最近、「わら人形」で子どもを脅した42歳の男が逮捕された。
産経新聞の記事(2017.11.9)
「わら人形」つるし脅す、小学校への業務妨害罪で起訴
小学生の声がうるさいということで、通学路に目立つように「クソがきどもここからとびおりてみんな死ね」と書いた紙と一緒に、わら人形をつるしておいたという。
呪われてるのはこの男の人生じゃ…ということはいいとして、ここで注目したいのは、小学生でさえ見れば恐怖を感じる、ある意味日本文化の「呪いのわら人形」だ。
わら人形
画像:Yanajin33
呪いのわら人形というと、「丑の刻参り (うしのときまいり)」が頭に浮かぶ。
丑時参
丑の刻参り とは日本に古くから伝わる呪いの儀式。
丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社のご神木に、呪いたい相手を見立てたわら人形を五寸釘(約15cmの釘)で打つべし、打つべし、打つべし、と打ち込むという鬼気迫るおそろしいもの。
この儀式を毎夜、7日間行なうと相手は死んでしまうというウワサ。
他人に見られると効力を失うため、その目撃者を生かしておいてはいけないことになっている。
つまり、目撃者も殺されるということだから、深夜に神社で変な音が聞こえてきたら、「見える子ちゃん」みたいに全身全霊でスルーしよう。
さて、日本で「わら人形」で逮捕者が出たのは今年はこれで2件目だ。
1月には群馬県のゲームセンターの駐車場に、女性経営者の名前が赤い文字で書かれたわら人形が落ちていたのを従業員が見つける。
恐怖を感じた女性が警察に通報し、50代の男が逮捕された。
朝日新聞の記事(2017年1月30日)
呪いのわら人形は犯罪か 脅迫罪になる?殺人未遂罪は?
犯人は経営者の女性に好意を持っていた常連客で、プレゼントを断られたことを恨みにもって、わら人形で女性に嫌がらせをしたらしい。
わら人形を使って相手を呪いをかけることができるかはワカランけど、脅迫罪は成立する。
呪いのわら人形で逮捕者が出たのは、ボクが知っている限りで今年で2件目だから、いまの日本ではわりとよくあることかもしれない。
Amazonで見たら、わら人形・手袋・釘・石の「呪いのわら人形セット」が3578円(税込・送料無料)で売ってた。
これの商品に五つ星の評価した人は一体ダレ?
韓国の首都ソウルにある博物館を見て回っていると、わら人形の展示物を発見して声を上げそうになった。
このとき一緒にいた韓国人に聞いたら使い方は日本と同じで、相手を呪うときに昔からこの人形が使われていた。
ちなみにこの展示品は実際に使われた実物。
この韓国人が中学生だったとき、校庭にわら人形が落ちていたのを生徒が見つけて、教師も生徒もパニックになったという。
この儀式はいまでもある。
韓国の大統領選挙で選挙対策委員会の常任委員長が、わら人形を使って他の候補に呪いをかけたとニュースになった。
朝鮮日報(2022/02/14)
人形の顔には「ユン・チョクポル」と尹錫悦候補を侮辱するような名前が書かれている。わら人形に鋭利な道具を突き刺す写真もあった。
「八つ裂きにする」…李在明候補の選対関係者、尹錫悦候補のわら人形で呪いの儀式
この呪いの儀式日本固有の文化だと思っていたから、韓国にもあったというのは意外だ。
日韓に昔からあるものなら、このルーツは中国にあるのでは?
そう思って「日本大百科全書」を見ると、わら人形についてこんな解説があり。
藁人形
藁を材料にしてつくった人形。古代中国では芻霊(すうれい)、芻人とよんで死者とともに葬る副葬品に用いられた。
これによると、わら人形は相手を呪うためにはなく、もともとは副葬品だった。
いつどこで、この人形に「呪い」という呪術的な要素が加わったのかは分からないけど、「呪いのわら人形」のルーツは芻霊(すうれい)にあるのでは、と思うのですよ。
人形に釘を打ち込んで相手を呪う儀式は、奈良時代にはあったと考えられていて、これを海外由来とみる人もいる。
研究者によっては、鉄釘自体が渡来文化であり、こうした呪術体系自体が大陸渡来のものではないかとしている。
さて、お墓に入れる副葬品というのなら、これは「俑(よう)」のことだ。
俑とは「人形」のことで、中国で死者と一緒に埋葬した人形をこう呼ぶ。
死者の臣下や妻、衛兵やペットの動物などいろんな種類の俑(人形)がある。
兵馬俑
秦の始皇帝のお墓にある「兵馬俑」は、きっと世界でもっとも有名な「俑」だ。
兵馬俑とは「兵士や馬を型どった像(俑)」ということ。
「死者とともに埋葬した人形」という本来的な意味からすると、わら人形はこの兵馬俑と同じになる。
埴輪(ウィキペディアから)
日本だと、古墳時代の「埴輪(はにわ)」が中国の「俑」に近い。
でも埴輪はお墓の上や周囲に置いたもので、墓の中には入れなかった。
兵馬俑
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