日本では毎年、夏至の日(2021年は6月21日)は「冷蔵庫の日」という記念日になっている。
本格的な夏が始まる前に、冷蔵庫を総点検してくれ!という目的があるらしい。
それはそれで大事なんだが、でもここでは、日本企業が家電をめぐる争いで韓国企業に敗北した理由について書いていこう。
「過ちは繰返しませぬから」が国是となっている日本人にとっては大事なレッスンだ。
日本のダイキン工業といえば、世界1位のエアコン企業としてその名が知られている。
その強みは音を立てない静かなエアコンで、これを作るには高度な技術と莫大な費用が必要になる。
それを売りにしてインドに乗り込んだところ、人々の心をつかむことには成功しなかった。
インドの消費者には気持ちいい風が出てくればよくて、音に関心はなかったから。
その点、韓国企業は現地のニーズをしっかりと調べ、それに合った製品を投入し成功した。
中央日報の記事(2018.03.16)
現在、インドでエアコン市場トップは韓国のLGエレクトロニクス。マラリア・デング熱など病気の被害が大きいという点に着眼し、超音波で蚊を追い払うエアコンを出した。インド人の好みに合わせて派手な花模様が入った製品も出した。徹底的な現地化戦略が的中したのだ。
「コトづくり」の翼をつけた日本のものづくり
高性能製品をつくり出す「ものづくり」は日本人の大きな武器だった。
でも、「品質と機能さえ優れていればよく売れる」という考え方を過信していたようで、1990年代以降、現地の声にはあまり耳を傾けず、「高級化戦略を通じてブランド価値を高めることばかり考えた」という。
これだけが理由ではないけれど、消費者の性向と需要を分析し、消費者が望む製品を作ったサムスンやLGなどの韓国企業は、日本企業が先に獲得した市場を奪うことに成功した。
蚊によって運ばれるマラリアやデング熱は、人間に死をもたらすこともあるオソロシイ病気だ。
死ななくても、それにかかれば数日は熱や痛みで苦しむことになるから、静かなエアコンより超音波付きのほうを選ぶ理由はわかる。
知人にインド人に聞いたら、「音が出ているほうが安心できる」とよくワカランことを言っていた。
またインドで日本メーカーの冷蔵庫より韓国製が人気を集めたのも、韓国企業が現地消費者の好みや価値観などを徹底的に調べ上げたからだ。
インド人が「鍵付きの冷蔵庫」をよろこんだ理由は、日本人だとクイズになるほど分かりづらい。
「日経 BizGate」の記事(2013/10/24)
サムスン電子の鍵付き冷蔵庫。インドで鍵付きが好まれるのは、「メイドを雇う家庭が多いから」とされているが、「猿が入ってくるから」というインド人もいる。
競争力とは何か?~変化に対応し世界を制したサムスン
野良牛が日差しを避けるような国には、日本人では想像できない常識がある。
技術力では負けていない。
むしろ日本メーカーは高性能・高品質の冷蔵庫を販売したのだけど、インドでの「冷蔵庫攻防戦」で韓国企業に敗北した。
インド社会では「スキを見せると盗まれる」ということが前提にあり、いろんな扉や引き出しには鍵がかかっている。
家族以外の人、知人や友人が来るときでも鍵をかけて、高価な物は見せないように気を付ける人もいるという。
ヒントや答えは現場(現地)にある。
ネズミの侵入を防ぐ洗濯機を作ったLG電子のような発想は日本企業にはなかった。
韓国企業と日本企業で明暗が分かれたのも当然だった。
テレビ産業壊滅の真相 http://t.co/yctfOfi5 インドで売っているサムソンのテレビはクリケットの結果を画面隅に表示する機能があり、冷蔵庫は鍵と停電用バッテリーがついてる。韓国人(サムソン人)は本気で異文化を理解し商売している。日本メーカーが負けるのは必然。
— #楽しい大学 #無敵就活 森山たつを/もりぞお (@mota2008) December 10, 2011
ただそれも昔の話で、これまでの失敗を反省した日本企業が復活の兆しを見せている。
低価格小型車に集中し、インド自動車市場で1位になったスズキ。
照明が暗いインドネシアの事情から、黄色で製品を包装した生活用品会社ユニ・チャーム。
それに電気料金が高い東南アジアの国で、超節電型家電ブランドを出したパナソニックなどは成功していて、韓国の日本経済専門家は「コトづくりを通じた日本企業の競争力・生産性の向上が日本経済を復活させた原動力だ」と危機感を表した。
実際、現地の需要と好みに合う製品を提供することで、ダイキンはインドのエアコン市場で首位に立った。
日本経済新聞の記事(2018年12月5日)
ダイキン、地域5分割で攻略 インドのエアコン市場
広大なインドを気候や電力供給の状況などをもとに5つの地域に分けて考え、50度を超す高温や停電でも壊れにくい製品を開発し、これが受け入れられた。
この「五等分の花嫁」みたな作戦で、ダイキンは韓国企業の優位に立つことに成功した。
技術があっても方向性が間違っていると絶対にうまくいかないし、その2つがかみ合うと爆発的に前進する。
日はまた昇るか。
いや、昇ってくれ。
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よく「日本の家電はガラパゴスだからダメ」ってひといるけど日本のパゴスをそのまま輸出がダメなのであってその国その地域でパゴればいいってことなんですよね~。言われれば簡単だけど気づくのは難しい