日本は幕末に鎖国をやめて、外国人を迎え入れることにした。
日本にやって来た多くの欧米人が、日本の印象を書き残している。
彼らによって、それまで欧米にはほとんど知られていなかった日本の様子が見えてきた。
このとき訪日した外国人の多くがこんなことを思った。
「日本はとても清潔だ!」
日米修好通商条約を結んだアメリカ人のハリスもその一人。
*日米修好通商条約:1858年に結んだ条約。これで、神奈川・長崎・新潟・兵庫が開港した。
1856年(江戸時代)、下田の様子を見たハリスはこんな感想を述べている。
世界のあらゆる国で貧乏にいつも付き物になっている不潔さというものが、少しも見られない。彼らの家屋は必要なだけの清潔さを保っている
「逝き日の面影 (平凡社)」
何かを見て「清潔だ!」「汚ねっ」と感じるのは、「何と比べるか?」による。
この時代(19世紀)のイギリス・ロンドンのスラムの様子を、エンゲルスがこう描いている。
そこの不潔なことと荒廃した有様は、とうてい考えられないほどだ。完全な窓ガラスなどほとんど見当たらぬし、壁は砕け、入口の戸柱や窓枠は壊れてがたがたになり…汚物と塵埃の山があたり一面にあり、ドアの前にぶちまけられた汚い液体は寄り集まって水溜りとなり、鼻もちならない悪臭を発散している
「逝き日の面影 (平凡社)」
19世紀のアメリカの様子は分からないけれど、貧しい人が住んでいるところには、こうした不潔が「付き物」になっていたのだと思う。
今のニューヨークの様子を知ると、きっと間違いない。
ニューズウィーク誌の記事(2013年10月29日)には、ニューヨークの様子をこう書いてある。
ニューヨークは汚い街で、いつ行っても泥まみれでフットボールの試合をした直後のようだ。建設現場周辺の通りは本当に汚い。誰も水で流したり掃いたり「ご迷惑をお掛けします」と謝ったりしない。一方、東京の建設現場は歯医者さん並みに清潔だ。
ちなみに、明治時代に日本を訪れたモースも日本の清潔さに注目した。
衣服の簡素、家庭の整理、周囲の清潔、自然及びすべての自然物に対する愛、あっさりして魅力に富む芸術、挙動の礼儀正しさ、他人の感情に就いての思いやり・・・これ等は恵まれた階級の人々ばかりでなく、最も貧しい人々も持っている特質である
「逝き日の面影 (平凡社)」
平成の今、訪日外国人に日本の印象を聞くと、この時代の外国人と同じことを言う。
「日本の街はとてもきれいだ!」
この日本の印象は今も昔も変わらない。
最近でも、レコードチャイナにそんな記事(2017年10月21日)があった。
<中国人観光客が見た日本>日本はなぜこんなにきれいなのか、その理由を考えたらため息が出た
日本を旅行した中国人が、日本の道がとてもきれいなことに驚いている。
「日本の街では、路上にゴミが落ちていない!」
このことに感動したこの中国人は、その理由をこう考えた。
・日本ではごみの分類がしっかりされている。
・日本は雨が多い。雨水が道路を「掃除」してくれるから、道はきれいになる。
・日本人は環境をきれいに保とうと意識している。建築作業をするとき、日本では粉じんが飛ばないように現場を囲んでいる。中国の作業現場では、こんな環境への配慮はない。
くわしいことは上の記事をごらんください。
この記事に対して、日本ではネットでこんなコメントがあった。
〇「日本もそんなにきれいじゃない!」という人たち
・こりゃ大嘘だな。国道1号 掛川千羽IC 上り降口見たら呆れるぞ。片づけても数日もしないうちにゴミだらけ。
・日本も最近は酷くなってきたけどな
・日本各地にゴミ、空き缶、ペットボトル落ちてるよ。日本人も大したことないよ
〇「今はいいけど、昔はひどかった」という人たち
・日本も1980年頃までひどかったけど。80年代はきれいになってと思うけど。
・70年代までのような気がする
〇こんな悲観的な見方をする人も
・もうゴミ拾いくらいしか日本には誇れる物がないんだね…
「日本はとてもきれい」
「日本人はとても礼儀正しい」
こうした外国人の感想はうれしいけど、家電製品は韓国や中国のメーカーに押され気味。
「製造国」としての日本の地位は、世界の中でどんどん低下しているように感じる。
少し前に、日本の新幹線の「7分間の奇跡」が世界中で話題になった。
日本人のスタッフが7分で完璧に掃除している。
まずはその動画を見てほしい。
Cool JapanのThe 7 minute Tokyo Train Cleaningから。
この動画を見た外国人がこんなコメントをしていた。
「People in Japan take their trash as a personal responsibilty」
(日本の人たちは、ゴミを自分の責任だと考えている)
海外旅行に行くと分かるけど、外国の街には、そこらじゅうにゴミが落ちていることがよくある。
ゴミを自分の責任だとは考えずに、平気でポイ捨てをしている人が多い。
あるカンボジア人は、「大丈夫!ボクが捨てても、後で清掃員が片づけるから!」なんて笑顔で言う。
日本人のように、ゴミを「自分の責任」と考えて自分で処理する国民は少ない。
「7分の奇跡」も、乗客があまりゴミを出さないからこそ可能になっている。
ゴミが散乱していたら、スタッフがどんなに優秀でも7分では終わらないはず。
「ゴミを散らかさない。自分の責任で片づける」
このことで助かっている人はたくさんいるし、そのことで社会がうまく機能している。
だから日本に来た外国人も、日本のきれいさに驚く。
日本人にとっては当たり前すぎて、その価値に気づきにくいことがよくある。
外国人の視点で見ると、その良さをあらためて確認することができる。
日本人が日本人の良さに気づいて再認識するというのは、とても大事なことだと思う。
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