「タイの南部って雰囲気が独特なんですよね。タイであってタイではないような」
宿で知り合った日本人の旅行者から、そんな話を聞いた。
もう10年以上前のこと。
でも、「タイであってタイではない」という表現が特徴的で印象に残っている。
ボクはタイには何度も行ったことがあるけど、タイの南部はまだない。
これからもないかもしれない。
タイの南部、特に深南部は外国人の旅行者が近づいていいところじゃないから。
外務省ホームページにある「危険情報」の地図を見たらそれがわかる。
このオレンジ色は、外務省が出している危険情報で「レベル3」をあらわしている。
「その国・地域への渡航は、どのような目的であれ止めてください」というもので、これはかなり危ないところだ。
とてもじゃないけど、観光客が行っていい場所ではない。
この上はレベル4があって、これが最高。
レベル4には、シリア・アフガニスタン・ソマリアといった国がある。
このへんはもう世界最恐の国。
“ケンシロウのいない北斗の拳”のような世界が広がっている。
行ったことないからテキトーに言っているだけだけど。
ところで、タイってどんな国だろう?
タイの面積は日本の約1.4倍。
人口は6,572万人で、だいたい日本の半分。
首都は「バンコク」っていうのさ。
首都は「バンコク」なんだけど、これは外国人が呼ぶ名称。
タイ人は「バンコク」ではなく、正式名称である「クルンテープ(天使の都)」と呼んでいる。
タイの民族は大多数がタイ族で、その他に華人やマレー族などがいる。
宗教は仏教が94%で、イスラーム教が5%。
*タイは仏教を国教(国の宗教)にはしていない。
だから、タイには仏教徒がたくさんいるけど、「タイは仏教国」というわけじゃない。
隣のカンボジアでは仏教が国教になっている。
この点でタイとカンボジアは大きく違う。
マレー族のイスラーム教徒の多くは、タイの南部に住んでいる。
イスラーム教徒が住んでいるだけなら問題はない。
タイの南部には、タイからの分離独立をめざすイスラーム系の武装勢力がいるから困ったもんだ。
彼らは爆発事件をよく起こす。
つい最近もあった。
AFPの記事(2017年9月15日 )から。
タイ南部ヤラ県で14日、連続爆弾事件が発生し、警察によると兵士2人が死亡、民間人を含む27人が負傷した。警察は反政府イスラム武装勢力の犯行とみて調べている。
これはただの爆発事件ではない。
「連続爆弾事件」となっている。
まず1度目の爆発が起こる。
そして現場に向かっていた軍の車両をねらって、2度目の爆発が起きた。
さらに駆けつけた兵士をねらって3回度目の爆発が発生する。
1度爆弾を爆発させただけではない。
二重三重の“効果”をねらっている。
おまけにこのときには、軍と犯人との間では銃撃戦もあった。
犯人側のかなりの計画性と憎悪が見てとれる。
イスラーム系の武装勢力はタイの中央政府に反抗していて、警察や軍をねらった襲撃や爆発事件をよく起こす。
でも、民間人が彼らのターゲットにされることもある。
2017年5月9日には、タイ南部のパッタニー県でスーパーマーケットで爆弾が2回爆発した。
この時は買い物客たち約60人が負傷している。
海外旅行で行くタイは楽しくのんび~りした雰囲気がある。
でもその陰で、タイ南部ではこうしたテロ事件が前から起きている。
外務省のホームページに書いてある被害者の数は、「ほほえみの国」と呼ばれるタイのものとは思えない。
2004年から2016年までに6,850人が殺害され,12,547人が負傷しています。
約7000人が殺害されている。
ある意味これも、「タイであってタイではない」という気がする。
タイ南部で発生している凶悪事件が、94%の仏教徒のタイ人にあたえる影響はとても大きい。
首都バンコクにもイスラーム教徒のタイ人が多く住んでいて、彼らが礼拝するためのモスクもある。
ボクもそこを見学に行ったことがある。
その後、「モスクに行ってきました」とタイ人のガイドに言ったら、「なんでそんなところに行ったんですか?」と驚いていた。
そしてこう警告する。
「もう行かないほうがいいですよ。あそこにいるのは、テロリストやテロリストを支援している人ばかりですから。
ガイドのこの言葉を聞いてボクが驚いた。
「イスラーム教徒はテロリストではありませんが、」とか「多くのイスラーム教徒はいい人たちですけど、」という前置きをまったくしなていない。
友だちならわかるけど、客に対してこんなストレートな言い方をしていたのが印象に残った。
でもこのガイドは、“善意”で言ったのだろう。
でも、「イスラーム教徒はテロリストやその予備軍だ」と考えるタイ人は多いと思う。
宿に戻ったとき、スタッフのタイ人にガイドの話をしてみた。
そのタイ人も「ボクもそう思う」とガイドに賛成する。
そしてこんなことを言う。
「タイではイスラーム教徒を『テロリスト』と思っている人は多いよ。タイの南部でよくテロは起きているし、仏教徒がたくさん殺されている」
「彼らはどうやって資金を調達していると思う?マレーシアのイスラーム教徒だよ。ヤツらが支援しているんだ」
彼の話がどこまで本当かわからない。
でも、タイ南部で仏教徒が殺害されていることはよくニュースで報道されているらしい。
それを知ったときの衝撃が国内のイスラーム教徒へのイメージになっている部分はあると思う。
*実際には仏教徒だけではなく、現地のイスラーム教徒もテロの犠牲になっている。
「イスラーム教徒はテロリストだ」というイメージ(偏見)は、たしかにタイ人の間に広がっているようだ。
ウィキペディアにはこう書いてある。
多数派タイ人(仏教徒)の間には、深南部三県でテロが続発していることから「ムスリム=テロリスト」という偏見が広がっているとされる。一方で、こうした住民対立を解消しようと地元のNGOが対話活動を行っている。
深南部 (タイ)
テロという部分をのぞいても、タイ人はイスラーム教徒に対してあまり良い印象を持っていないらしい。
クラビーというタイのリゾート地にいた日本人がブログでこんなことを書いている。
その人は宿にいたタイ人から、「タイ南部の人はタイ人が住むにも難しいところだ」と聞かされた。
タイの別のところからクラビーにやって来たそのタイ人は、クラビーで「とても失礼な人達と出会って辟易した」という。
その日本人もその場所での印象を「無教養な人が多い」と書いてる。
このことについて宿のタイ人は、「経済状況の問題もあるが、イスラム教徒が多いというのが大きな理由ではないか」と話している。
「イスラーム教徒はテロリストではない。一般のイスラーム教徒はむしろ、テロをおこなうイスラーム系過激派の犠牲者だ」というのは当たり前のこと。
でもそんな言葉では解決できない現実がある。
タイには魅力的な観光地とおいしい食べ物がたくさんあるけど、こんな一面もある。
「世界一おいしい料理」にも選ばれたことのあるタイのマッサマンカレー。
タイ人の友人は「マッサマンカレーは、もともとはイスラーム教徒の料理ですよ」と言っていた。
ウィキペディアにもそんなことが書いてある。
ゲーン・マッサマン(タイ語: แกงมัสมั่น、kaeng matsaman)は、タイ王国に起源を持つゲーン(タイカレー)である。マッサマンカレーとも呼ばれる。
ある説によると、アユタヤ王朝を16世紀に訪れたペルシアの使者や貿易商の影響を受け、タイ中部で生まれたとされる。また別の説では、タイ南部を訪れたアラブ人の貿易商人が起源だとされる。(ウィキペディア)
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