2019年に知人の韓国人が夏休みに日本への旅行を決めて、数か月前から、良さげなレストランや観光スポットを調べて計画を立てていた。が、それが直前になって、キャンセルするしかない状況へ追い込まれてしまった。
彼女がワクワクしていたころ、日本政府が韓国に対して輸出管理を厳格化すると発表したところ、韓国政府は大反発した。
当時の文 在寅(ムン・ジェイン)大統領が「日本には二度と負けない!」と国民感情を刺激したことで、7月ごろから「日本製品を買わない、売らない、日本には行かない」の「ノージャパン運動」が急速に盛り上がる。
そのころ、日本旅行を楽しんでいた韓国人が、この昇竜拳のようなボイコット運動の直撃を受けた。SNSに楽しそうな旅行の写真をアップすると、「こんな時期に日本へ行くな。親日(≒売国奴)め」といった中傷コメントが寄せられるようになる。
知人はそんな情勢を見て、いま日本旅行をするのは「危険」だと思い、あきらめた。
輸出管理は政治・経済の問題だから、基本的には両国政府が話し合って解決するべきで、反日感情をあおり、一般国民を巻き込むべきではなかった。
韓国でも、この不買運動はおもに左派が主導した“官製デモ”だと考え、
「文政権の反日カードはもう通用しない」
「ノージャパンじゃなくてノージェインをしよう。これ以上、現政権の反日扇動作戦に利用されたくない」
といった主張をする人もいたが、そうした意見が世論の主流になることはなかった。(日本製品不買運動)
韓国では、一度「反日スイッチ」が入ると、なかなか止められないのだ。
あれから5年が過ぎた今、再び同じことが起こっている。
朝鮮日報の記事(2024/05/15)
「なぜこんな時期に日本へ?」 LINEヤフー問題が韓国ユーチューバーに飛び火
LINEヤフーから大量の個人情報が流出し、日本のメディアからは「LINEヤフーに猛省求める」(日経新聞)と批判され、総務省からは行政指導を受け、LINEヤフーは韓国の大手IT企業ネイバーとの資本関係の見直しに迫られた。
具体的には、ネイバーが株をソフトバンクに売却するかどうかが焦点になっている。
これも企業どうしが話し合って決めるべきで、外野が騒ぐことじゃない。
しかし、韓国ではネイバーが日本に株式を「強奪される」とメディアや政治家が訴え、国内で反日感情が高まっている。
今回は19年とは逆で、尹(ユン)政権は静観していたが、その態度が甘いと批判され、「韓国企業に対する差別的措置はあってはならない」という立場を表明した。
この流れに有名ユーチューバーが巻き込まれ、日本旅行の動画をアップしたところ、「この渦中になぜ日本に行くのか」と批判されたという。
記事には書かれていないが、5年前と同じく、「親日」といった激しい言葉でぶっ叩かれたと思われる。(これが罵倒の言葉になること自体おかしい)
ユーチューバーさんはあわてて釈明したが、鎮火に成功したかどうかは不明。
韓国では、こんな騒ぎが日常茶飯事ではないが、珍しくもない。
ことしの3月1日にも、前日にユーチューバーが日本旅行の動画を公開すると、非難が殺到した。
1919年3月1日に朝鮮半島で日本からの独立を求める運動が起き、現代の韓国ではその日を一年で最も重要な日の一つとしている。
その記念日の前日に、「日本旅行が最高すぎた〜」みたいな動画をアップしたことで、コメント欄は「失望した」「軽率な行動だ」といった批判が洪水状態になり、ユーチューバーは「視聴者の皆さんに不快な思いをさせてしまった」と謝罪し、動画を非公開にした。
もちろん、批判一色ではなく、「みんな本当に愛国者だな」と皮肉めいたコメントをする人もいた。
「LINE問題」では今のところ、2019年ほど反日感情が高まっていないし、(大きな)ノージャパン運動も起きていないが、火ダネはあって、いろいろなところへ飛び火している状況だ。
先日、中央日報にこんな記事があった。(2024.05.24)
SKグループ会長「韓日経済圏を作ってアジアの繁栄を」
韓国・SKグループの会長がいま「韓日経済圏」が必要な理由を力説し、両国の市場が結合すれば、6兆ドル(約942兆円)を越える市場が生まれ、韓日はともに成長することができると主張した。
それなら、政治家やメディアが国民感情に火をつけるようなことはやめたほうがいい。
政治や経済の問題を解決するために、国民の抗日精神は必要ないのだから。それで困る韓国民も少なからずいる。
942兆円超のためにも、まずは身近なことから始めてみては?
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