まずは12月13日の韓国紙、中央日報を見てほしい。
「韓国人の受刑者が深刻な人権侵害を受けている」と、1面で大きく取り上げられている。
「靖国爆発音事件」については、覚えている人も多いと思う。
2015年11月、チョンという韓国人が靖国神社のトイレに爆発物を仕かけて爆破させる事件がおきた。
この犯行によって彼は懲役4年を言い渡され、今は日本の府中刑務所にいる。
このチョン受刑者の母親が「日本の刑務所で、息子がこんな人権侵害を受けた」と主張する。
中央日報の記事(2017年12月12日)から。
「息子が懲罰房の独房に横になって眠ろうとしているのに刑務官が外から全長20センチにもなるムカデを投げ入れ、瞬間的に腕で防いだが噛まれる事故が起きた」
(中略)イさんは「息子はムカデに噛まれた腕が腫れ上がり痛みを感じるようになったため治療を要求したが拒絶された」としながら「大使館担当領事と日本政府に抗議書簡を送ったが、何の返事もなく黙殺された」と主張した。
「日本の刑務官が外から全長20センチにもなるムカデを投げ入れた」
「ムカデにかまれたけれど、治療を受けられなかった」
ほかにも、息子はこんな人権侵害を受けているという。
「日本の服役者も靖国神社のトイレに爆発物を設置したという理由であらゆる暴言を浴びせて侮辱を与えている」
韓国の新聞はそう伝えているけれど、日本でこの話を信じている人が見つからない。
インターネットの反応を見てみたら、そんな人はゼロだ。
・ムカデってそう簡単にいるか?
・書簡を送るくらいならムカデの証拠は有るんでしょうね?
・そんなに大きいムカデに刺されたら、刺された箇所がボンボンに腫れ上がるけどな
それにムカデが瞬間的に刺すなんてことはない、投げつけられてぶつかった一瞬で刺せるほどムカデは器用じゃない
・20センチのムカデとかメルカリで売ったら結構な値段になると思うよ。
・20cm級のムカデなんてわざわざ探しに行かないと入手できんだろ
韓国ならその辺にうじゃうじゃいるのかもしれんが
・来年には2Mのムカデになってるな
・日本の刑務官は20㎝のムカデを触るのを嫌がるだろう
・俺、咬まれたから言うけど、これをつまんで投げる奴を尊敬する。俺は手の指を咬まれた。
・責任ある取材・記事をお願い致します。
ボクもこんな事実はないと思っている。
「ムカデを受刑者にかませる」という発想をする日本の刑務官がいるのだろうか?
靖国神社のトイレに爆発物をしかけたからといって、ここまでの憎悪を持つだろうか?
それに、こんなことをしたら職を失う。
そもそも、どうやったら日本で全長20センチのムカデを入手できるか?
それを職場まで持って行って、受刑者に投げつけるというのは、どうしても考えられない。
刑務所の中なら、監視カメラがあるだろうし。
もしこれが事実だとしたら、その根拠を示す必要がある。
でも、記事にはまったくそれがない。
こんなものを受刑者に投げつけることができるだろうか?
職務命令でも断るわ。
ここで1970年代のカンボジアの話をしたい。
この時代、カンボジアはポル=ポト政権の支配下にあった。
この間、カンボジアは地獄となる。
1975年にカンボジアで成立したポル=ポト(?~1998)の急進左派政権。都市から農村への強制移住、通貨の廃止、反対者の大量虐殺などをおこなった。
文化大革命の影響を受けて中国に接近し、隣国のベトナム・ラオスとは対立した
「世界史用語集 (山川出版)」
このとき150万人以上が虐殺されたといわれている。
300万人というのは盛り過ぎ。
ポル=ポト政権の人間は、自分たちの敵を「ばい菌」と見ていた。
ポル・ポト政権指導者たちがばい菌(敵や家族まで含めて)は絶滅させなければならないとし、800万人の小国の人口を100万人に削ってもよいなどと口にする時、それがどれほど国にとって深刻なことかを自覚していた様子はない
(ポル・ポト〈革命〉史 山田 寛)
ポル=ポト政権は”ばい菌”を取り除くため、首都プノンペンに「トゥールスレン」という刑務所をつくる。
トゥールスレン刑務所(今は虐殺犯罪博物館になっている)
もともとここは学校だった。
ここでは拷問や殺害がおこなわれていた。
次の文の「S21」とは、トゥールスレン刑務所のこと。
ポル・ポト革命の指導者たちにとって、国民は人間ではなく、いつでも処分できる家畜に過ぎなかった。S21の所長のドッチは報告書の中で、監獄で飼っていたアヒルと鶏が死んだことを七行にわたって嘆いているのに、拷問で囚人十四人が死んだことは、たった二行で済ませていた
(ポル・ポト〈革命〉史 山田 寛)
ここで殺された人の数は、15000人にものぼるという。
トゥールスレンでおこなわれていた拷問に、「ムカデを受刑者にかませる」というものがあった。
ピンセットのようなものでムカデをつかんでいる。
これはムカデを入れていた箱。
もし刑務官がムカデを受刑者にかませようとするなら、このような身体を固定する器具が必要になるだろう。
「刑務所でムカデにませた」と知って、まっ先に思い浮かんだのがポル=ポト政権がおこなったこの拷問だった。
もし本当にムカデにかませるのなら、上のような器具のほかに、相手を人間ではなく「いつでも処分できる家畜やばい菌」と思わせるような思想教育も必要だろう。
韓国の人たちは、日本でこんなことが起こると本当に考えるのだろうか?
「刑務官が外から全長20センチにもなるムカデを投げ入れ、瞬間的に腕で防いだが噛まれる事故が起きた」というのは、映画の演出としても安っぽい。
でも、受刑者の母親が言いたいことはムカデのことではない。
こう主張している。
「韓国人の良心囚という理由で、ありとあらゆる侮辱と圧迫を受けている息子が合法的な受刑生活をできるように助けてほしい」
「韓国政府が積極的に働きかけて息子を韓国に連れ戻してくるべきだ」
ようするに、「息子を韓国に連れ戻してほしい」ということ。
母親は、韓国の警察庁で開かれた記者会見でこう言っている。
ということは、韓国の警察は「母親の言うことを支持している」と考えていいのだろう。
韓国の法務部関係者も「チョンさんの韓国移監手続きを進めており、在外国民保護の次元で手続きを急ぎたい」と述べている。
でもそれは違う。
もし韓国で犯罪をおこなって捕まった日本人がいたら、韓国の法にもとづいて処罰され、韓国の刑務所で服役するべきだ。
「在外国民保護の次元」で考えて、そんな人間を日本の刑務所に戻す必要はない。
元駐韓日本大使で韓国のスペシャリストである武藤氏が、韓国の反日についてこう話している。
産経新聞の記事(2015.5.21)から。
韓国の反日については「韓国では政治を離れ、国民レベルでは、日本が好きという人がむしろ多いと思う」と話し、「反日を言っているのは朴槿恵(パク・クネ)大統領であり、政治家であり、マスコミであり、非政府組織(NGO)だ」と非難した。
今回の「人権侵害」の記事を読むと、韓国で反日感情ができる理由が見えてくる。
こうやってマスコミが日本への憎悪をあおるような記事を書くから、韓国人が日本嫌いになってしまう。
この記事には、母親が「提起した」「要請した」「主張した」と書いてあるだけで、話の内容が事実かどうかをまったく確認していない。
大手全国紙がこんなあいまいな情報をトップニュースとして伝えている。
それは今回に限ったことではない。
韓国のマスコミは、元慰安婦の「性奴隷にされた」「強制連行された」という主張も、根拠をしめさずそのまま記事にしている。
これを読んだ人はそのまま反日になってしまう。
韓国ではこれが日常的におこなわれている。
そしてこうして形成された反日感情にもとづいて、日本に反省や謝罪を求めてくるから困ってしまう。
先ほどの武藤氏はこう訴えている。
「今まで通りでは日韓関係は良くならない。ルールを変えるときだ。韓国の反日はもうやめてもらわないといけない」
「ムカデを投げられた」「性奴隷にされた」というのは証言であって、事実ではない。
根拠のない情報を載せることについて、韓国の新聞はもっと冷静で慎重になったほうがいい。
マスコミが国民の反日感情をあおるから、韓国人が日本嫌いになる。
韓国の反日を知ると、日本では嫌韓が増える。
その日本の嫌韓を韓国のマスコミが伝える。
だから韓国人は日本に対して・・・。
この悪循環は、早くなくしたほうがいい。
「韓国の反日はもうやめてもらわないといけない」というのは、まったくその通りだ。
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