少し前の記事で日本とインドネシアの大きな違いのひとつ、言語の多様性について書いた。
同じ島や地域の人ならその言葉で話すし、出身地の違う人がいたら公用語のインドネシア語で話をする。
日本でこんな切り替えは考えられないけど、インドネシアでは同じ国の人間でも相手によって使う言語をスイッチするのが日常茶飯事。
今回はこの続きで、日本とインドネシアの文化の特徴について知っていきましょー。
日本もインドネシアもアジアの島国だ。
でも日本は「極東」と言われるほど東の外れにあって、インドネシアは東洋と西洋をつなぐ中継地に位置している。
中国と中東・ヨーロッパの間にあるインドネシアは通商航路上の要地で、もともとあった文化にさまざまな外来文化がまじりあって、独特の文化がはぐくまれていった。
ヒンドゥー教、仏教、儒教、イスラーム教などの強い影響を受けた文化がうまれた。元々の土着文化とは全く異なる複雑な文化が生まれた。
歴史をさかのぼると「インドの島々」という国名が示すように、インドネシアは歴史的にインドの影響を強く受けてきた。
世界遺産で世界三大仏教遺跡のひとつ「ボロブドゥール遺跡」や、同じく世界遺産に指定されたヒンドゥー寺院のプランバナン遺跡にインド文化を見ることができる。
むかしのインドネシアとインドの関係は、古代の日本と中国に近い。
奈良・平安時代の日本人は世界的な先進国である唐にわたって学び、いろいろものを吸収して日本へ持ち帰った。
中国から受けた影響は、京都が唐の都・長安をモデルにしてつくられたことをはじめ、いまでも日本人が使っている漢字などで見ることができる。
両国の文化の違いについていうと、もともとあった「土着の文化」がインドネシアにはあまり残っていない。
仏教やヒンドゥー教のあとにイスラーム教がやってきて、王も貴族も国民もこの新宗教を受け入れたことで現在のインドネシアの「原型」ができていく。
イスラーム化していく過程でヒンドゥー教や仏教、それにその前からあった土着の宗教や文化の多くが駆逐・吸収されてしまった。
ことし3月、4人のインドネシア人留学生と一緒に富士山を見に行ったとき(下の写真)、インドやアラブ文化とは違う土着の文化をきいても、みんな「さあ、よく分かりません」と首をひねる。
そういえば、インドネシア文化の保存に熱心だったのは植民地支配したオランダ人と言う人がいた。
女性がかぶっているのはヒジャブ
インドネシアにはワヤン・クリ(Wayang Kulit)と呼ばれる人形を使った影絵芝居がある。
これは日本にあるガイドブックで必ず紹介されているインドネシアの代表的な文化で、10世紀にはあったという。
ワヤン・クリはいまではヒンドゥー教の祭りなどで行われていて、個人的には外国人観光客用の劇場で鑑賞したことがある。
4人に「この影絵はインドネシアの土着文化ではないか?」ときいても、「そうかもしれないけど、よく分かりません」とやっぱり首をひねる。
一般のインドネシア人ならワヤン・クリを常識として知っているけど、その由来や歴史をカバーしているのは専門家ぐらいらしい。
あとこれは関係ないのだが、インドネシアの劇場でワヤン・クリを見たとき、まわりの欧米人はミネラルウォーターを持っているのに、ボクにはそれが配られなかった。
これって差別?
受付に行ったら「ごめーん、忘れてた」と笑顔で2本くれたから、ガチで忘れてたっぽい。
インドネシア人にはこんな感じの人が多いと思う。
インドネシア人との富士山ツアーでは、上の大石寺に寄ったあと田貫湖へ向かう。
田貫湖の周辺を散歩していたとき、1人が神社を見つけて「神社とお寺って何が違うんですか?」ときく。
他のインドネシア人も神社(神道)とお寺(仏教)は同じようなもので、違いが分からないというから、仏教はインド~中国~朝鮮半島を通って伝わった外来宗教で、神道はその前から日本にあった土着の宗教だと説明すると「なるほどです!」とみんな納得。
インドネシアにも仏教はあるし、日本に数年住んでいるなら、神道と仏教の違いぐらいは分かるものじゃないか?
そう思うのだけど、日本人の友人にきいてもよく分からないと言うし、せいぜい鳥居の有無ぐらいしか教えてもらえない。
大学の研究室で数人の日本人に冬の初詣や夏のお盆は、仏教か神道のどちらの行事かたずねても「オレも知らないけど、それで困ったことはない。だからオマエも気にすんな」と言われて終わり。
先ほどワヤンクリについて質問されたインドネシア人もこれと同じ思いだったかも。
日本では外国から仏教が伝わっても神道と共存してきたし、異民族の支配を一度も受けたことはないから、いまでも仏教前の日本の文化がよく残っている。
それに対してインドネシアでは土着の文化が見えにくくなったものの、その代わり、仏教・ヒンドゥー教・イスラーム教・キリスト教といった宗教や、東南アジア・インド・アラビア・ヨーロッパの文化が混在していて多様性にあふれている。
同じアジアの島国でも、ほとんど孤立していて鎖国が可能だった日本と、東西からいろんな外国人がやって来たインドネシアでは文化にもそんな違いが表れている。
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>もともとあった「土着の文化」がインドネシアにはあまり残っていない。
って言うか、「土着の文化」がどの島に残っているのか、正確にはまだまだ分かってないのではないですか?
なんてったって人口2億6千万人以上(←この数字がもうどこまで正しい?)、島嶼(とうしょ)の数は小さいものまで含めたらとても数え切れない、そんな国ですから。隣の島だともう言葉が通じないなんてことが、あの国ではしょっちゅうです。ああそう言えば、インドネシア語は国として統合する目的でマレー語を元に作られた「人工言語」であると聞きましたが。
大地震・大津波・大噴火もよく起きる国なので、全島単位で、人知れず全滅消滅してしまった村落や文化もたくさんあるのだろうし。おそらく、インドネシア人自身だって、自国のことを隅から隅まで全て知って理解することは不可能だと思いますよ。
こんな国の統治は大変だな。
そのへんのことはインド人インド人に聞いてみるのが一番ですよ。