アメリカ人・インド人・中国人・タイ人などいろいろな外国人に話を聞くと、みんな日本の”時間厳守”に驚いていた。
「日本の電車はなんであんなに正確なんだ?1分も遅れないってのは、一体どういうことなんだ?」
外国人が日本に来たら、たいてい一度は電車に乗る。
そうすると、自然と母国との違いを感じてしまう。
”定刻通り”というのは、本当に分かりやすい違いだ。
ミャンマーの列車
でも日本人が海外に行ったら、きっとこの逆を感じる。
ボクが旅行した15年ほど前、インドやカンボジアの列車やバスでは2~3時間の遅れは当たり前だったから、この時間感覚に日本人のボクはストレスがたまりまくり。
そういえばミャンマー人が日本に来て、バスに時刻表があることに驚いていた。
ミャンマーでは時刻表の前に、バス停を見たことがなかったという。
彼がミャンマーでバスに乗る時は、路上に立っていて、バスが来たら手を上げて停めて乗り込んでいた。
だから、「バス停があったかもしれませんけど、気づきませんでした」と言う。
日本だと、バス停がなかったらプチパニックだ。
でも、長所はそのまま短所にもなる。
日本人の時間感覚に不快感を感じる外国人もいた。
「たった3分遅れただけで、駅員を怒鳴りつける日本人がいたよ。あれは本当に気分が悪くなるね」
そんなことを言うアメリカ人もいた。
日本では、電車の到着が3分遅れただけで、「ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございません」といった謝罪のアナウンスが駅に流れる。
このことに驚く外国人も多い。
でも、「電車が少し早く出発したことを謝罪した」となると、外国人には、驚きを超えて衝撃になるらしい。
共同通信にこんな記事(2017/11/17)があった。
日本の鉄道会社が20秒早く発車したことを謝罪し、関心を示した欧米メディアが16日、相次いで報道した。
20秒早い発車に「謝罪?」
首都圏新都市鉄道が、定刻より約20秒早く発車したことについて、ホームページで「深くおわび申し上げます」と謝罪した。
鉄道会社が謝罪しただけなら、日本ではニュースにならないだろう。
でも、欧米では、いろいろなメディアがこれを取り上げている。
ニューヨークの地下鉄では時間が遅れることが当たり前だから、ニューヨークの新聞は「これは問題か?」と不思議そうに記事で伝えている。
日本人にとっては、鉄道会社の謝罪よりも、欧米人の受け止め方のほうに驚くと思う。
イギリスBBCやアメリカのFOXは、日本の鉄道が時間厳守で運行されていることについて、「日本に関して最高なことの一つだ」とツイッターで紹介している。
ここからは、日本での鉄道の始まりについて。
日本人が初めて蒸気機関車を見たのは幕末の1854年、アメリカ人のペリーが持って来た蒸気機関車の模型だったと言われている。
この約20年後、1872年(明治5年)に日本で初めて鉄道が開通した。
鉄道開通
鉄道敷設計画は、イギリス人モレルの指導下、大隈・伊藤らが進め、英国より100万ポンド(488万円)を借り、その一部で新橋駅と横浜駅間に敷設。狭軌鉄道。1872年に完成し、当時、陸蒸気といって人気を呼んだ。
「日本史用語集 (山川出版)」
この鉄道開通の指導者であったイギリス人モレノは、「日本の鉄道の恩人」と呼ばれている。
JR桜木町駅(横浜)の近くに、モレルの碑が鉄道発祥記念碑とともに設置されている。
今からは想像できないけれど、明治の日本人は、列車(蒸気機関車)の登場にかなりの衝撃を受けている。
大きな音を立てて走る蒸気機関車に、「土下座」してしまったほど。
次に出てくる「陸蒸気(おかじょうき)」は、蒸気機関車のこと。
煙を吐きながら轟音を立てて走る『陸蒸気』はこの世のものとは思われなかったのだろう。蒸気機関車の轟音や振動が近付いてくると、人々はその姿を見るどころか、ひれ伏してこれを迎えたという
「定刻発車 (三戸祐子)」
でも蒸気機関車が登場すると、人力車はその役割を終えて姿を消していった。
駕籠が人力車に負けたように、人力車は蒸気機関車を前にして消えてゆきます
「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」
ある時、日本にいるイギリス人の娘を訪ねて、母親がイギリスからやって来た。
母親は日本の電車について、「成田空港から浜松駅まで、1分の遅れもなかった。これは”奇跡”だ」と驚いていた。
娘が「日本ではそれが当たり前」と言うと、「イギリスで300キロの区間、電車が1分も遅れなかったらニュースになる」と母が言ったという。
でも、「これは奇跡だ」という時間厳守の運行は、もとをたどっていくと、「日本鉄道の恩人」のイギリス人にいきつく。
「母親が日本の電車に驚いていた」と話すイギリス人に、「日本の鉄道は、イギリス人の指導によってつくられた」と言うと、そのイギリス人は驚いて目を丸くする。
「本当?今のイギリスの鉄道で、日本に勝てるところなんて1つもないのに。時間の正確さ、清潔さ、サービスなど、すべてにおいて日本はイギリスの上をいっている」
「日本に関して最高なことの一つ」という時間厳守の運行は、イギリスではムリだと言う。
日本人の時間感覚をイギリスの鉄道に要求したら、「イギリスの鉄道職員は怒って仕事をしなくなるから」らしい。
おまけ
中国の列車
車内では、旅心をくすぐるような音楽が流れていた。
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