言葉じゃない。日韓メディアが文大統領に求めるのは「行動」

 

「これはホントにやばいことになるかも」と韓国政府が本気であせり始めたらしい。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領がきのう行った新年の記者会見で、日韓関係について去年までとは違う発言が出てきた。
たとえば2015年に慰安婦問題の解決を確認した日韓合意について、文大統領は17年に「手続き的にも内容的にも重大な欠陥があったことが確認された」と指摘し、「私は大統領として国民と共にこの合意で慰安婦問題は解決されないという点を改めて明確にする」と否定した。
そのあと実際、慰安婦財団を解散させて、文大統領はこの合意を実質的に白紙にしてしまう。

安倍前首相の「心からのお詫び」と10億円の支援金を受け取ったあとで、韓国政府は約束を破ったことになる。

だがしかし、これまでの態度をコロリと変えて、きのうの記者会見でムン大統領は日韓合意を「両国政府間の公式合意」と認めた。
”コロリ”は言い過ぎだとしても、「この合意で慰安婦問題は解決されない」と断言したころとは明らかに違う。

この変化のワケは?

北朝鮮との関係改善を悲願とする文政権はここ最近になって、東京オリンピックで北朝鮮との接点を持つために、戦後最悪といわれる日本との関係を前進させる気になった。
ほかにも日韓関係の強化を考えているバイデン米大統領が、韓国に”圧力”をかけることも予想される。
損得で考えたら、いまは日本とのキズナを深くしたほうがずっとメリットがある。

文大統領にはすごい柔軟性があって、利益のためなら態度を急に変えられる。
きょねん11月に行われたテレビ会議では、「日本の菅首相、お会いできてうれしいです」と異例の呼びかけをして韓日のメディアを驚かせた。

北朝鮮と仲良くなりたいし、国内の日本企業の資産が現金化されたら、日本との関係は戦後最悪からさらに悪化することは避けられない。当然そのあとは日本の経済報復がやってくる。
こんな事情から韓国政府は日本との関係改善に本腰を入れ始めて、先ほどのリップサービスが飛び出した。

 

徴用工問題についても、きのうの文大統領はこれまでと違った。
2018年に韓国最高裁が日韓請求権協定をひっくり返して、解決済みの徴用工問題を蒸し返して日本企業に賠償を命じた。
国家間の合意を一方の国が国内法で否定してはいけない。
この国際法違反に日本が怒って、韓国政府に適切な対応を求めた。

それに対して文大統領は2019年の新年の記者会見で、「日本政府は(歴史問題に)もう少し謙虚な立場をとるべきだ」と日本国民の神経を逆なでするようなことを言い放ち、「韓国裁判所の判決に不満があったとしても、基本的に仕方がないとの認識を持つべきだ」と考えられない認識を示す。

それが今回は急変。
新年の記者会見に臨んだ文大統領は、差し押さえられた日本企業の資産の現金化について「望ましくない」とハッキリ言い、韓国政府が原告を説得することをほのめかす。
昨年までは「三権分立」を言い訳にして徴用工問題を実質的に放置してきたのに、きのうの大統領は違った。ちょっとカッコよかった。

慰安婦合意を「両国政府間の公式合意」と認め、現金化は「望ましくない」と文大統領は明言したのだけど、毎日新聞に言わせると、それだけではまだ足りない。
言葉だけではなく、目に見えるカタチを社説で要求する。(2021年1月19日)

ただ、いずれも具体的な対応は示さなかった。関係改善につなげるためには、行動を積み重ねていく必要がある。

文大統領会見と日韓 関係改善には行動が必要

 

毎日新聞はわりと韓国にやさしくて、韓国側が起こした問題でも「だが日本も悪い」といった論調の記事を書くのに、今回は韓国政府に具体的な行動を求めている。しかもハッキリと。
もちろん、「日本側にも、外交的な知恵を絞る余地はあるはずだ」とやっぱり日本政府の歩み寄りを期待しているけれど。

 

同じ日のきょう、韓国の全国紙・中央日報でもナム・ジョンホというコラムニストが、関係改善のためにムン大統領に「行動」をうながしている。
ムン・ジェイン政府が「国際関係の基本原理である相互主義に外れるとんでもない対外政策で外交をめちゃくちゃにしてきた」と、これ以上なく正確に指摘したあとコラムでこう主張した。(2021.01.19)

現政権が遅まきながら韓日関係の重要性に気づいたなら幸いだ。だが、大型悪材料である慰安婦判決に加えて、強制動員判決に伴う現金化がまもなく始まる状況で、明確な解決策もなくただ「仲良くしよう」とリップサービスだけしても受け入れられるだろうか。日本との和解を心から望むなら、言葉ではなく行動で示さなければならない時だ。

【時視各角】リップサービスで日本が振り向くだろうか

 

できれば2年ぐらい前に気づいてほしかったところなんだが、英語に「Better late than never」という言葉があるように、遅くなったとしても何もしないよりはずっとマシだ。
文大統領は先日も「韓日両国は長い歴史を共有する最も近い隣人であり、北東アジアと世界の平和と安定のための協力のパートナーでもあるだけに、両国関係は未来志向的に発展しなければならない」と美辞麗句を並べた。

でも、「期待している」「望ましくない」「しなければならない」と言ってるだけでは、未来志向は永遠にやってこない。
日韓のメディアが同じタイミングで、文大統領の具体的な行動を期待しているのだ。
今年こそ見せてもらおうか、韓国政府の本気とやらを。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。