【屈辱外交】中国の対応で悩む韓国、注目したのはリトアニア

 

3日前の1月12日は、リトアニアで「血の日曜日事件」が起きた日だ。

そうかあの事件が…。でリトアニアってどこ?
という人のために簡単に紹介すると、リトアニアはスウェーデンの南、ロシアの西にある東ヨーロッパの国。
北海道より小さいな面積(6.5㎢)に約279万人が住んでいる。
そんな小国の人たちが1991年1月12日、リトアニアに侵攻してきた大国ロシアに体を張って抵抗し、多くの人が命を失った。
これが導火線になって全リトアニア人の心に火をつけ、独立革命につながってみごと独立を達成した。

そんな歴史のあるリトアニアに、韓国メディアの朝鮮日報が注目する。(2022/01/15)

【コラム】小国リトアニアに学ぶ中国の扱い方

このところリトアニアと中国の関係はかなり悪化している。
2020年にはリトアニアで市民が中国政府に対し、香港の犯罪人引き渡しに関する抗議デモを行うと、現地の中国大使館員や中国人がこれに反対して暴力ざたになった。

そしてつい最近、リトアニア政府は自国に台湾代表部の設置を認める。
これは「一つの中国」の原則に反することだから、中国としては絶対に認められない。
それに対しリトアニアは、「台湾代表部は経済・文化交流に向けた機関であり、一つの中国という原則とは矛盾しない」と声明を出すも、中国メディアは環球時報「ハエを捕まえるように叱りつけるべきだ」と激怒だ。

報復はすぐにきて、中国の通関を拒否されリトアニアのラム酒2万本は行き場を失う。
すると台湾が「ならばそれはウチが引き取ろう!」と買い取りを発表。
ほかにもリトアニアに向かう貨物列車の運行を中断したり、両国の外交関係を大使級から代理大使級に格下げたりと、中国はリトアニアに「これでもか!」とばかりに圧力を加える。
でもリトアニアは、「中国の制裁は栄光であり、われわれが正しいことを確実に示している」という雰囲気で動じていないという。

こんなリトアニアを韓国のコラムニストは、「長い間続いた血の支配により大国の横暴や共産党による強圧的な統治に対する反感は非常に強い」という。

 

このところ韓国では中国に対する信頼や好感度が、だだ下がりになっている。
最近、韓国で発表された世論調査によると、20カ国・地域の中で「信頼できる国」ではアメリカがトップ(71.6%)で、中国は最下位でわずか6.8%。
日韓関係が「戦後最悪」といわれるなかでも日本は13.3%だったから、その半分ほどの中国に信頼を置く韓国人は、もはや絶滅危惧種に指定していいレベル。
まぁ中国で調査を行えば、韓国に対して似たような結果になるのだろうけど。

ただ経済でみれば中国は韓国の1番のお得意さんで、ぶっちゃけ中国なしではやっていけないから、無視や軽視をすることはできない。
中国はそのへんの事情をよく知っているから、韓国にはけっこうムチャなことを言う。
それでも何とか耐えて文政権は中国重視で外交政策をとるから、国民世論も「屈辱的だ」、「いや現実的だ」と賛否に分かれている。

でも、そろそろ限界に達した人が増えているらしい。
半年ほど前、中国に精通しているのチョン・ドック元産業資源部長官が中央日報でこう主張。(2021.08.24)

韓国の国格が損なわれるようなあらゆる外交的屈辱を受けても対中疎通チャンネルが不足しているためまともに哀訴もできない。こうした不当な待遇は韓国が自ら招いた側面が大きい。

「もう中国と無条件で仲良く過ごそうという考えは捨てなければ」

 

韓国政府が中国を過度に意識するから、勝手に「中国恐怖症」におちいってしまう。
それは中国に見透かされているから、逆手にとられて韓国は利用されてしまう。
そんなことから、これからは中国に対してもっともっと強く出て、韓国の名誉や国格を中心に考え、毅然とした態度で対応するべきだとチョン氏は言いたいらしい。

中央日報は2年前にも、中国の『偏狭な民族主義』や『行き過ぎた愛国主義』をコラムで非難した。(2020.10.20)

知識界は中国の歪曲された歴史認識と自己中心的な二重のものさしに対する対応論理を開発し厳しい忠告を与えなければならない。

【リセットコリア】中国のずれた愛国主義、駄目なものは駄目だと言わねば

 

こうした主張は韓国の保守派の人たちの支持を得ているから、同じ姿勢の朝鮮日報もこんな記事を掲載する。(2022/01/07)

「中国を刺激しない屈辱外交から抜け出せ」「米国との協力は必要だが中国を敵対視しては駄目」

韓国は「屈辱外交から抜け出せ」と考える人たちの目に、中国を激怒させても自分の主張を貫いて「中国の制裁は栄光であり、われわれが正しいことを確実に示している」と言い切るリトアニアは誇り高く輝いて見えるはず。
朝鮮日報がこの小国に注目した理由はきっとそれだ。
台湾については昨年末、韓国政府はデジタル担当相のオードリー・タン氏に講演を依頼していたのに、当日の朝になってドタキャンして台湾から激しい抗議を受けた。
これは中国から圧力を受けたとしか考えられず、保守派は「屈辱外交」と怒っていた。

 

ただリトアニアと韓国では、対中関係の前提がまったく違う。
リトアニアの中国向け輸出の割合はたった1%で、韓国は2017年で約25%(もちろん1位)だから中国との結びつきの深さは比較にならない。
ちなみに2位がアメリカ(12%)で日本は約5%だ。
この数字はいまはもっと増えているだろうから、もし経済制裁をくらったら、リトアニアとは受けるダメージが違いすぎ。
じっさい昨年末、尿素水の輸出を止められだけで、韓国社会は大パニックになったぐらいなのだから。
太陽光発電、バッテリー、液晶パネルなども中国の素材提供に依存していて、韓国が世界トップレベルの製造能力を持つと誇るSKイノベーションやサムスンSDIなどのバッテリーメーカーも、その原材料はほとんどを中国のものだ。

朝鮮日報(2022/01/16)

韓国の急所を握る中国、尿素水など1850品目でシェア80%超 

「中国を刺激するな」という人に言わせれば、これだけ依存していて何を言っているのかと。

 

リトアニアはEU加盟国で、反中国の姿勢はヨーロッパ諸国やアメリカの共感や支持を得ている。
それにリトアニアはIT強国だから、世界的な半導体企業をもつ台湾とタッグを組むメリットはとても大きい。
経済で中国に依存してないし、こうした現実的な戦略や見通しがあるから、「ハエを捕まえるように叱りつけるべきだ」と言われても、「中国の制裁は栄光」と言い返すことができるのだ。

「屈辱外交から抜け出せ!」という韓国人がそんな凛とした態度を見たら、「リトアニアはおれたちにできない事を平然とやってのけるッ、そこにシビれるあこがれる!」となる。
それで「中国の扱い方」を学ぼうというのだが前提が違いすぎるから、韓国がリトアニアと同じことをやっても、受け止められないような巨大ブーメランが飛んでくるだけだろう。
き然としたリトアニアさんに、自分を重ねてスカッとするぐらいでいい。

まぁ対中外交について、「屈辱外交から抜け出せ」 vs 「敵対視してはダメ」に分かれる状況は日本も似たようなものだけど。
でもリトアニアに学ぶのなら、扱い方ではなくて接し方でいい。

 

 

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1 個のコメント

  • > 「ハエを捕まえるように叱りつけるべきだ」
    呆れるなぁ、政府系メディアたるものが、小国とは言え他国のことを「ハエ呼ばわり」とは。

    > まぁ対中外交について、「屈辱外交から抜け出せ」 vs 「敵対視してはダメ」に分かれる状況は日本も似たようなものだけど。
    意見が分かれていると言うか、その2つの世論が相容れずに真っ二つに国民が分断されているのでは問題ですけど、日本はそうじゃない。多くの国民はどちらの意見も了解していて、どの程度の割合を方針とすべきかで意見を戦わせているのですよ。民主主義社会ですから。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。