【死者への冒とく】日本人のマナー違反、ギリ常識~外道の3例

 

明治時代に来日したアメリカ人のシドモアは、日本に住む人たちを見てこう思った。

「愛くるしい日本国民の微笑、比類なき礼節、上品で果てしないお辞儀と明るく優美な表情には、はるかに心よさを覚えます。」

これは150年ほど経った現代でもわりと同じで、日本へ来て、人びとの礼儀正しさを見て称賛する外国人はよくいる。
でも日本人なら、そのゾーンに入らない残念な人間がいることを知ってるはずだ。

安倍元首相ことし7月に暗殺されて、その国葬が先月おこなわれたことは記憶に新しい。
これには賛否両論あったから、その当日に、「国葬を許さない」というプラカードを掲げてデモをする人がいることは想像できた。
これは民主主義のルールの範囲内にあるから、共感はしないがまあいい。
驚いたのはデモ隊の中で国葬の日、会場の近くで「射的」の幟(のぼり)を掲げて、安倍さんの顔写真に水鉄砲を撃って楽しむ人がいたこと。ほかにも顔写真を台の上に置いて、それをめがけて鉄砲で撃つ人もいた。
きっと安倍氏が射殺されたことがこのゲームの着想にある。
民主主義や表現の自由とは別で、こういう「死体蹴り」は日本人の常識のはるか圏外にあるものだから、これに「失礼」と言うのは言葉に対して失礼になるような、この下劣な発想には批判が殺到した。
これを企画した人間はメディアのインタビューに「とにかく安倍をコケにしたい」と答え、世間のヒンシュクを買うことは承知の上だと話しているから、炎上目的の愉快犯のようだ。
ただこの一件でデモ隊全体のイメージを失墜させたから、結局撃ち落されたのは抗議デモだったというオチ。

「バグ」はコンピューターだけの話じゃなくて人間の世界にもあるし、一般の日本人では理解できない日本人も実際にいる。
上のように故人を意図的に侮辱するのは例外中の例外。
でも普通の感覚を持った日本人でも、ついついやってしまう失礼やマナー違反もあるから、これからそれを紹介しよう。

 

このまえ幕末の会津戦争で、10代の少年兵が飯盛山で集団で自刃した「白虎隊の悲劇」についての記事を書いた。

「悲劇の白虎隊」からの、ウソ話で動いたムッソリーニ

その現場となった山に、イタリアの独裁者から送られた記念碑が立っているというのはチョット不思議な気もするが、これを問題視する人というのは聞いたことない。
でも2016年に、飯盛山がゲーム「ポケモンGO」のポケストップに設定されたことには批判が集まった。
戦争に負け、無念の思いで自害した少年のお墓や慰霊碑のある場所で、モンスターやアイテムゲットを目的に徘徊したら、ここで手を合わせたり掃除をする人たちの神経を逆なでするしかない。
しかも深夜は入山禁止だ。
ここに集まったのは、飯盛山がどんな山か知っている地元の若者が中心だろう。
それで飯盛山ではこんなアナウンスが流れるようになった。

「山で眠る御霊様の妨げになります。夜は、飯盛山でのモンスター捕獲を全面禁止。バトルも一切禁止になります」

この後の展開は知らないけど、これは全国ニュースになったから、ポケストップの設定は解除されたと思われる。
この山で自刃した白虎隊の隊士と、スマホを持って歩き回っていた日本人は年齢的にはそう離れていないはず。
時代ガチャか。

 

上の話はアウトで、微妙なのが「原爆ドームでピースサイン」。
原爆ドームをバックに記念撮影をするのは問題ない。
でも笑顔でピースをする人がいて、「配慮が足りないのでは?」という声が上がって中国新聞が記事にした。(2019/3/3)

ピースサイン不謹慎? 原爆ドーム前での記念撮影

この行為に違和感があるか尋ねたところ、「ある」と答えた人が70%で「ない」は20%、あとは「どちらとも言えない」という結果に。
痛みに苦しみながら亡くなった人のことを考えれば、遊園地で楽しんでいるようなピースサインはふさわしくない。
そう思う人がいる一方で、「そんなこと考えたことがなかった」、「平和(ピース)を象徴するサインだから問題ない」という人もいる。
全体的にはカメラを向けられて、つい反射的にピースサインをする人が多いらしい。

約3000人の死者を出したニューヨークのワールドトレードセンターの跡地(グラウンド・ゼロ)で、「にっこりピース」で記念撮影をする日本人がいて、現地の人のヒンシュクを買ったという話もあるから、これは気をつけないと。

【911テロ】日本人がアメリカ人を怒らせた非常識な行為

 

ということで以上の3件は下から、常識のボーダーライン上にある → その外側にある → 論外の外道と、非常識やマナー違反の度合いがひどくなっていく。
原爆ドームと飯盛山の件では、死者を冒とくしようとする悪意はおそらくない。
「射的」は意図的に故人を侮辱しているから、これはもう完全に手遅れ。
「死者の魂には敬意を示さないといけない」と言うまえに、まずはそれを感じないと始まらない。
そういう感覚は教育ではなくて、自然と身につくものだと思っていたけど、近ごろはそうでもないらしい。

「愛くるしい日本国民の微笑、比類なき礼節、上品で果てしないお辞儀と明るく優美な表情には、はるかに心よさを覚えます。」

明治は遠くになりにけり。

 

おまけ

原爆ドームの近くを流れる川で料理を提供する「かき船」があって、それが「鎮魂と平和への祈念の場にふさわしくない」、「酒食を伴う施設の営業は耐えがたい苦痛だ」といった理由から、許可の取り消しを国に求める訴訟があった。
それに対し広島地裁はこんな判決を下す。

朝日新聞の記事(2018年9月19日)

原爆ドーム近くの「かき船」めぐる訴訟、住民側が敗訴

まあこれは死者の冒とくにはならないだろう。

 

 

8月6日の広島:慰霊碑の前での行為に、外国人から批判殺到

イラク人から見た日本は「とても平和で、森と水の美しい国」

日本はどんな国? 在日外国人から見たいろんな日本 「目次」

【無視できぬ!】外国人が考える、日本で危険な虫といえば?

【only in Japan!】外国人が驚きあきれる、日本の普通のトイレ

日本の先生が生徒の髪をスプレーで黒染め←外国人はどう思う?

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。