジャブをイスラム教における女性抑圧のシンボルのようにみる欧米人もいる。

最近、イランの大統領とニューヨークでインタビューする予定だった米CNNの女性司会者が、直前になってヒジャブの代わりにスカーフで髪を隠すよう求められ、「NO」と拒否した。
するとイランの大統領も「NO」と言ってインタビューが流れてしまい、その出来事がニュースになった。

米CNNニュース(9/23)

イラン大統領、CNNインタビューに現れず 女性司会者がスカーフ着用断った後

クリスティアン・アマンプールというこの女性司会者は、イランで育ってペルシャ語はペラペラらしい。
クリスティアン(キリスト教徒)という名前を持っていて、アメリカを代表するメディアで働く人だから、価値観や考え方は西洋社会のものとみていい。
彼女はイランで取材活動をする時は、現地の法や習慣に従ってスカーフで頭部を覆っているが、それ以外の国でイラン人に話を聞く時はスカーフをしない主義。
それで、「私は自分とCNNのため、そして女性ジャーナリストを代表して丁寧に断った。」と欧米の女性らしいことを言う。

これに日本のネット民の感想は?

・郷に入れば郷に従うべきちゃうん?🙄
・ニューヨークでの話やで
・イラン事するから、、、
・なんかもう世界めんどくセーな
・イランとCNNって最悪と最悪の組み合わせだな

イランの大統領も自分の信念や価値観に基づいて行動しただけで、今回それがうまくかみ合わなかっただけのこと。
まあ大したことはない。
ジャーナリストならそれぐらいの要求をのんで、相手から価値ある情報を引き出して視聴者に伝えてもイイ気はするのだけど。
でも、これがいまのイランの見方を知らせるいいニュースになったのかも。
どっちも転んでも、何らかの結果を手に入れる姿勢はさすが。

 

「女性とヒジャブ」に関してはこっちはかなり深刻だ。
イランでヒジャブを適切に着用していなかったとして、20代の女性が警察に拘束され、その後死亡が確認された。
警察官に殴られたという話もあったから、言うことを聞かない女性に男の警官が数人で暴行したのかと思ったら、その時の動画を見ると全然ちがう。

 

 

「彼女は心臓発作で亡くなった」という警察の発表を信じない民衆が怒り、イラン各地で激しいデモが発生し一部が暴徒化して、もう40人以上の死者が出ている。
こうした動きは海外にも拡散中だ。

TBSニュース(2022年9月26日)

イラン デモ勃発1週間で死者41人 「ヒジャブ」めぐり拘束の女性死亡 抗議は世界各地で

イランの女性への連帯を示すためのデモが行われたのは、フランスなどヨーロッパ各国やアメリカが中心だから、「世界各地」といってもほぼほぼ欧米だ。
欧米の女性は自分の権利や自由については強く主張するし、こういうニュースを聞くと立ち上がる。
一般的に日本の女性だとそこまでの自己主張はしないし、海外の女性への連帯を示すデモを行い、自分の髪を切って抗議するようなこともない。
外国の大統領とのインタビューが無くなりそうになったら、すぐにスカーフを着ける予感。
「女性とヒジャブ」について日本の価値観は、欧米世界とイスラム世界の中間にあると思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。