以前は高校の世界史で、「事大主義」というものが教えられていた。
これは良い意味の言葉ではない。
じだい‐しゅぎ【事大主義】
自分の信念をもたず、支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする態度・考え方。
「デジタル大辞泉の解説」
韓国には1392年から1910年の間まで、「朝鮮」と呼ばれる王朝があった。
*ちなみに1392年は足利義満が南北朝を統一した年で、1901年は日本が韓国を併合した年。
朝鮮は室町時代から明治時代まで存在していた。
この時代、朝鮮は自国を守るために「事大主義」という考え方をとっていた。
朝鮮は自分の国を小国、隣の中国を大国と考える。
それで強大な中国には礼儀良く接することで、中国が朝鮮に攻め込んでこないようにしたり、何かあれば中国に朝鮮を守ってもらったりしていた。
韓国人が書いた本にはこうある。
朝鮮の国王は、中国の天子=皇帝にたいし、「小を以て大に事える」の礼をとることによって、大国の脅威から小国の安全を保つことができた。つまり夜郎自大な態度をつつしみ、大国にたいする小国の礼を堅持したのである。
「朝鮮儒教の二千年(姜 在彦)」
「小を以て大に事(つか)える」が事大主義のこと。
朝鮮が中国にたいして「小を以て大に事える」の礼をとっていたことから、朝鮮は「東方礼儀の国」とも呼ばれていた。
くり返しになるけど、「事大主義」という言葉は「力のない者が強い人間の下について守ってもらう」という感じで、名誉な言葉ではない。
もし、のび太くんにドラえもんがいなかったら、のび太くんはきっとジャイアンに「礼をもって事(つか)える」事大主義の考え方をして、身の安全を守ろうとしただろう。
それで上の本を書いた人も、朝鮮が「事大主義」をとっていたからといって、朝鮮を中国の「従属国」とみてはいけないと書いている。
でも残念ながら、「大辞林」はそんな意味でとらえている。
じだいしゅぎ【事大主義】
勢力の強い者に追随して自己保身を図る態度・傾向。朝鮮史では朝鮮王朝のとった対中国従属政策をいう。 → 事大党
「大辞林 第三版の解説」
「事大主義」という言葉には、「中国への従属」という意味があるから、韓国はこの言葉を嫌った。
それで今の高校世界史では、事大主義という言葉を生徒に教えなくなったという。
「韓国への配慮から、日本の高校世界史では事大主義という言葉を使わなくなった」と聞いていた。
でも、友人の韓国人と話をしていたとき、彼は「韓国は昔から事大主義でしたから」と平気で言う。
その韓国人の話では、事大主義という言葉は今の韓国でも使われているという。
日本では”使用禁止”なのに。
朝鮮の「事大主義」の例には、豊臣秀吉が朝鮮半島に攻め込んだ(朝鮮出兵)とき、明から朝鮮におくられた援軍がある。
このとき朝鮮を守るために、明が軍隊をおくって日本軍とたたかっている。
朝鮮は中国からの兵士を「明兵」ではなく、「天兵」と呼んでいた。
事大主義の考え方がなかったら、天兵と呼ぶこともなかっただろう。
「「小を以て大に事える」の礼をとることによって、大国の脅威から小国の安全を保つことができた」という事大主義は昔の話。
ただ現代でも、大国と関係を結ぶことで、自国の安全を守ろうとすることはよくある。
日米安全保障条約もそうだ。
強大なアメリカと組んで、日本の安全を守ろうとしている。
日本はアメリカの側についている。
これは間違いない。
韓国もアメリカと米韓相互防衛条約を結んでいて、同盟関係にある。
でも最近、それがゆらいでいる。
アメリカのトランプ大統領が韓国を訪問する前、中央日報にこんな記事(2017年11月07日)がのっていた。
トランプ大統領の訪韓日に考える韓国の外交 我々はどちらに立つのだろうか
トランプ大統領はアジア歴訪の重点を「インド・太平洋」においた。
「インド・太平洋」とは、安倍首相が主張した「日本・豪州・インド+米国の連携」のこと。
これは、「中国・北朝鮮を筆頭とする「大陸勢力」に対抗しようという構想だ(上の記事)」。
でも、アメリカのいる「インド・太平洋」からも、中国がいる「大陸勢力」からも、韓国の名前が抜けている。
韓国はアメリカと中国のどちら側につくのか?
上の記事で、韓国は態度をハッキリする必要があると述べている。
我々はどちらに立つのだろうか。境界線に立っているのだろうか。きょう訪韓するトランプ大統領はその答えを我々に要求している。
この記事の1日前(2017年11月06日)、同じ中央日報で文大統領のこんな言葉を伝えていた。
3日に行われたシンガポールのチャンネルニュースアジア(CNA)のインタビューで「米国と中国のうちどちら側に立つのか」という質問に対し、「韓国は米中両国の関係改善に寄与できる」と述べた。
韓国はアメリカと中国のどちらかの側に立つのはなくて、その両国の間に立つ。
そして、アメリカと中国の対立や緊張を解消する「仲裁者(バランサー)」になるのだという。
韓国が自分を「バランサー」と呼ぶことは前からあった。
たとえば、「zakzak」にはこんな記事(2015.10.30)がある。
3カ国の首脳が一堂に会する場で、開催国として中心に立つことにより、北東アジア地域の“バランサー(仲介役)”を自任し、誇示したいかのようだ
韓国がバランサーになって、「米中両国の関係改善に寄与できる」と言うのはカッコイイけど、今までに韓国がバランサーの役割をうまく果たせたことがあっただろうか?
「どっちにもつかず」というあいまいな態度は、「蝙蝠(こうもり)外交」と呼ばれて、結局どっちからも信頼されない。
韓国がとてもイヤがることは、国際社会から「パッシング(無視・軽視)」されること。
東亜日報は社説( 2017年4月11日)でこう書いている。
韓半島の運命が他人の手によって決定されるいわゆる「コリア・パッシング(韓国素通り)」が目前で繰り広げられようとしている。
中央日報では、「韓国が世界から相手にされていない」のではなくて、「すでに韓国は国際社会ののけ者に転落した」という見方をしている。
韓国が国際社会ののけ者に転落したという「コリアパッシング論」が広がっている。強大国が韓半島(朝鮮半島)の主要懸案を取り上げながら当事者である韓国を排除しているという話だ。
韓国は「のけ者」にはなりたくない。
だから、大国を調整するバランサーになろうとしたけど、うまくいかない。
それで今、韓国は悩んでいる。
「我々はどちらに立つのだろうか。境界線に立っているのだろうか。きょう訪韓するトランプ大統領はその答えを我々に要求している」
フジテレビの「とくダネ (2017年11月8日)」によると、トランプ大統領は韓国(文大統領)の態度にかなりの不信感を持っている。
訪韓前、トランプ大統領は安倍首相にこんなことを言っていたらしい。
*以下、番組のキャプチャー
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