日本語で山の読み方には「やま」と「さん」がある。
日本で生まれ育った人なら、自然と「富士山」と「かちかち山」の読み方が分かるけど、日本語を勉強中の外国人には「やま、サン…。どっちなんだ?」となる。
スマホのない時代は大変だったはずだ。
きょねん複数の外国人とハイキングに行ったとき、ロシア人からそんな質問を受けた。
ひとつの漢字に音読みと訓読みがあるように、日本人は中国の要素を受け入れつつも独自の文化は捨てずに両立させた。
発音だけではなくて文字もそう。
平仮名を考案したあとも漢字を使い続けて、いまではひとつの文章に漢字とかな(平仮名・片仮名)の2~3種類の文字を使うのは当たり前。
前にこれを聞いたサウジアラビア人が「日本人は天才か!」と驚いていた。
そのことはこの記事を。
古代から江戸時代まで、日本人にとって目に見える「世界」や「国際社会」とはほとんど東アジアのことだった。
その時代の漢字はいまの英語のような共通語になっていて、これで中国人や朝鮮人と交流することができた。
それと同時に、平仮名という日本文字で竹取物語や枕草子といった独自の文化を育てていく。
音読みと訓読み・漢字とかなのように、日本人は日中の要素のそれぞれに良さを認めて使い分けてきた。
こういう同時併用は朝鮮やベトナムではほとんど見られない。
自国の文化を大事にしつつも、世界から孤立しないように中国など周辺国ともつながるというのが日本の特徴で、評論家の山本七平氏はこう表現する。
このように独自性と普遍性を併せ持つことで日本の文化は形成されていった。このことが「日本は漢字を使うから日本語と中国語は同じ言葉であろう」という誤解を生じたのであろう。
「日本人とは何か。(上巻)神話の世界から近代まで、その行動原理を探る (PHP文庫) 山本 七平」
江戸時代になると、中国の学問とオランダからの蘭学を同時に並べて学んでいた。
日本はヨーロッパからの情報があったから、アヘン戦争で中国が敗北したことをすぐに正確に知り、その後の国際社会の変化を読んで対応することができた。
東アジアへ進出するための西洋の旗印となる危機的な懸念があり、速やかな国体の変革が急務であることを日本に募らせた。中国国内では重要視されなかった魏源の『海国図志』もすぐに日本に伝えられ、吉田松陰や佐久間象山ら、幕末における改革の機運を盛り上げる一翼を担った。
中国一辺倒だった朝鮮にはこれができず、その後の近代化で大きく出遅れる。
近代化と富国強兵に成功した日本は世界からその力を認められて、第一次世界大戦後には世界五大国になった。
国際感覚がなかったらこれは無理。
まあ、このあとそれが鈍ってしまったけれど。
上の地図はEU(ヨーロッパ連合)をあらわしている。
EUとはもはやひとつの国で、ドイツ、フランス、イタリアなどの加盟国は日本で言ったら県になる。
そんなEUでは協調性と独自性が重視されていて、その理念はコインを見ればわかる。
コインの一面は各国共通のデザインだけど、裏面は各国が独自にデザインを決めることができるのだ。
各国独自の面のデザインは各国で決め、各国共通の面のデザインと硬貨全体の設計は欧州中央銀行が管理している。
この面は各国が同じ。
これはアイルランドのコイン
上がドイツで下がフィンランド
日本が国際化するというのは世界の一部になるわけではなくて、EUのコインように協調性と独自性を大事にすることのはず。
地球市民とか国際人というのは言葉は新しいけど、音読み・訓読み、漢字とかなの併用のように、日本人はその時代の世界とつながって学ぶと同時に独特の文化を築いていた。
伝統的に国際人の資質があるのだ。
いま求められる能力は、英語で日本の歴史や文化を外国人に伝えることだろう。
こちらもどうぞ。
>日本人はその時代の世界とつながって学ぶと同時に独特の文化を築いていた。 伝統的に国際人の資質があるのだ。
ただそれも、四方を海で囲まれていたという偶然の好条件あってのことだと思います。なぜなら、海で隔てられていたからこそ、海外の影響(ヒト・モノの流入)が自然と抑制されコントロールできていたからです。取り入れたくなければ無視してさえいれば、こちらが望む以上に入ってはこない。
でも現代は、なかなかそれで済まない時代になってきました。
>いま求められる能力は、英語で日本の歴史や文化を外国人に伝えることだろう。
それはそうなんですが、でもその課題は相当難しいですよ。語学(英語も日本語も)と歴史・文化との両方に精通しなけりゃならない。
日本国が本格的に国際化するにはもっともっと勉強が必要ですね。ブログ主の努力には敬服します。
おっしゃる通り日本の歴史と人に、海に囲まれているという地理条件は切り離せません。
そしていまではそれはほとんど意味もないことも。
否応なしで入ってくるものもありますし、対応の仕方が大切です。
外国人が日本に来るようになると、日本のことを説明する機会も増えます。
まあやりたい人だけやればいいことですが。
難しいのですけど、あちらの文化もわかって面白みもありますよ。
私の場合、英語にまだまだ難がありますが、細々とがんばります。