ネオペイガニズム 欧米人が本来の文化や信仰を知る運動

2月14日は日本のユニークな文化の一つ、バレンタインデー。
1958年に、メリーチョコレートが新宿・伊勢丹で「バレンタインセール」というポップを出して、チョコレートを売り出したことが、今のバレンタインデーの始まりになったとされる。
ただ、この時チョコはあまり売れなかった。翌年、「女性から男性へ」というキャッチコピーで販売すると、世間の注目を集めることに成功し、菓子メーカーがこの波に乗ってバレンタインの習慣が定着していった。

 

タイ人の知人がバレンタインデーにもらって、SNSで自慢していたおかし

 

女性が男性にプレゼントするという日本版ではなく、本家のバレンタインについて言うと、これは欧米の文化ではあるが、キリスト教の文化であるかは微妙なところだ。
名称はキリスト教の司祭・バレンタインに由来しているから、広い範囲ではキリスト教文化の一つと言うことができる。

バレンタインデーの由来・日本とキリスト教世界の理解の違い

しかし、もともとの始まりをさぐると、キリスト教が広がる以前のヨーロッパにあった古代ローマの祭り、ルペルカーリア祭(ルペルカリア)と考えられている。

【ルペルカリア】バレンタインの起源? 古代ローマの“エロ祭り”

キリスト教はアジアで生まれ、約2000年前にヨーロッパ(ローマ帝国)に伝わった。当初、ローマ帝国皇帝はこの新宗教を弾圧していたが、311年にコンスタンティヌス1世がミラノ勅令を出したことで、他の宗教と同じように信仰することが認められた。(キリスト教年表

 

ヨーロッパの各地で誕生し、キリスト教以前からあったさまざまな信仰をまとめて「ペイガニズム」という。ルペルカリアはその信仰の祭りで、キリスト教に吸収され、現代のバレンタインになったとされる。
ハロウィーンももともとはペイガニズムのイベントで、キリスト教に取り込まれたと考えられている。
その後、ヨーロッパでキリスト教が支配的になると、それまでのペイガニズムは「異教」として信仰を禁止され、社会的に排除されるようになった。

しかし、キリスト教の支配力や影響が薄れてくると、失われた古代信仰を復活させたり、現代的に見直そうとしたりする動きが出てくる。それが「ネオペイガニズム」だ。
現代版ペイガニズムの呼び方には、「民族宗教」「伝統的な宗教」「先住民の宗教」「土着宗教」などさまざまある。ただし、キリスト教の立場からは、今でも「異教」で本来的には排除すべき対象のはず。
ネオペイガニズム運動の意義について、ある宗教学者は次のように指摘した。

キリスト教が伝統的に偶像崇拝や迷信として非難してきたものが、実は、深遠で意味のある宗教的世界観を表している(または表していた)という確信に基づいている。

based on the conviction that what Christianity has traditionally denounced as idolatry and superstition actually represents/represented a profound and meaningful religious worldview

Modern paganism

 

ヨーロッパ人にとってキリスト教は、ヨソの国で生まれた外来宗教だ。
だから、知り合いのアメリカ人やイギリス人、ドイツ人などに話を聞くと、欧米ではキリスト教が敵視した古代の信仰を現代によみがえらせるネオペイガニズム運動が、あまり注目されることはないけれど、それでも少しずつ盛んになっている。
バレンタインの「正体」がルペルカリアであったことを突き止めたように、自分たちの本来の信仰や文化を知るためにはそんな「発掘作業」が必要だ。

 

 

神道とキリスト教:日本の鏡餅は、欧米ならパンとワインな件

【ハロウィーン】キリスト教に“ハイジャック”された異教の祭り

【戸惑う西洋人】日本人は「欧米」でひとまとめにし過ぎ

クリスマス・ツリーと御神木:海外と違う日本人の信仰

【ヨーロッパの食文化】クリスマス・イブはウナギだね

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次