【事実陳列罪】福島処理水は大丈夫→韓国政府と矛盾し懲戒処分

 

「事実陳列罪」という”罪”がある。

特定の人やモノに対してネガティブな事実をいくつも挙げると、それは悪評となるから、関係者にとっては信用棄損や名誉棄損になる。
不都合な真実を指摘されて、「その者の社会生活上の評価を低下させた」という“罪”が事実陳列罪だ。
これはネットで使われることばだから、実際それで警察に捕まるかのはしらん。
店のレビューぐらいなら、それが事実なら問題ないと思うけど、一線を越えるとある日突然、警官が呼び鈴を鳴らすかも。

話を一気に拡大すると、独裁国家で事実陳列罪は大きな罪になる。
支配者に対する反論や批判、都合の悪い真実を国民に伝える行為は、「朕は国家なり」とか思っちゃってる独裁者にとっては、見逃せない”犯罪行為”だから罪に問われる。
言ってる内容が事実でも、むしろそれだからこそ、政権に対する悪評が広がってしまう。
それは非常にマズいから、為政者は不都合な事実を言った人間に罰をあたえ“見せしめ”にする。

自分の支配にジャマな内容が書かれている本は焼き(焚書)、そういう思想の持ち主は生き埋めにした(坑儒)、2000年以上前に秦の始皇帝がやった「焚書坑儒」も発想はこれと同じ。
不都合な事実が国民に知られないように、独裁者がその言説を闇に葬ることは歴史上いろんな国家であった。
たとえばナチス・ドイツの焚書だ。

 

1933年にベルリンで行われた焚書

 

さて話は隣国だ。

日本政府がことし4月、福島原発の処理水を2年後から海に放出すると発表した。
これは国際基準を満たした対応だから、国際原子力機関(IAEA)は「国際的な慣行に沿ったもの」と歓迎する意向を表明。
だがしかし、韓国では首相が「日本の汚染水放出は無責任な決定…もう一つの歴史的過ちを犯すこと」と厳しく非難し、京畿道の知事は「日本の汚染水、命がけの闘いが始まる」と国民に訴えた。
大統領府の報道官も「日本が得たものは利己心だけで、国際社会と未来世代に残すものは終わりのない問題になるだろう」と怒り、文大統領は日本を国際海洋法裁判所へ提訴することを示唆する。

政治家があおるから国民が踊り出す。
「原発放射能汚染水放出はテロ」、「汚染水はがんと白血病、DNA損傷などを引き起こして世界の生命を脅かす」と大反発だ。

 

たしかに放射線を浴びると、細胞を傷つけるし人体に悪影響を与える。
でも問題はその量だ。
雨水や飲み水にも放射性物質が含まれていて、人類は毎日のように被ばくしているのだから、過度に危険視しても意味はない。むしろそれこそ有害。

日本原子力研究開発機構の発表(放射線・被ばくについて)によると、100mSv(ミリシーベルト)の放射線を浴びると、数年後~数十年後にガンになるリスクは0.5%ほど高まるという。
でもそのリスクとは、「喫煙や食事などの生活習慣を原因とするがんのリスクよりも数十分の一程度の低い値」でしかない。
酸素呼吸だって人の細胞を傷つける。
人間なら生きているだけで自然とガンになる危険性は高まるし、もし健康を大事に考えるのなら100mSv以下の被ばくより、ふだんの食事や運動を気にしたほうが現実的で効果的だ。

では福島原発から処理水が放出されると、どのぐらい被ばくするか?
経済産業省のALPS(アルプス)処理水 とは?を見れば、それは無視していいレベルで、心配すべきことは科学に基づかない福島の魚介類への風評被害であることがわかる。

 

画像は経済産業省の資料から。

もし福島原発の処理水放出を「危険」とする意見を見たら、それによって何ミリシーベルト被ばくするか確認してほしい。
ちなみに胸部X線撮影は一回で約0.06ミリシーベルトだ。
不安をあおる人間は放射性物質をいくつも挙げるけれど、重要な数字は隠す。

 

韓国でも事実を知る科学者は冷静で、日本の対応は「科学的に問題はない」と結論づけ政府に報告した。
彼らにとって不安なのは科学を無視して反日をあおる政府のほうで、放射能の危険を誇張しないよう公式に要請した。

ハンギョレ新聞の記事(2021-04-28)

政府に「放射能の危険性を誇張し脱原発政策を正当化する口実にするのではなく、政治的・感情的な対応を自制し、科学的な事実に基づき実用的に問題を解決していかなければならない」と述べた。

韓国原子力学会、福島原発「汚染水」ではなく「処理水」と主張

 

原子力工学の専攻者など約5000人によって構成される韓国原子力学会は、処理水放出によって韓国国民が受ける放射線被ばく量は、「一般人に対する線量限度である1ミリシーベルト毎年の約3億分の1であり、無視できる水準」と発表する。
ただ、「汚染水」ではなく「処理水」と言ったことや、この内容は政府見解や国民感情に反するものだから、壮大にたたかれた。
感情的な対応を自制し、科学的な事実に基づき問題を解決すべきと訴えると、「親日派」とレッテルを張られて怒られる。
だから韓国では事実を知る人が黙ってしまう。

 

こうした科学者の指摘は政府にとっては目ざわりだ。
「日本の汚染水放出は無責任な決定」、「もう一つの歴史的過ちを犯す」、「日本が得たものは利己心だけ」という見解と真っ向から矛盾するのだから。
すると、日本の対応を「問題ない」とした過去の資料が次々に削除し始めたという、驚きの展開についてはこの記事で書いたとおり。

【韓国の闇】日本の”汚染水”は危険だ!→問題ない→証拠隠滅

これは「焚書」と言っていい。
この事態に韓国の科学者からは、「科学的事実を言えば親日派と言われるため、発言できない」という不安の声が上がっている。

これだけではなく韓国は「坑儒」も行った。

朝鮮日報の記事(2021/06/16)

「福島の汚染水、韓国への影響微々」報告書を作成した博士研究員に懲戒処分=韓国原子力研究院

日本の処理水放出は実質的に問題ないという報告書を作成した研究員が懲戒処分を受けて、いま騒動になっている。
4月26日に韓国原子力学会が公表したこの報告書は、「汚染水放出は日本の情報公開不足により危険度の予測ができない」という韓国政府の見解と合わない。

「内部での手続き違反」という表向きの懲戒理由に納得する科学者なんていないだろう。

韓国原子力学会と全国科学技術研究専門労働組合の韓国原子力研究院支部は「今回の懲戒処分は政府の見解と対照的な報告書を作成したためであって、明らかに学術活動の自律性を侵害している」と反発している。

 

「政府の見解と対照的だという理由で行われた、明らかに標的にされた懲戒処分で、学術活動の自律性を非常に侵害する行為だ」という理由で、韓国原子力学会は抗議署名を受け付けている。

いまの韓国政府は首脳会談の集合写真を勝手に編集して、「文大統領の位置が大韓民国の今日」と広報首席秘書官が言うほどプライドが高くてメンツを重視する。
そして批判されるとトカゲのしっぽ切り。
大統領府は「担当者のミス」と言い訳するも、「ミスではなく意図を持って編集したのが明白である」と韓国メディアに反論された。

こうした事情からも、今回の懲戒処分はまず間違いなく「事実陳列罪」で、研究員は見せしめにされたと考えていい。
それにしても資料を消すだけでも驚きなのに、まさか研究者まで罰するとは。
韓国政府の闇は底なしだ。

 

 

こちらの記事もいかがですか?

福島原発汚染水の海洋放出、科学という名の横暴 

【日韓関係】韓国市民の怒りを見よ!→いま「日本は冷たい」

言葉じゃない。日韓メディアが文大統領に求めるのは「行動」

【悪循環】韓国が熱心になるほど、日本が冷たくなるワケ

【恩を仇で】発展に協力した日本人へ、韓国側がしたことは?

韓国の反日感情:日本の経済支援は隠し、謝罪を求めるから。

「誠意」の視点で、一年間の日韓関係をふり返ってみませんか?

日本統治を受けた韓国と台湾のいま。少女像と神になった軍人

だから信用されない韓国与党。日本は最も重要な国か“敵”か?

 

2 件のコメント

  • 学術論文や研究者に対して「焚書坑儒」を行いながら、国を上げてノーベル賞を望むと言うから笑える。
    どっかの大学に設置した「将来のノーベル賞受賞者の銅像を設置するための『台座』」とやらは、その後どうなったのですかね?

  • 中世の社会と同じようですね。
    大勢と違う意見を言うと攻撃されるし…

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。