日本視点で韓国と台湾を眺めると、同じ過去があるのに現在がまるで違うとよく思う。
まず両者には、こんな歴史の共通点がある。
・日清戦争の後から太平洋戦争に負けるまでの間(1895~1945年)、日本は台湾を統治した。
・朝鮮併合から敗戦までの間(1910~1945年)、日本は朝鮮半島を統治した。
統治期間は台湾のほうが15年ほど長いのだけど、現在の日本への視線を見てみると、韓国は冷ややかで台湾はとてもあったかい。
きょうはめでたい天皇誕生日なので、それに焦点を当ててその違いを書いていこう。
2月23日の天皇誕生日を前にして、ソウルで日本大使館が日韓の友好親善の目的もふくめてお祝いの式典を開催した。
毎年開かれるこのイベントで(コロナによる中断はあり)、今年は画期的なことがあって、初めて日本の国歌が演奏されたのだ!
きょねん誕生した尹(ユン)大統領が日本との関係改善にホンキを出すと、それまで氷河期にあった日韓関係が動き出す。
韓国社会にはまだ反日感情は強くあるものの、関係改善の流れが出てきたことを受けて、今回ついに「君が代」にGOサインが出た。
でも世界的にみれば、大使館主催の行事で、国歌を流すことができないというのは明らかにおかしい。
そんな異常状態から脱して国際常識に近づくと、それに文句を言う人も出てくる。
朝鮮日報の記事(2023/02/21)
共に民主・李在明代表「ソウルで君が代を演奏…尹政権の対日低姿勢を象徴する恥辱的な光景」
天皇を「日王」と“格下扱い”する最大野党のトップ・李在明(イ・ジェミョン)代表は、日本の国歌が演奏されたことをこう批判。
「日本の軍国主義を象徴する君が代が史上初めて演奏された」
「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の対日低姿勢・屈従外交を象徴する恥辱的な光景だ。今は1945年の解放前の日帝時代のようだ」
“反日強硬”で国民にアピールする韓国の政治家のなかでも、イ氏は「ラスボス」のレベルにいるから言うことも過激だ。
東京で韓国の国歌、ソウルで日本の国歌が流されるのは当然。
なのに日本が韓国と同じことをすると、「恥辱的」と怒り出すイ氏のような人もいる。
これじゃ、「のび太のくせに生意気だぞー」というジャイアン理論と変わらない。
そしてイ氏はこんな政権批判につなげた。
「大韓民国の屈辱と屈従を前提とする両国関係の正常化には同意できない」
「(対日屈従外交は)主権者である国民を愚弄する行動である点を直視するよう求める」
いままで日韓が、正常な関係を築けなかった理由を的確に説明してくれている。
東京で韓国の国歌が流れたと知って、「屈辱と屈従」と怒る日本の政治家はいない。
そんなイ氏の人柄がよくわかる記事があった。
朝鮮日報の記事(2023/02/22)
共に民主・李在明代表「私がどこに逃げるというのか」発言を与党幹部が批判「過去2回逃げた常習犯」
過去の行ないから、逮捕が目前に迫っているイ氏は「私がどこに逃げるというのか」と強調すると、対立する与党の幹部から、過去に2回も捜査から逃げた「常習逃走犯」だと言い返された。
警察の捜査から逃れるために旅館を転々としたり、位置情報を消すため携帯電話のバッテリーを取り外して逃走したことなどが、自叙伝の『李在明はやります』に詳細に書いてあるという。
これはもう「笑ってはいけない」のレベル。
こんなデタラメな政治家でも、日本に強い姿勢をアピールするとやっぱり国民には受ける。
文前政権の路線も基本的に反日強硬だったから、国内では広い支持を得られた一方、日韓関係は落ちるところまで落ちた。
いまのユン政権がガンバッテそれを修復し、日本政府も協力しているのが現状だ。
台湾に目を移すと、同じ天皇誕生日の祝賀会でも別の天地が広がっている。
台北中央社の記事(2023/02/21)
台北で天皇誕生日祝賀会 ジュディ・オングさんらが出席/台湾
まず台湾に「日王」なんて侮辱的な言葉は無いし、「君が代」が自粛に追い込まれる空気も無い。
台北市内のホテルで開かれた祝賀レセプションには、台湾の副首相をはじめとする政界のVIPが出席して、蔡英文(さいえいぶん)総統は祝電で「台湾と日本は互いの重要なパートナー」と述べた。
韓国の場合は、参加して祝辞を述べたのは外交部(外務省)の第2次官だから、台湾とは比べられない。
ユン大統領が祝電を出したり、韓国の大物タレントが式典に参加するのも、国民感情を考えたら不可能だろう。
もちろん台湾では、ホテルの前で市民団体による反日デモなんて起こらない。
同じ天皇誕生日を祝う会でも、「台湾と日本は互いの重要なパートナー」とみる人もいれば、「対日低姿勢を象徴する恥辱的な光景」と怒る人もいる。
韓国と台湾には共通の過去があっても、現在の日本への見方は真逆と言っていいほど違う。
「今は1945年の解放前の日帝時代のようだ」というアピールは台湾人には通じない。
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