日本に住んでいたアフリカ人と韓国料理店へ行ったとき、彼が「韓国の箸」を見て意外そうにこう言った。
「韓国ではステンレスの箸を使ってご飯(白米)を食べるのか! 日本と同じで、木製の箸を使うと思っていた」
東アジアの文化は共通点が多い。
だから、日本人でも韓国料理を知らない人だと、銀色に光る箸を見て彼と同じ意外性を感じる人がいる。
重いし滑るのに、なんで韓国の人たちはステンレス製の箸を使うのか。
実は、韓国でステンレス製の箸が使われているのには、歴史や文化に根付いた理由がある。
これからその理由と、日本とは違う食文化の背景について解説していこう。
1. 日本・韓国・中国で違う「箸」の特徴
同じように箸を使う国でも、日本、韓国、中国では形や素材が違う。
まずはそれぞれの違いを確認しよう。

韓国の箸
ステンレスなどの金属製でキラキラ光り、平べったい形をしている。

日本の箸
木製で先が細くなっている。これは、魚の骨を取りやすくするためと言われている。

中国の箸
木製やプラスチック製が多い。日本の箸に比べると長くて、先端の太さがあまり変わらない。
これは、大皿料理を取り分けるためと言われている。
同じ箸文化圏でも、国によってこれだけの違いがある。
では、なぜ韓国だけが金属製の箸を使っているのだろうか?
2. 韓国の箸がステンレス製である3つの理由
結論から言うと、韓国でステンレスの箸が普及した理由は以下の3つだ。
理由①:「毒殺」を防ぐための知恵(銀の箸の名残)
昔の韓国では、王族や貴族などの支配階級の人間は、「命を守る」ために金属製の箸を使っていた。
日本もそうだが韓国の歴史でも、政敵などを毒殺しようとする陰謀が絶えなかった。
銀はヒ素などの毒に触れると黒く変色する性質がある。
そのため、食事に毒が盛られていないかを確認する「センサー」として、銀製の食器や箸が使われていたのだ。
以下のサイトにもその理由が書いてある。
理由②:王族や上流階級への「憧れ」
この「金属の箸=身分が高い証」という文化が根付き、時代とともに安価なステンレスへと姿を変えて受け継がれた。
現在の韓国でステンレス製の食器が一般に広まったのは、1970年代のことだ。日本の大学で教えている韓国出身の呉善花さんが著書にこう書いている。
それ以前、庶民は白色の磁器を、上流階層では銅製の食器を使用するのが普通だった。銅製の食器は磨くとキラキラと金のように輝いて、庶民にとっては憧れの的であった。
戦後、生活が豊かになるにしたがって、銅製の食器は庶民の手にも入るようになったが、銅器というのはすぐに錆びてしまうから、磨くのに手間がかかるのが玉にきずだった。『ワサビの日本人と唐辛子の韓国人 (祥伝社黄金文庫) 呉善花)』
以上の事情を背景として、韓国でステンレス製の食器が市場に出回るようになると、磨かなくてもいつもキラキラ輝いているという魅力から、みんなこの箸に飛びついた。
韓国の庶民には上流階級への強いあこがれがあり、ステンレスの「キラキラ感」がそんな気持ちを満たしたのだ。
ステンレス製の箸や食器は高くないので、「貴族の真似をしたい」という大衆心理によって、金属製の箸が爆発的に普及した。
理由③:磨かなくても常にピカピカ(手入れのしやすさ)
呉善花さんは同じ本の中で、次のような指摘もしている。
戦後、生活が豊かになるにしたがって、銅製の食器は庶民の手にも入るようになったが、銅器というのはすぐに錆びてしまうから、磨くのに手間がかかるのが玉にきずだった。
その点、ステンレスは錆びにくく、扱いが簡単だ。面倒な手入れをしなくても常に「キラキラ感」を保つことができる。
この実用性と見た目の良さのバランスが、韓国全土に定着した大きな理由となった。
まとめ:韓国の箸は歴史と食文化が作った
韓国のステンレス製の箸や食器について、日本人の中には「金属のにおいや味がしそう」「日本人の感覚が許さない」といった拒否反応を示す人もいる。
しかし、これも文化の違いだ。
韓国の箸がステンレス製である理由には、
・毒殺を防ぐため
・上流階級のキラキラした食器への憧れ
・手入れのしやすさ
という歴史的背景があった。
それに、韓国料理には熱いスープやキムチなど、色移りしやすい食べ物が多い。そんな食事情を考えれば、ステンレスの箸とスプーンの組み合わせは理にかなっている。
また、韓国の食文化では箸とスプーンが使い分けられている。
日本人は基本的に箸だけで食事をするけれど、韓国ではご飯や汁物はスプーン、おかずをつまむ時にステンレスの箸を使うのが普通だ。
韓国には、ビビンバを代表とする「混ぜる文化」があるため、スプーンを使うのが合理的だ。
次にアフリカ人と韓国料理を食べる機会があったら(まず無いだろうけど)、ぜひステンレスの箸を通して、韓国の歴史や食文化に思いをめぐらせてみてほしい。
おまけ
韓国で上流階級の人間が銀の箸を使っていたのは、元をたどると中国に行きつくと思う。
そのことはこの記事で↓
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