旅行者と日韓歴史問題。知らないと苦労する。有効な対応は?

 

「慰安婦問題なんて関係ない」
「軍艦島の徴用工問題も知らない」
「そもそも日本と韓国の歴史問題なんて面倒くさいし、かかわりたくない」

とこちらが思っていても、相手もそうとは限らない。
あるとき突然、慰安婦問題に巻きこまれることもある。

 

去年、アメリカ人の友人とメッセージのやり取りをしていたとき、いきなり慰安婦問題について意見を聞かれた。

それで彼女がこんなメールが送ってくる。

「Koreans wouldn’t have forced their own women to be sex slaves if they didnt have to」

このアメリカ人は、慰安婦を「sex slaves(性奴隷)」と考えていた。

もちろんこれは違う。

これについては、2016年に国連の場で日本政府が否定している。
ザイド国連人権高等弁務官が慰安婦を「日本軍による性奴隷制を生き延びた女性」と言ったことに対して、日本政府を代表する嘉治大使が「性奴隷制度との用語は事実に基づかない」と反論した。

間違いがあったら、その場ですぐ正す。
これがすごく大事。

 

「慰安婦は性奴隷だった」という説について、今まで日本政府が調べてきたけれど、その根拠は1つも出てこなかった。
それで、国連の場で「事実に基づかない」と否定する。

去年そんなことがあったことはボクも知っていたから、「sex slaves」と書いたアメリカ人にその根拠をたずねてみた。
もちろん、彼女は根拠をしめすことはできない。

日本政府も韓国政府も見つけられなかったものを、一般人が見つけられるはずがない。
それから少しやり取りがあった後、今度はこんなメッセージがきた。

「I think we can just agree to disagree on this」

「このことについて、『同意できない』ということでは同意できる」とか「一致できないという点で一致している」という意味になる。

 

agree to disagree is a good and kind of popular English phrase.
Please use it!

この英語表現はよく使われるから、知っておいて損はない。
外国人と議論していて、熱くなる前にその場を収めたいときがあったら、これを言って終わらせればいい。

この後、このアメリカ人はsex slavesという表現を使わなくなった。
自分がその根拠を知らなかったことに気づいたからだろう。

 

それにしても、アメリカ人と話をしていて慰安婦問題の話題になるとは、まったく予想していなかった。
もしボクがこのとき慰安婦問題について知らなかったら、かなり困っていたと思う。
「アイムソーリー」とか言っていたかもしれない。

そしてこのアメリカ人も、「慰安婦=sex slaves」という認識のままだったはず。

 

 

今までの海外旅行で、韓国人の旅行者と出会って歴史問題について話をしたことが2、3回ある。

もちろん、こちらからこの話題を持ち出したことはない。
韓国人の質問に答えることがほとんど。
言ってみたら、専守防衛だ。

 

「日韓の歴史問題なんて、自分には関係ない」と思っていても、突然それが自分に降りかかってくるかもしれない。

例えば、フィリピンで英語留学をしていた日本人がブログにこう書いている。

慰安婦問題については、ある日の昼食に食堂でご飯を食べながら今まで行ったことのある国について話をしている時にある友達が、『comfort women』の事は知ってる?って聞いてきたことから始まりました。

フィリピン留学中に韓国人の友達と話したこと〜兵役と慰安婦問題について〜

今、世界はせまい。
いつどこで誰から、慰安婦問題や徴用工問題について聞かれるか、分かったもんじゃない。

だから、日韓の歴史問題については、基本的なことは知っておいたほうがいい。
特に日本政府の主張を知っておくことは大事だ。

そうしたら、きっと有効な対応ができる。

 

 

最近、ロイター通信にこんなニュース(2017年12月8日)があった。

政府は、世界文化遺産の端島(通称・軍艦島、長崎市)の炭鉱で戦時徴用された朝鮮半島出身者に関し、過酷な強制労働の実態はなかったとする元島民の証言を公開する方向で検討に入った。

政府、軍艦島での強制労働なし

今問題になっている「徴用工」とは、この軍艦島で働いていた韓国人のことをさす。

韓国では最近、徴用工の像が建てられていて、日本政府に対して賠償金を求める動きも活発化している。

でも、この問題はすでに解決している。
1965年の日韓請求権協定で、韓国政府が賠償問題の解決について合意しているのだから。

 

韓国では、「軍艦島で、多くの韓国人が過酷な環境で強制労働をさせられた」と主張している。
だから、「そんな事実はなかった」という元島民の証言は、韓国の考えを真っ向から否定することになる。

日本政府はこれをやろうとしている。
韓国は怒るだろうけど、実際に住んでいた人の証言を無視するわけにはいかない。

韓国が「過酷な環境で強制労働をさせられた」と主張するのなら、怒る必要はなくその根拠をしめせばいい。

 

2017年の夏、韓国で「軍艦島」という映画が公開された。

映画では軍艦島を「地獄島」と呼んでいる。

この映画の内容を簡単に書くと、端島(軍艦島)で働いていた朝鮮人の徴用工(労働者)たちが日本人と戦い、命がけでこの島から脱出する、というもの。

韓国の中央日報の記事(2017年07月21日)によると、こんな映像がある。

画面いっぱいに広げられた旭日旗は真っ二つに裂け、日本の軍人は火に焼けて死ぬ渦中に首を切られる。朝鮮人は火炎瓶を作って日本に投げる。朝鮮人に対する暴力もまた赤裸々だ。性搾取と電気拷問から始まり、鋭い釘の上に人を転がして殺す方法まで、詳細な描写が出てくる。

映画『軍艦島』監督「全身を殴られたかのようなしびれを感じてもらいたかった」

・日本の軍人は火に焼けて死ぬ渦中に首を切られる。
・朝鮮人は火炎瓶を作って日本に投げる。
・性搾取と電気拷問、鋭い釘の上に人を転がして殺すという朝鮮人に対する暴力

これらはすべて映画の演出だ。
軍艦島で実際にあったことではない。

長崎市長はこの映画について、「島は決して地獄島と表現されるような状況ではなかった」と市議会で話している。

 

でも、この映画の内容を、歴史の事実だと勘違いする人が実際に出てきている。
これは世界中で公開されたから、世界中に誤解が広がったはず。

「慰安婦はsex slaves(性奴隷)だ」と信じていたアメリカ人も、どこかでこうした影響を受けたのだろう。

 

慰安婦問題にしろ徴用工問題にしろ、韓国には宣伝力や拡散力がある。
具体的な根拠がなくても、あまり関係ない。
相手の感覚を刺激したり感情を動かしたりして、韓国の主張を相手に信じこませることがうまい。

 

ある日突然、日韓の歴史問題について意見を求められるかもしれない。

韓国の主張を100%正しいと考えている人には、日本政府の主張をぶつけてみることが効果的だ。
特に根拠をしめすように求めると、たぶん相手はそれを出せない。

「I don’t know」をくり返すだけの対応は、おススメしない。

だから日韓の歴史問題については、ウィキペディアより、外務省のホームページを見て知識を身につけたほうがいい。
韓国の主張は根拠が弱いけれど、日本政府はその点が強い。

 

「日韓の歴史問題は自分には関係ない」と思っていて知識のない人が、苦労するか不快な思いをする。

こんな日本人旅行者と会ったことがある。
ポーランドの宿で出会った韓国人の旅行者から歴史問題を持ち出されたけど、自分は何も知らなかった。
「I don’t know」と言っていたら、”正しい歴史”を教えられ、最後には謝罪させられた。

その日本人旅行者は、「今思い出しても不愉快ですね」と苦々しそうに言っていた。

でも、歴史問題の知識がない。
そんな事態が起こることも想定していなかった。
だったら、そうなっても仕方がない。

 

 

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日本と韓国の違い:法治国家と人治国家。法より情緒優先の国。

慰安婦問題:福沢諭吉が今の韓国を見たら、きっとまた怒る。

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近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

2 件のコメント

  • こんにちは、菊池です。
    久しぶりのコメントです。

    「軍艦島」という映画の中に、釘の上に転がされて殺されるシーンが登場するそうですが、軍艦島でそのような事実があったという話は聞いたことがありませんが、以前ある元慰安婦の方が戦地の慰安所で友達の慰安婦の女の子が日本軍の兵士から拷問されて無数の釘を打ちつけた板の上を転がされているところを見た、という証言をしていたので、それを映画に取り入れたのではないかと思います。
    その元慰安婦の女性はおそらく嘘を言ったのではなく、記憶の混乱で夢で見たことと実際に起こったことがごっちゃになったのではないかと思っています。
    僕の想像ですが、戦地の慰安所で友達の慰安婦の女の子が病気か怪我で死に、そのあとにそのような夢を見て、あまりにもインパクトの強い夢だったため記憶の混乱が起こり、それが実際に起こったことだと認識してしまったのではないかと思います。
    なにしろ証言を始めた時点で70歳前後になっていたおばあさんが、半世紀も前の記憶を呼び起こして証言しているのですから、様々な記憶の混乱は当然にあったと思います。
    問題なのは、このような証言を何も疑うこともなく信じてしまう韓国社会です。
    人を転がすほどの広さであれば2メートル四方位の大きな板が必要になり、数千本から万単位の釘を打ち込む必要があります。そのような物を作るには大変な手間暇がかかりますし、重さも大変なものになります。普通に歩くのも困難な戦場を何のためにそのような物を運ぶ必要があったというのでしょうか。(慰安婦を拷問するため?)
    拷問というものは何かの情報を引き出すために行うものです。慰安婦の少女を拷問して何の情報を引き出そうというのでしょうか。
    そもそも体が資本の慰安婦を傷つけて慰安婦として使い物にならなくしてどうするつもりでしょう。
    それとも映画で描かれたように慰安婦を殺すために、わざわざそのような物を作り、戦場を持って歩き、使用したというのでしょうか。
    そのような不合理性を韓国の人は誰も感じないのでしょうか。本当に不思議です。

  • こんにちは。
    お久しぶりですね。
    「釘の上に転がされて殺されるシーン」の元ネタはそれかもしれませんね。
    そうしたものを検証しないで、新聞やテレビがそのまま伝えてしまうことが問題です。
    国民はそれを真実だと信じてしまって、それを否定すると感情的に反発する。

    慰安婦の証言でいえば、アメリカ軍が戦争中に記録したものが残っています。
    それは、毎日新聞の記事「米の尋問調書発見…日本支配の過酷さ記録」にのっています。
    そこでは、「太平洋で目撃した朝鮮人慰安婦は、志願したか親に売られた者だった。(軍による)直接的な徴集があれば暴挙とみなされ、老若を問わず朝鮮人は蜂起するだろう」と書いてあって、今の韓国政府が主張する「日本軍による強制連行」を当時の慰安婦が否定しています。
    でも、韓国がこうした証言を国民に伝えることはないでしょうね。

    不合理がまかり通る背景には、こうした情報統制があるのでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。