「いいですか?インドといえばCCB、カレー・カースト・仏教を覚えておきなさい。」
中学生のころ授業でそんなパワーワードを聞いて、「なるほどなー」と印象に残ったから“インドのCCB”はいまでも覚えている。
この3つのうち2つが宗教に関することというのは、ほんとにインドらしい。
ヒンドィー教、仏教、シク教、ジャイナ教などインドの地からはいろんな宗教が生まれ、外来宗教のイスラム教も受け入れて(というか無理やり入って来て)、いまではインドのムスリム人口はサウジアラビアやUAEなどを上回って世界第三位だ。
そんなインドを旅行中、大都市のムンバイで現地ガイドからこんな自画自賛を聞いた。
「インド人は宗教をとても大事にしています。他人が自分とは違う神を信じていても、その気持ちは尊重されます。インドはいろいろな価値観や見方が混在する多様性にあふれた国ですが、その根本にあるものはインド人の寛容さです。」
そう気持ちよさそうにガイドが話すこの説の根拠は、他国で迫害されていた宗教をインドは受け入れて、その信者の信仰を守っていること。
たとえばムンバイには古代イランの国教で、7世紀ごろからイスラム化すると同時にイランから排除されたゾロアスター教の信者が住んでいる。
*今のインドでゾロアスター教徒は「ペルシア人」に由来して「パールシー」と言われている。
こうした異教徒でも昔のインド人は歓迎して、彼らに安住の地を提供しその信仰も認めた。
そういう考え方や気持ちは現在までずっと変わらないから、パールシーはムンバイから移動することなくインド人として定住している。
ちなみにゾロアスター教の最高神、アフラ=マズダーにちなんでつけられたのが自動車メーカーの「マツダ(mazda)」だ。
パールシー(ゾロアスター教徒)は遺体を鳥に食べさせる鳥葬を行っている。
ムンバイにあるこの施設がそれを行うところで、異教徒は中を見ることができない。
ガイドいわく、こんな風習や信仰を守るのがインド人のイイトコロ。
さて10日ほどまえの3月17日は1959年に「チベット蜂起」が起きて、ダライラマ14世がチベットからインドへ逃れた日だ。
この前段階には1950年のチャムドの戦いがある。
当時、事実上の独立国だったチベットに中国が「解放」を名目に軍を送り、戦闘で屈服させたのちに中国の主権を認めさせチベットを編入した。
チベットは国連にこの事態を訴えたものの、このときは朝鮮戦争が起きていていたから、そっちに全集中していた国連にはこの問題に介入する余裕がなかった。
そんなことでチベットは中国の支配下に入る。(中華人民共和国によるチベット併合)
そんな状態が続いていた1959年の3月はじめ、中国人民解放軍からダライ・ラマ14世に「うちの司令部に来て観劇をしませんか?」というお誘いがくる。
この招待についてラサでは、「中国がダライ・ラマ14世の誘拐をたくらんでいる」というウワサが流れて、そうはさせまいと3月10日に、約30万人のチベット人がダライ・ラマ14世の住む宮殿を宮殿を取りかこむ。
そして始まるチベット蜂起。
でも、武力では圧倒的に劣るチベット軍が中国軍に勝つことは不可能だ。
スライムがラスボスを倒すような、ワンチャンすらない無理ゲーだったから、ダライ・ラマ14世はインドのダラムサラへ亡命した。
そしてそこでチベット亡命政府(ガンデンポタン)を樹立して、いまダライ・ラマ14世はチベットの独立ではなくて高度な自治権を訴えている。
ダライ・ラマ14世の好物が紅茶花伝で、来日するといつもこれを飲むという。
【New】来日中のダライ・ラマ法王は紅茶花伝がお好き? コンビニで手に取りご満悦https://t.co/rcVg2cci9e pic.twitter.com/kHCHiNmsGA
— BuzzFeed Japan News (@BFJNews) November 18, 2016
このときインドにとってはダライ・ラマ14世の訪問なら問題ないとして、亡命を認めるとなると中国を敵に回すことになるから、かなりのリスクがあったはずなのにインドは受け入れた。
実際これが原因となって、1962年にインド軍と中国軍との間で武力衝突が起きている。(中印国境紛争)
中国との関係を優先すれば、インドはダライ・ラマ14世やチベット仏教を見捨てただろう。
日本だったらどんな決断をするか。
ゾロアスター教やチベット仏教を受け入れた経緯をみると、インドは宗教の「アジール」ではないかと思うのですよ。
そこへ行けば、誰でもとりあえずは無条件で保護してくれる。
現代でいえば外国大使館のように、その国の法や統治権力が及ばない安全地帯をアジールという。
くわしいことはこの記事を。
となるとインドは、カレー・カースト・仏教にアジールを加えて「CCBA」だ。
おまけ
チベット仏教のお寺
インドはどんな国?③宗教の基礎的な知識。割合や特徴などなど。
> インドはいろいろな価値観や見方が混在する多様性にあふれた国ですが、その根本にあるものはインド人の寛容さです。
牛肉を食べた人間に、リンチを仕掛けて殺すこともあるのにですか?
自国の宗教や文化に関して、「寛容さ」を自ら強調してアピールする国ほど現実はかけ離れていることが多いものです。なぜなら、自分達が決して許さない「タブー」は、外国人もそれを守るのが当然であると考えているからです。その例外はあり得ないと思い込んでいる。
どこの国でも同じことですけどね。
きのうは「女子高生コンクリート詰め殺人事件」が発覚した日です。
こんな凶悪事件があっても日本の治安はとてもいいです。
特異な例を一般化することはできません。