今回は難民についての話。
1つの問題を解決しようとすると、別の問題が生まれてしまうことがある。
そんな難民の受け入れ問題について。
まずは、「難民ってなんだ?」というところから確認しておこう。
難民
本国の迫害や危難を避けるため他国に逃れ,移住する者。
政治的難民と,戦争や貧困による経済難民とに区別される。「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説」
「もうこれ以上、ここに住むことはできない!」となったら、その場所から逃げるしかなくなる。
世界のどの人にとっても、安全は何よりも大事。
日本では、難民と認められると日本国民と同じように、国民年金や児童扶養手当などをもらうことができる。
前にも紹介したことがあるのだけど、フェイスブックでこんな投稿が拡散されていた。
この「Muslim in Burma(ビルマにいるムスリム)」とは、ミャンマーにいるロヒンギャと呼ばれるイスラーム教徒のこと。
上の投稿は、「ミャンマー政府はイスラーム教徒(ロヒンギャ)を殺すのをやめて」とうったえている。
*ミャンマーの見方はこれと反対。
日本はこのロヒンギャの人たちを難民として受け入れていて、200人ほどが群馬県に住んでいる。
この投稿をしたのは、日本にいるロヒンギャかもしれない。
ロヒンギャが住んでいる(いた)場所はバングラデシュの近く。
この地図だと北海道のところ。
ロヒンギャは「今、地球上でもっとも悲惨な人たち」と言ってもいい。
AFPにこんな記事(2017年02月04日)がある。
国連(UN)は3日、ミャンマー軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)に対する弾圧で数百人が死亡した恐れがあると明らかにした。子どもの虐殺や女性の集団性的暴行などの証言もあり「民族浄化」ともいえる状況になっている恐れがあるという。
(中略)国連は、ミャンマーで「人道に対する罪」が行われている可能性が「極めて高い」としてミャンマーを繰り返し批判しており、今回の報告書でも同様の非難がなされている。
これは2017年2月の記事。
10月の今、ロヒンギャの状況がこのときよりも、さらに悪化している。
ミャンマーで生活できなくなったロヒンギャが隣国のバングラデシュに逃げ込んだ。
まさに難民として。
その数は60万人を超えると言われる。
日本でいえば、都市の人口ほどの人間が突然やって来たのだ。
ロヒンギャの難民を受け入れるバングラデシュも、かなり苦労している。
特に難民による犯罪の増加は深刻な問題だ。
実際、ロヒンギャが地元のバングラデシュ人を殺害する事件も起きていて、現地の治安は悪化している。
AFPの記事(2017年10月29日 )から。
警察は、このロヒンギャの男による攻撃は家族間の争いに絡んだものだと発表した。バングラデシュ南東部では犯罪が相次いでおり、当局は警戒を強めている。
難民キャンプがある村では、ロヒンギャの数がバングラデシュ人の2倍を超えていて、ロヒンギャと地元の人たちとの間に険悪な空気が生まれている。
そこでこうした犯罪が発生するから、緊張も高まる。
問題はこれだけではない。
地元住民は、ロヒンギャが建設業や漁業といった自分たちの仕事を奪っていると訴えている。
難民を受け入れ保護することは大事なことだ。
でも、その数が地元の人の2倍となると、これはキャパオーバーになってしまって、それまでにはなかった問題が生まれてしまう。
難民はいいけど、犯罪者は困る。
難民は善人でも聖人でもない。
もちろん、犯罪者でもない。
ふつうの人間だ。
何十万という人間がいれば、中には犯罪に走る者が出てきても不思議ではない。
60万人のすべての人が法を守る模範的な社会人であるはずがない。
「立派な人もいれば悪いヤツもいる」と考えるのが自然。
「難民を受け入れると、その地区の治安が悪化する」
その可能性は十分考えられる。
それは前から思っていた。
でも、難民の人口をおさえるために、避妊手術の必要性が生まれるとは想像していなかった。
増加するロヒンギャ難民に対して、バングラデシュは「パイプカット」の導入を本気で考えている。
AFPの取材で、バングラデシュの家族計画局の幹部がこう話す。
この幹部がAFPに明らかにしたところによると、家族計画局が任意でロヒンギャに精管切除(パイプカット)や卵管切除の手術を実施できるよう、政府に対して承認を求めたという。
さっきも書いたけど、60万人の難民がやって来たら、どこの国だって大変だ。
それにバングラデシュはアジア最貧国の1つで、もともと国に余裕がない。
難民への避妊手術を、「非人道的」とか「人権侵害」と一方的に非難することはできない。
バングラデシュ人の家族
難民の数が増えると、その分だけ食べ物や生活物資もほしくなる。
必要なのは「善意の気持ち」ではなくて、それを具体的にした物だ。
食べる物、着る物、住むところといったモノがなければ生活できない。
ロヒンギャには「家族が多くいれば暮らし向きが楽になる」と考える人が多く、一夫多妻の家族や子どもが19人いる家族もいるという。
難民を受け入れる側のバングラデシュとしては、ハッキリ言えば、数がどんどん増えたら困る。
それに応じて、資金や物資が増えるワケでもないのだから。
それで、ロヒンギャの人口増加を抑制するために、難民キャンプにコンドームや避妊薬(ピル)を配って避妊を呼びかけた。
けれど、効果がない。
ロヒンギャは避妊に対する知識がほとんどないし、「イスラーム教の考えに反する」と避妊を拒否する人も多い。
それで「避妊手術」という、ある意味、究極の手段を本格的に検討している。
日本だって、国内の難民が増加して国民年金や児童扶養手当などの出費が増えていったら、きっと問題になる。
「困っている人のため」とはいっても、使える税金は限られているのだから。
善意と財源が同時に生まれてくれたらいいのだけど。
「難民≠善人」とタイトルで書いたのは、難民は善人でも犯罪者でもなく、「われわれと同じ人間」ということ。
「難民=善人/聖人」とイメージしている人ほど、難民が盗難や殺人を犯したときに、ショックを受けてしまう。
こうなると、難民への見方が「難民=犯罪者」と一気に反対になってしまいかねない。
「難民はふつうの人間だから、中には悪いことをする人もいる」と考えていれば、難民による犯罪を知っても大きなダメージは受けない。
「難民=善人」という、現実離れした理想を持つことは危険だ。
何かあったら、すぐに「難民=悪人」というイメージに変わってしまう可能性が高くなる。
現実を知ってイメージが崩れてしまうのなら、もともとそのイメージがまちがっていた、ということ。
「同じ人間なんだから、良い人も悪い人もいる。数が増えれば、治安が悪化する可能性もある」と考えることが現実的だと思う。
良い面も悪い面も知った上で、難民の受け入れについて考えたほうがいい。
難民の受け入れについて、過度に危険をあおってはいけないけど、負の面を無視してもいけない。
受け入れ能力以上の難民を引き受けたら、ウィンウィンではなくて、共倒れになってしまう。
バングラデシュには人が本当に多い。
60万人を受け入れるのはかなり大変なはず。
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