「抗米救国戦争」ともよばれる1970年代のベトナム戦争とはどんな戦いだったのか?
ベトナム南部の都市ホーチミンにある「戦争証跡博物館」に足を運べばその実態が見えてくる。
ここは戦争の悲劇を伝える場所で、日本人にとっては原爆資料館のようなところ。
「アメリカと中国と戦って、どちらも退けた国は世界でベトナムだけです」と、自慢そうに話す現地の日本語ガイドとここを訪れたのはもう10年以上も前のことで、ベトナム戦争で使われた戦闘機や戦車などの展示を見てから、中に入って絶句した。
米軍の枯葉剤で「死の世界」となった森林
これはまだいいほうで、血を流したベトナム人の死体が山のように積み重なっている写真もあった。
ベトナム戦争を象徴する一枚『安全への逃避』
これを撮影した沢田教一は、ハーグ第9回世界報道写真コンテスト大賞やピューリッツァー賞を受賞した。
高校で世界史を学んだし、ベトナム戦争については本を読んだこともあったのだけど、恥ずかしながら、ベトナム戦争で韓国軍がアメリカ側に立って参戦していたことはこのときまで知らなかった。
だからこの写真を見たときはベトナム人兵士と思ってしまった。
「韓国・ベトナム混血児1万人」というのはいわゆるライダイハンのこと。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
慰安婦 vs ライダイハン問題①ベトナム人や外国人の反応は?
慰安婦 vs ライダイハン問題②外国人に指摘された韓国人の反応
30万人以上の韓国軍兵士が動員されていたのだから、この戦争は「アメリカ vs ベトナム」という単純なものではない。
ベトナムにやってきた韓国軍兵士が性的暴行や虐殺などの蛮行をしていたことも、ガイドの話を聞いて初めて知った。
ガイドは歴史を学んだからそういう出来事をわかっていたけど、普通のベトナム人は知らないか、「そういうことはどこかで聞いたような?」程度の知識しか持っていないらしい。
ライダイハン問題やベトナム中部で起きた虐殺事件などを話したガイドは、個人的には韓国に罪を認めて謝罪してほしいけど、同時に、もう過去のことだから今になって問題化しなくてもいいという気持ちもある。
とにかく自分の役目は歴史を伝えるこだから、こうやって外国人にベトナムで起きたことを話している。
今になって思えば、このときガイドが言っていたベトナム中部で起きた虐殺事件というのは「ハミの虐殺」かもしれない。
これは1968年に韓国軍の青龍部隊が行った事件で、クアンナム省ハミ村で女・老人・子供を広場に集め、一斉射撃や手りゅう弾を投げるなどして民間人135人を殺害した。
でも、後悔や罪悪感があったのだろう。
後に青龍部隊の退役兵がハミ村を訪れて25000ドルの寄付をして、次のように書かれた記念碑が建てられた。
「ここは血に染まり、砂と骨が入り混じり、
家は焼かれ、火に焼かれた死体をアリがかじり、
血のにおいが満ち満ちていた。
爆風が吹き抜けると、さらに悲惨だった。
破壊された家では年老いた母や父が呻きながら死に、
子どもたちは恐怖におびえた。
逃げた人は銃撃されて死に、
子どもは死んだ母親のもとに這って行きお乳を吸った。
もっとひどいのは、戦車で遺体を踏みつぶしたことである。
(…)
過去の戦場はすでに苦痛が和らぎ、
韓国人がここを再訪し、恨めしい過去を認め、謝罪した。
そして赦しのうえに、この石碑を建てた。」
でもこれを知って怒り狂った韓国人の勢力がいて、この記述を削除するよう韓国政府に働きかけた。
韓国軍による民間人虐殺という負の歴史を闇に封印しようとしたけど、「碑文の内容まで干渉することは受け入れられない。これは我々の歴史で過去であり真実だ」とハミの村民は屈しない。
すると韓国は本気を出す。
韓国政府はハノイの韓国大使館を通じてベトナム政府に圧力をかけ、ベトナム政府は地方自治体に村民を説得するよう指示した。さらに地元の村の幹部を韓国に招待して接待を行い、懐柔した。
「圧力とおもてなし」の両面作戦が成功して、虐殺が記された碑文の上にはハスの絵の石板が重ねられることになった。
「これこそ歴史にフタをすることだ」というのはある村民のことば。
ベトナム政府も本気でこの碑文を守ろうとしたとは思えない。
でも韓国は強気というかご都合主義で、軍がベトナムでしたことについて韓国政府は1967年に記者会見でこう話す。
このような韓国軍の活躍は、韓国民に対して韓国がアジア平定に寄与するという誇りの感情を与えるもので、またアメリカとの交渉においても韓国の立場を向上させるものである
ちょっと何を言っているのか分からない。
米軍機が投下したナパーム弾
さて韓国の人たちは、特にいまのムン政権にいる人たちは、正義を語る自分が大好きで日本にはすこぶる厳しい。
2年前、李洛淵(イ・ナクヨン)首相は各国に駐在する韓国の大使・総領事ら約180人を集めて行った懇談会で、外交官は「人類普遍の正義と国際的な規定を反映した時計」を持つことが大事だと語る。
そして韓日関係について、「三つ目の時計、それさえも日本は日本式に考え、われわれは歴史の真実・人類普遍の正義という時計を語っている」と指摘する。
首相の見方では、韓国と日本の違いは真実と正義の側にいるかどうか。
残念ながらこれは、韓国社会で一般的に通用する認識だ。
くわしいことは聯合ニュースの記事(2018.12.12)にある。
韓国首相 在外公館長との昼食会で対日関係に言及
でもいまの韓国で最も正義が好きなのはきっと文大統領で、2019年には韓国を「正義の国」と呼んで国民の喝さいを浴びた。
2018年と19年に正義を語った韓国ムン政権にとっては、それを証明するチャンスが訪れた。
朝鮮日報の記事(2020/04/21)
民弁「ベトナム民間人虐殺について賠償せよ」、韓国政府を初提訴
ベトナム戦争のとき、韓国軍によって母親や姉、弟、伯母、いとこなどを殺されたという当時8歳だったグエンさんが韓国政府を相手に訴訟を起こした。
韓国には自分たちが犯した負の歴史を認める人もいれば、フタをしてなかったことにしようとする人もいる。
韓国の弁護士団体「民主社会のための弁護士会」(民弁)が「ベトナム戦争時期の韓国軍による民間人虐殺の真相究明のためのタスクフォース」をつくって、このベトナム女性の支援に乗り出して訴訟の後押しをした。
ベトナム戦争で韓国が行った民間人虐殺について、韓国政府を訴えたこれがはじめて。
民弁タスクフォースによると、「クアンナム省ポンニ村で韓国軍青竜部隊に所属する軍人らによる銃撃が発生し、非武装地帯の民間人74人が虐殺された」という。
グエンさんは「私個人の権利と利益だけでなく、全てのベトナムの被害者たちにとって名誉回復の機会になることを願う」と話す。
また民弁側は、「国防部が、虐殺の事実が記録にないとして虐殺事実を認めず、また外交問題を持ち出して失望するような回答をしている」と政府の消極的な姿勢を批判してこう訴えた。
「われわれ国民が日本を相手に謝罪や損害賠償を要求するのと同じレベルで、大韓民国の軍人がベトナムの民間人を虐殺したという過ちについても(ベトナムの被害者が)韓国政府から謝罪と賠償を受けられるよう民弁がサポートしなければならない」と述べた。また、これについて「普遍的な人権問題」とした。
日韓の間の元徴用工・慰安婦問題については話し合いを重ねて両政府が解決に合意したから、これが具体的に何のことを言っているのかは分からないけど、とにかく韓国ムン政権がこの普遍的な人権問題にどう対応するかは注目だ。
ベトナム戦争の負の歴史に正面から向き合うのか、それともまたフタをしようとするのか。
日本と違って「われわれは歴史の真実・人類普遍の正義という時計を語っている」と豪語した韓国がいま試されている。
見せてもらうか、大韓民国の正義とやらを。
こちらの記事もどうぞ。
ブログ主さんは、ソウルの従軍慰安婦博物館は見たことがありますか?南京の南京大虐殺紀念館は見ましたか?
それらを、今回のベトナム戦争証跡博物館と比較するとどうでしたか?
慰安婦博物館はいったことがありません。
なんでここで中国の話がでてきたのかもわかりません。
どんな意図でしょうか。