前回、アウンサンスーチー氏について書いた。
スーチー氏が浜名湖に来たこと。
それと、ノーベル平和賞を受賞した理由について。
一応ここでも書いときますね。
スーチー氏の受賞理由は、民主主義と人権回復のための非暴力闘争をおこなったから。
ノーベル賞の公式サイトに書いてあります。
The Nobel Peace Prize 1991 was awarded to Aung San Suu Kyi “for her non-violent struggle for democracy and human rights”.
でも今、アウンサンスーチー氏を取り巻く環境は厳しい。
ひじょーに厳しい。
国際社会は今、彼女にとても厳しく冷たい視線を向けているから。
世界中の人たちが、ロヒンギャ問題への対応でアウンサンスーチー氏は「何もしていない」と猛烈に批判する。
「アウンサンスーチーはノーベル平和賞にふさわしくない!」と、賞の取り消しを求める人も多くいる。
個人的にアウンサンスーチー氏を尊敬していて思い入れもあったから、この流れはとても残念。
今回はそんな残念なことを書いていきます。
ミャンマーのロヒンギャ問題はまったく解決のきざしが見えない。
事態はますます深刻で重大になっていくばかり。
そこで国連が緊急会合を開く。
AFPの記事(2017年9月12日)から
国連安全保障理事会(UN Security Council)は、ミャンマーでイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が暴力を受けている問題について協議するため、13日に緊急会合を開く。安保理の議長国が発表した。
国連では以前、報告書でミャンマーのロヒンギャは「民族浄化のおそれがある」と警告していた。
これに対して、ミャンマーの事実上の指導者であるアウンサンスーチー氏はこれを否定する。
イギリスBBCとのインタビューでこう答えた。
インタビューで同氏は、「民族浄化が行われているとは思わない。今起きていることを言い表すのに民族浄化は表現が強すぎる」と述べた。
これは2017年4月6日の記事。
このときアウンサンスーチー氏は、国外に避難したロヒンギャの人々がミャンマーに帰って来るなら、「喜んで受け入れる」とも話していた。
ミャンマーには、顔にクモの巣のような刺青をする民族がいた。
若い人はもうしないけれど、お年寄りにはこのような刺青のある人がいるらしい。
で、どうなったのか?
今でもロヒンギャ問題を伝えるニュースには、「民族浄化」や「大虐殺」というおそろしい表現が使われている。
ロヒンギャに対する迫害は、まったくおさまっていない。
でもアウンサンスーチー氏はそれらを認めない。
ロヒンギャ問題については、「フェイクニュース(ニセ記事)が世界に出回っていて、間違った情報が拡散されている」と、ロヒンギャへの民族浄化や大虐殺を否定した。
くわしいことはこの毎日新聞の記事を↓
ロヒンギャで「偽記事」 スーチー氏が正当化
*もうリンクが切れているので、アーカイブを探してください。
マララ・ユスフザ(ウィキペディアから)
アウンサンスーチー氏がアジアの女性として初めてノーベル平和賞を受賞した。
同じアジアの女性、そして史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんも、アウンサンスーチー氏の対応を批判している。
CNNの記事(2017.09.05)から。
マララさんは声明で、ロヒンギャの「痛ましく恥ずべき扱い」を数年前から非難してきたと振り返り、ミャンマーの事実上の政権トップで同じノーベル賞受賞者でもあるスーチーさんが「同じように非難してくれるのを待っている」と強調。「ロヒンギャの人々も待っている」と呼び掛けた。
日本のネットユーザーにもスーチー氏には批判的だ。
ノーべル平和賞(笑)
ノーベル平和賞のあの人はどーする
ノーベル平和賞の国家顧問
だからアウン・サン・スー・チーは駄目だって言っただろ!
もちろん、彼らが世界にあたえる影響は0。
国連をはじめ世界のメディアは、ロヒンギャ問題について「民族浄化」や「大虐殺」という言葉を使って、何も対応しない(ように見える)アウンサンスーチー氏を批判している。
それに対してスーチー氏は、報道を否定したり「フェイクニュースだ」と言って正当化したりしている。
そうした態度を無責任だと見た人たちは、「今のアウンサンスーチー氏はノーベル平和賞に価しない」と思うようになる。
それで、賞の取り消しを求める署名が活発化した。
AFPの記事(9月7日)から。
ミャンマー政府によるイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)への対応をめぐり、同国の事実上の指導者であるアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問に授与されたノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を取り消すよう求める請願運動がネット上で行われ、これまでのところ36万を超える署名が寄せられている。
署名者の一人は、「事実上の支配者であるアウン・サン・スー・チーは、自国内での人道に対する犯罪を止めるために何の手だても講じていない」と述べている。
「民主主義と人権回復のための非暴力闘争をおこなった」という理由で、アウンサンスーチー氏はノーベル平和賞を受賞した。
でも今は「民族浄化と大虐殺を黙認している」という、まったく反対の理由で取り消しを求められている。
でも今のところ、アウンサンスーチー氏がノーベル平和賞を取り消されることはなさそうだ。
ノーベル平和賞を与えた機関は、「評価するのはノーベル平和賞を取る前にその人物がしたことで、受賞後の行動は問わない」という態度をとっているから。
世界中から対応を非難されているアウンサンスーチー氏だけど、それなりの理由もある。
国際社会は「ミャンマーはロヒンギャ虐殺をやめろ!」と言う。
でもミャンマー国内では「あれはテロリストで、彼らがミャンマー人を虐殺している」という声が大半をしめている。
ミャンマー人の友人はこう怒っていた。
「イスラーム教徒(ロヒンギャ)がミャンマー人を殺している。でも世界に対しては被害者をよそおう」
多くのミャンマー人もロヒンギャ問題をこうとらえている。
アウンサンスーチーにとっては、国際社会もミャンマー国民の声も大事。
どちらか1つを選ぶことはむずかしく、板挟み状態にある。
ニューズウィーク誌でこんな苦しい気持ちを吐露(とろ)していた。
「誰かを非難しないから、と私を批判する人たちがいるが、彼らはそれがどんな事態を引き起こすかわかっているのだろうか」と、スー・チーは今年4月にカナダの新聞「グローブ・アンド・メール」のインタビューに語った。「倫理的な高みに立って正論を振りかざすだけでは、少々無責任だ」
おまけ
ミャンマーのカック―遺跡
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