もし、日本にいるイスラーム教徒が豚肉を食べてしまったら?

 

知り合いのインドネシア人のムスリム(イスラーム教徒)が日本にやって来て、真っ先に覚えた漢字は「豚」だった。
豚肉を食べることはアッラーから禁止されているから、日本に住むムスリムにとってこれはマストで必須。

具体的には聖書クルアーン(英語読み:コーラン)にこう書いてある。

あなたがたに禁じられたものは、死肉、(流れる)血、豚肉、アッラー以外の名を唱え(殺され)たもの、絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、(ただしこの種のものでも)あなたがたがその止めを刺したものは別である。

ハラールとは

 

こんなワケで、ムスリムに豚肉はNG。
そのインドネシア人はコンビやスーパーで食品を買うときは、「豚」の文字がないかチェックしている。

だから最近イギリスで豚肉入りのソーセージ・マフィンをわたされて、それを食べてから「!」と気づいたイスラーム教徒が激怒した。

 

くわしい内容は英紙「ザ・サン」が報じている。(4 Jan 2020)

PORK PANIC ‘Devastated’ Muslim demands McDonald’s compensation after biting into pork Sausage McMuffin he was served by mistake

いつものように卵とチーズのマフィンを注文したのに、店員は間違って豚肉のソーセージが入っているマフィンをわたしてしまったらしい。
それを食べると、「The taste was horrible」(身の毛がよだつ、恐ろしい)味がして、すぐに吐き出した。

あってはならないことが起きたと知って、自分はそれまで全人生から豚肉を遠ざけていた。マクドナルドのような大企業がこんなミスをするべきではないと怒りに震える。

「I’ve kept myself away from it [pork] all my life. McDonald’s is a big name, it’s a huge retailer. They shouldn’t make mistakes like this.」

この人はマクドナルドに謝罪と賠償を要求している。
注意一秒ケガ一生。
マクドナルド側はこれから大変だ。

このニュースにネットの声は?

・アラー困ったわね。
イスラムだけに。
・食べたことないのによくわかったな
・もう天国には行けないんだっけ?
・こいつが今日豚肉食ったのもアッラーがそうなるようにしたんだろ
・これから日本の外食は大変だな

 

タイでは観音信仰などから、牛肉を食べない人が多い。
ということでマクドナルドでは、豚肉を使った「サムライポークバーガー」なるのが売っている。照り焼きソースを使っているから、和風の名前になったらしい。

 

さて、話を冒頭のインドネシア人にもどそう。
日本に来て「豚」の漢字を覚えた彼だけど、一度だけ、間違って豚肉を食してしまったことがあるという。

コンビニでいつもの安全な食べ物を買った、つもりだった。
でも実はそれは違う種類のもので、いままで経験したことのない食感を感じる。
味はよく分からなかったけど、「これはきっと豚肉だ!」と直感してすぐにそれを吐き出して、念入りに歯を磨いて何度もうがいをしたそうな。
「The taste was horrible」と同じ気持ちだったはず。

「それ、やばいよね。豚肉を食べちゃったらどうするの?歯磨きだけでOK?」ときくと、あっさり「問題ない」と言う。
もちろん豚肉を食べてしまったことは大問題だけど、クルアーンではこういうケースを想定していて、知らずに口にした豚肉ならかまわない(罪にならないと言っていた気がする)と書いてあるらしい。
彼はアラビア語を理解できるから、クルアーンの原文を読むことができる。
こんなインドネシア人はけっこうスペシャル。

まあ、これだけで天国に行けなくなったらつらすぎる。
イスラーム教もけっこう柔軟性があるんだなあ、と思うと同時に、仏教の「三種の浄肉」を思い出した。
仏教では肉食が禁止されているけど、次の三種の肉ならお坊さんでも食べてもいいことになっている。

・殺されるところを見ていない
・自分に供するために殺したと聞いていない
・自分に供するために殺したと知らない

だから例えば、「お坊さんのためにこの豚肉料理を作りました」というのは食べてはいけない。
でも、余った肉料理をたまたま托鉢のお坊さんにわたしたのなら、お坊さんはそれを食べることができる。

くわしいことはここをクリック。

三種の浄肉

イスラーム教でも仏教も信者は人間だから、人生のどこかで「うっかり」は起こりうる。
そのための救済法をちゃんと用意しているきめ細やかさが、世界的な宗教になった理由なのかも。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。