陰陽師のまえ、奈良時代の日本にいた“呪禁師”のオシゴト

 

奈良市で、奈良時代の桃のタネが大量に出土した。
ってだけなら、「昔の日本人が食って捨てたんだろ」でオワリなんだが、そには不自然な穴があったことから、この桃のタネは、何らかの呪術に使われたと考えられていた。が、実はそれはネズミがかじった跡だったらしい。

毎日新聞の記事(2022/07/13)

呪術のためではない…? 奈良時代の桃の種の穴、ネズミの仕業か

桃には魔を祓う効果があると信じられていたから、その影響もあるかも。

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これがネズミによるものかどうかは置いといて、奈良や平安時代の日本人が呪術の力をホンキで信じていたことはガチ。
それで奈良時代の日本では「呪禁博士(じゅごんはかせ)」という役人を置くことが法律(律令)で定められていた。
まだ科学を知らなかった日本人は、病気などの厄災を怨気や鬼神が引き起こすものと考えていたから、それに対応するスペシャリストが必要になる。
それで呪文を唱えたり刀を使い、邪気を祓う儀式をして人びとを守る「呪禁師(じゅごんし)」が頼りにされた。
そんな呪禁師の中から、特に優秀な者が呪禁博士に選ばれる。
呪禁博士は呪術(呪禁)を行なうだけでなく、後継者となる呪禁師を育てる先生の仕事もしていたのだ。
言ってみれば五条悟が呪禁博士で、生徒の虎杖 悠仁、伏黒 恵、釘崎 野薔薇は呪禁師になるから、『呪術廻戦』の世界観と奈良時代の日本は重なる。

 

奈良時代の日本で呪禁は、病気の治療や子どもの出産に不可欠なものとされていたから、それを扱う呪禁師は医師と同じ役割を期待されていた。
さらに呪術的な力で国家の平和や安定を願ってサポートしていたから、彼らは古代の日本にとって無くてはならない存在。
だがしかし、問題はある。
呪術が国や人を守るために使われていればいい。
でも反対に、人を不幸にするために呪禁が使用されるケースも想定されていたから、律令ではその行為を厳しく禁止した。
それでも人に呪いをかける事件が起きたり、中国道教の呪術を取り入れた陰陽道が登場して、8世紀の末ごろになると呪禁博士はいなくなる。
そして平安時代になった9世紀には呪禁博士の制度も消滅した。危険視されたから、社会的に”出禁”になったようなもの。
それ以降は、安倍晴明などの陰陽師の出番となる。

 

昔すぎて謎すぎて、呪禁師についてはワカランことが多いし、現代の日本人の常識や感覚で彼らを理解することもむずかしい。
だから、穴の空いた桃のタネを見て「こっ、これは、呪禁師が儀式で使用した禁断の呪物か!」と思っても仕方ない。
本当に呪禁師が儀式で使った呪いのアイテムが出土したら、『呪術廻戦』で採用される可能性は高いと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。