米大統領、日系人強制収容を謝罪するも、日本人には関係ない

日本でいえば、広島の平和公園にある「過ちは繰返しませぬから」という感じか？
バイデン米大統領が先日、アメリカの“黒歴史”を認めて謝罪した。

時事通信（2021年02月20日）

日系人強制収容「恥ずべき歴史」　バイデン氏が声明―米

第二次世界大戦中の1942年２月19日、強い反日感情で知られるルーズベルト大統領が日系人の強制収容につながる大統領令に署名した。
これによって「敵性外国人」とされた約12万人の日系人が家や仕事、財産、さらに自由や権利も奪われて収容所に入れられ過酷な生活を強いられる。

敵国の中でも、アメリカ政府は特に日本人に対してヒドイ人種差別的な扱いをした。

在米ドイツ人やイタリア人の収容者は短期間で釈放されたが、日系、日本人の収容は長期におよび、不動産や自動車などの私有財産を含む全ての財産の放棄や売却を余儀なくされた。

日系人の強制収容

このときからちょうど79年になる２月19日、バイデン大統領は、

「日系米国人は彼らの生まれだけを理由に標的にされ、投獄され、非人道的な強制収容所で生きることを余儀なくされた」
「米国は、すべての人の自由と正義という建国以来の理想を実現することはできなかった」

と表明し、アメリカの歴史で「最も恥ずべき時代の一つ」として過去の政府による謝罪を再確認した。
＊1988年のレーガン政権が公式な謝罪と補償を行っている。

バイデン大統領は日本語で「二度とないように」と言って、同じ過ちを繰り返さないことを誓う。

これに日本のネット民の感想は？

・当時は敵対していたのだからお互い様。
・いや原爆投下だろw
・お互い思うところはあるだろうが、日本とアメリカはお互い戦争をしていたのに良い関係を築けてるよね
・これは日米関係を友好に保っていきたいという、誕生して間もない一国の大統領の意思表示になっているように思える。
・過去は過去としてお互いに乗り越えていくように努力しましょう

とまるでバイデン米大統領が、日本や日本人に対してメッセージを発したと思っている人が多いようだ。

「ジャップ」の差別用語を使って、日系人の強制収容を報じる新聞

マンザナー強制収容所

オバマ元大統領も、あの時代の米政府が人種を理由に不当な差別を行ったことを認めて、日系人に公式謝罪した。
そのとき日本にいるアメリカ人と話をしていて、原子爆弾と強制収容所の話題になったんで彼女の意見を聞いてみた。

まず原爆投下については、

・もしアメリカがそう決断しなかったら、もっと多くの犠牲者が出ていた。
・カミカゼのような信じられない攻撃をする日本に降伏を決断させるには、あれしか方法がなかった。
・日本は中国や東南アジアで残酷なことをしていた。

といった理由から、彼女は原爆投下については「とても不幸な出来事だったけど、アメリカが謝る問題ではない」と言い切る。
でも日系人の強制収容については、「まったく言い訳の余地がない。アメリカに全責任があるのだから、謝罪と賠償をするのは当然」と言う。
日本人にアンケート調査をしたらきっと結果は逆で、収容所より原爆投下を「より大きな悪」と答えるはず。

このアメリカ人に言わせると、日系人への対応は人種差別に基づいたものだけど、原子投下は差別ではなくて戦略。
日系人をターゲットにした強制収容は、アメリカが最も大事にする自由や権利といった価値観を政府が否定して、国民に不当な苦しみを与えたのだからこれに反論することはできない。
原爆投下については大統領が謝罪する必要はないけど、こっちはマスト。
強制収容は「非アメリカ的な行為」だったことを国民に明らかにして、米政府は人種差別や外国人排斥を認めないし許さないと誓う必要がある、というのがこのアメリカ人の見方だ。
だから、「過去は過去としてお互いに乗り越えていくように努力しましょう」というコメントはポイントがズレてる。

バイデン大統領も国内の日系人を中心に、全米国民に対してメッセージを発したのであって、日本にいる日本人は対象外だろう。
もっとも大統領は「二度とないように」という日本語を使っているし、「日系米国人の話にとどまらず、世界にとって意味を持つ米国人の話だ」とも話しているから、日本人も含まれているかもしれない。
でも、原爆投下を「アメリカの恥ずべき歴史」とは決して思っていない。

でもほとんどのアメリカ国民は「いやいや、これは広島・長崎と違って、アメリカ政府がアメリカの大事な理念を否定したという国内問題だから。日系人の強制収容は、いま日本にいる日本人には関係ない」という感じなのでは？