韓国語の「世界公用語化」はいいが、チアチア族はどうなった?

 

ハングルの日をまえに、ソウル聯合ニュースが国民の気分を上げるニュースを報じた。(10/7)
10月9日の記念日は日本では「散歩の日」で、韓国では「ハングルの日」。
1446年のこの日、朝鮮国王・世宗によってハングルが公布されたことを記念し、現在の韓国では「ハングルの誕生日」として祝日となっていて、各地でイベントが開かれる。
しかし、このハングルの日が日本統治時代に制定されたことを知る人は少ない。

ハングルの日を前に、ソウル聯合ニュースが国民の気分を上げるニュースを報じた。(10/7)

韓国語を「世界公用語」に 推進委員会発足=日本などに支部設け活動へ

いま国連などの有名な国際機関では英語、フランス語、中国語、スペイン語、ロシア語、アラビア語が公用語として使用されている。
韓国の社団法人・韓国正しい言葉研究院がそれに韓国語を加え、韓国語を世界の公用語にするための推進委員会を結成し、その大会がソウルで開催された。
委員会側は「韓流ブームと国力伸長により韓国語の勢いが増しているなか、世界的に多くの学者からハングルの優秀さを認められている」と話し、韓国語の世界化に向けて鼻息を荒くする。
結成大会では、「ハングルと韓国語を愛し、世界公用文字・言語としての価値を認められて世界公用語になるよう積極的に参与する」という内容の決議文が発表されたという。
その第一歩として、日本やアメリカ、フランスなどに海外支部を設置する予定。

ことしの春ごろ、そんな動きの“フラグ”となるような記事を中央日報が掲載していた。(2024.04.23)

世界各国で「韓国語ブーム」…日本語など他の外国語を超えたとの評価

韓国正しい言葉研究院のウォン院長は、海外支部を中心にハングルと韓国語の優秀さを海外の人たちに伝え、いずれは国連総会と国連教育科学文化機関(ユネスコ)委員会に国際公用語への採択を請願するつもりだと語る。
ハングルの素晴らしさが世界に認められ、広く使われることは国民の夢でもある。
2009年にインドネシアのバウバウ市が、少数民族のチアチア族の表記文字としてハングルを採用することを決めたときには、韓国中のメディアが大々的に取り上げた。
ハンギョレ新聞の記事には、「戦争なしで一つの国の文字が、他国の文字として用いられるのは、歴史的にも初めての出来事」という誇らしそうな一文がある。

文字ない部族 ハングル習いわずか2日で自分の名前書く

同じく全国紙の東亜日報も社説で、その意義を次のように説明した。

インドネシアの少数民族チアチア族は、ハングルを公式文字に採択してはじめて、歴史と文化を記録することができるようになった。

世界最高のアルファベット、ハングル美しく使用しよう

 

しかし、このプロジェクトはすぐに行き詰まる。
ハングル表記化を推進していた世宗研究所は、2012年に現地の事務所を閉鎖して撤退し、ハングルを教えていた唯一の韓国人教師にも「撤収命令」が出て、彼は韓国へ戻ってしまった。
原因はカネだ。
ハングルを教えるのに必要な人件費や教材費、機材費などの予算がすぐに不足した。
その原因として、中央日報が指摘したのは「約束違反」だ。(2012年10月09日)

今回の事態は予想されたことという指摘が出ている。(中略)政府と自治体は先を争って各種支援の意思を明らかにした。だが、4年が過ぎた現在、こうした約束はほとんど守られていない。

突然支援を絶たれたチアチア族のハングル教育

 

2024年のいま、世界最高のアルファベット、ハングルを普及するこのプロジェクトはどうなったのか?
ネットを検索しても、最新の情報が見つからなかったから、「進捗状況」は分からない。あれは一時的なブームだったのか。
ハングルを「世界公用語」にするために、日本、アメリカ、フランスに支部を設置するのもいいけれど、その予算の一部をチアチア族の教育支援に回すべきでは?
韓国語の世界公用語化には、まずは自分たちが手を付けたところから始めた方がいい。先を争って各種支援の意思を表明しても、約束が守られなければすべて無意味。
根本的には、ハングルと自尊心をもう少し分離した方がいいと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。