日本人も中国人も漢字を使うから、相手の言葉が分からなくても、筆談でコミュニケーションを取れるのはなかなか楽しい。
でも、日本語と中国語の漢字は違うから、それが誤解のモトになる。
それも中国語では「愛人」が夫や妻、「老婆」は妻(新妻)になるとか、感じ(ニュアンス)じゃなくて意味が変わってしまうこともあるから要注意。
まえに中国を旅行した時、日本語ガイドに日中の漢字の違いについて印象的なものがあるか聞いてみた。
これは「日本人のお客さんあるある」の質問だったようで、ガイドは考えるまでもなく、日本語を学んでいて「何がどうなってソウなった?」とビックリした漢字として“怪我”を挙げる。
「だっておかしいじゃないですか。なんで『怪と我』で、転んだり切ったりしてできるケガの意味になるんですか?」と言われてみると確かによく分からない。
中国語でケガは「受伤(受傷)」というから、漢字としてはこっちが正解の気がする。
白水社の中国語辞典によるとこの”怪”という漢字は、形容詞では「正常でない、怪しい、おかしい、不思議である」という意味になる。だからこれだと、怪我は「自分をあやしむ」みたいになってしまう。
で、”怪”は動詞だと「とがめる,責める,…のせいにする」という意味だ。
だから中国語で怪我とは「自分を責める」とか「他人が私の(責任を)問いただす」といった意味になる。
ガイドの説明ではたとえば仕事の打ち合わせの最中、テーブルの上にあったコーヒーに手が当たって倒してしまい、コーヒーが資料にかかった時に「私のせいです!」という意味で怪我という言葉を使う。
ケガをした中国人に友人の日本人が「不要怪我」と言ったから、中国人がドン引きしした。
それだと「ケガしないように気をつけて」ではなくて、「ケガをしているのはお前が悪い。俺のせいにするな!」の意味になるから。
漢字の意味が違うと、相手をいたわるつもりが挑発行為になってしまう。
そんな話が中国語学校のブログにある。(不要”怪我”!!)
こんな中国人が日本で次の言葉を見たら、一体どんなふうに解釈するか?
「油断一秒、怪我一生」
まず中国語の「油断」に油断なんて意味はなく、文字どおり「油の供給を止める」という意味だ。
だから知人の中国人がこれを見て、「石油の供給が1秒でも途切れたら、俺は自分を一生責める」みたいな、鋼のような強い責任感を感じた。
いやいやいや。
それは戦時中に、勝敗を決める重要な軍事作戦をしている時ぐらいなもので、日本の超ブラック企業でもここまでのプレッシャーはかけない(だろう)。
怪我を「私が悪かった」という意味で理解したらこんな解釈になる。
漢字ちがいから、カン違いしたというオチ。
そんな中国人は日本中にいるし、日本人が中国へ行ったらこうなる。
では一周回って、なんでケガを日本語では「怪我」というのか?
まずケガの語源は「けがれる(穢れる)」と考えられていて、その音に合わせて「怪我」という字を当てただけらしい。
だから、この漢字には特に意味はない。
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