超・時間厳守の日本社会。30分遅れのペナルティーはどれほど?

 

日本は超・時間厳守の国だ、と来日した外国人がよく言う。

京都に来たドイツ人は「JRと京阪電鉄の運行は完璧だ」と感心し、韓国人は「日本に行ってみて。新幹線が遅れたのを見たことがない」とネットに書き込む。

くわしくはこの記事をご覧ください。

日本・ドイツ・韓国、電車の運行が一番正確なのはどこの国?

 

時間を厳守するはいいことだけど、それだけじゃない。
時間を大事にする日本社会では、遅刻した時のペナルティーが大きい。
だから、ときどきムチャなことをする人がいる。

最近も朝日新聞の記事(2018年9月19日)に、新名神高速を約50メートル逆走したバスのことが書いてあった。マッドマックスかよ。
ジャンクションで間違ったところに進入したドライバーが「やべっ!」と、片側1車線の道を50メートルバックして正しい道に入り直した。

でもそれがバレてしまい、バス会社はみごと全国紙にデビュー。
遅刻厳禁の意識から、ドライバーは思わずバスをバックさせたらしい。

工場見学者14人を乗せたツアー中で、運転手は「遅れると迷惑をかけると思った」と説明しているという。

「間違えて出口に…バス、バックして高速逆走50メートル」

 

ネットの反応を見ると、「これはドライバーがいけない」という意見がほとんど。
ただ少数だけど、「遅刻厳禁とかやってるからダメなんだよ」「間違いを許さない風潮があるし」と、時間に厳しすぎる日本社会に原因を求める人もいた。

 

でもこれはドライバーが悪い。
片側1車線でバスが逆走するのは怖すぎる。
「迷惑をかけてはいけない」と思ってしたことが、ド迷惑になってしまうことが人生ではある。

インドネシアやブラジルだったら、「間違ったとこに入っちゃいました。この先で引き返しますね。工場には少し遅れるけどごめんなさいね。てへぺろ」と車内放送で言えばたぶん問題ない。
インドネシアやブラジルは「時間厳守」や「遅刻厳禁」の意識がゆるくて、間違いを許す社会だから。
少なくても日本よりは。

「時間は絶対で、人がそれに合わせないといけない」という考え方は基本正しいけど、人は時間神につかえる信者じゃない。
時は金なり、だけど人間の安全よりは下にある。
時と場合によっては時間や迷惑を無視する勇気を持たないと、逆走ドライバーのようになってしまう。

 

 

では、このケースはどうだろう?

日本を代表する美術家に、横尾 忠則(よこお ただのり)さんがいる。
横尾さんはニューヨークADC賞金賞や旭日小綬章など数々の賞を受賞した人で、まさにこの分野の第一人者だ。

 

神戸にある横尾忠則現代美術館(横尾氏の個人美術館)

 

兵庫県にある市岡之山美術館が特別展「横尾忠則 西脇幻想展」(9月28日~来年3月24日)を開く予定だった。
でも突然、その延期が発表された。

原因は美術館職員の遅刻。

横尾氏がメイン作品を制作する日に、職員が30分遅れてしまった。
これに横尾氏が激怒する。

読売新聞の記事(2018年09月18日)から。

制作用の素材を持参する職員らの到着が約30分遅れ、待たされた横尾さんが立腹。市内のホテルに引き揚げた。

「職員遅刻に立腹、制作進まず…横尾さん個展延期」

 

これで横尾氏は「創作意欲が失われた」と話す。
作品の制作が進まないから、特別展の開催は不可能となった。

この出来事にネットの反応は?

ボクが見た限りでは、「年取ると怒りやすくなるからね 」「ここまで怒るなんて器が小さい」と横尾氏を非難する声は少数。
「これは当然」「横尾さんの判断は正しい」と支持する声が7~8割を占めた。

・依頼した側が30分も遅刻するなんて
一般の会社じゃありえないだろ。
・まあ30分の遅刻は正当化できない
・器が小さい、というが、当事者なら腹立つと思うよ
・作品作ってくださいとお願いした側が勝手に遅れてんじゃ無理だわな
・なんで30分も遅刻した側を擁護する奴が多いんだ?
・芸術家に限らず、30分遅刻で仕事がパーになるなんて、当たり前だろ。
・時間守れないやつは、仕事する資格なし
・打ち合わせならともかく「今から作るぞ~」って創作意欲を高めているときに30分遅刻されたらな。芸術は感性の世界だからタイミングを外されて気持ちが乱れたらお終い

この件、あなたはどう思いますか?

 

 

ボク個人の感覚では、30分の遅刻で個展が開かれないというのは厳しすぎる。
職員が遅刻した理由にもよるけど、途中でポケモンGOをしていたワケじゃないだろうし。

以前から告知されていた個展が、直前になって自分のせいで中止になってしまう。
しかも開催期間は4カ月だったから、チケットや会場をどうするかで、関係者は頭を悩ませているはず。遅刻した職員はいまどんな気持ちなのか。
ご飯はのどを通らず、夜も眠れないのでは?

だからボクは、これで個展がキャンセルになるというのは厳しすぎると思ったのだけど、ネットの意見はそうではない。
「仕事がパーになるなんて、当たり前だろ」という声が多くて驚いた。
日本が時間厳守の社会というのは知っていたけど、30分のペナルティーがこれほど厳しいとは思わなかった。
これから気をつけよ。

 

でもこれ、インドネシアやブラジルだったらどうだろう?
さすがに「てへぺろ」ではすまないけど、30分の遅刻で個展の中止にはならないと思う。
職員と芸術家の両方が遅刻して、予定時刻の1時間後に制作が始まる気がする。

 

 

おまけ

2017年、世界の航空会社で、最も時間厳守で運行したのは日本の会社だった。

世界の空港の定時運航遵守率ランキング「OAG Punctuality League 2018」によると、第1位がJALで2位はANA。

くわしいことは「トラベルボイス」の記事()をご覧ください。

世界の航空会社・空港の定時運航率ランキング2017、JALとANAがツートップ独占、LCC・空港分野でも日本勢が圧勝の結果に

世界よ、これが「30分の遅刻は正当化できない」という国だ。

 

 

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2 件のコメント

  • あなたはわかってないよ。
    時間に遅れたことで、あ客さんに迷惑をかけるが、ドライバーは会社から致命的なペナルティを食らう。
    それくらい想像つかないか?雇われている人は奴隷のように扱われる。
    そのことによって、こういったバスのドライバーや、電車の事故が起こる。それが日本社会。

  • いろんな人がいます。
    明石家さんまさんが大先輩の田村正和さんを1時間以上も待たせた時、急いで入ってきてさんまさんに、田村さんは「ありがとう。待っている間、カレーを食べられた」と言いました。さんまさんは「何度救われたか」と田村さんに感謝しています。
    遅刻を正当化するわけではないですが、対応は人それぞれ違っていていいと思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。