いまから7年前、2011年に韓国人の知り合いが日本にやってきた。
女子大生だったその子は休学して、東京に一年間住むことを決める。
当時はK-popがかなりのブームになっていて、東京の街を歩いていると、あちこちで韓流アイドルの笑顔を見かけた。
KARAや少女時代なんかがとくに人気があって、日本の中学生や高校生が運動会で韓国のガールズグループのダンスをしていたと思う。
これは話題にしないわけにはいかない。
「韓国の文化は日本で定着しているよね。韓流アイドルは中高生に人気があるし、韓国料理もすごく身近になったし」
こんなふうに、「よいしょ」と韓国を持ち上げてみた。
するとなぜか、その子の機嫌が悪くなる。
「私は韓国のガールズグループが嫌いなんです。韓国にいたときから韓流アイドルに興味はなかったんですけど、日本に行った彼女たちを見て驚きました。肌をすごく出しているんですよ。日本で『あれが韓国の女性』というイメージが広がりそうで、何か気分が悪いです」
韓国のガールズグループは日本に来ると、「セクシー路線」「お色気系」に変わってしまうらしい。
その子が女性ということもあって、それが「成功するために、肌を露出して日本の男に媚びを売っている」というように見えてしまう。
前は韓国のガールズグループには何の関心もなかったけれど、今では街やテレビで見かけるだけで不快になるらしい。
「韓国文化は日本で人気がある」と韓国人の自尊心をくすぐろうとしたら、逆にその子を怒らせてしまった。
少しの沈黙の後、その子が口を開いてこんなことを言う。
「韓国では日本の作家がすごく人気なんです。村上春樹はとくに有名ですね。私も彼の本を読んだことがあるんですけど、内容はおもしろくて深いです。アニメやマンガも、日本のものは考えさせられるようなレベルの高いものが多いです。日本でも、韓国人作家の人気が出てきたらいいですね。韓流アイドルじゃなくて、韓国人の感性や考え方が日本人に影響をあたえられたらうれしいです」
「KARAのヒップダンスが~」とか「少女時代の美脚が~」というのが嫌いなわけだ。
いまでは日本に定着している「韓流」という言葉は、もともとは台湾の言葉だった。
この現象が台湾で「韓流熱風」と言い表され、その後中国や日本でも使われるようになった。「ハンりゅう」という読みはこの「韓流(ハンリュー)」から生まれた。この言葉は韓国に逆輸入された。
韓国では「清純派」で売っていたガールズグループが日本では「セクシー系」になる。
ようするに、日本に行くとエロくなったりいやらしくなったりするらしい。
ネットを見てみたら、これに怒っている韓国人はけっこういる。
韓流アイドルのT-araが見せたセクシーなダンスは日本では好評だったけど、韓国では”いやらしい”ということで「国の恥さらし」と言われていた。
Rainbowというグループの「おへそダンス」も日本人には受けたけれど、韓国の放送通信審議委員会から「それは煽情的(エロい)」と注意を受けた。
それでRainbowはダンスを変えている。
日本でもっとも有名なガールズグループのひとつ、少女時代も例外ではない。
レコードチャイナの記事(2013年4月6日)から。
清純派少女の代名詞だった「少女時代」も日本ではホットパンツ姿でポールダンスを踊ったり、ビキニ姿でステージに立つなど、韓国のファンからは「セクシーすぎる」と批判されている。
ぼくとしては、少女時代が韓国で「清純派少女の代名詞だった」ということに驚く。
てっきり韓国でも、あの脚を武器にしていたと思っていた。
ただ、供給は需要によって決まる。
「どうやったら日本人に受け入れられるか?」と考えたときに、セクシー路線が出てきたのだろう。
「セクシー(エロ)をアピールば日本人はよろこぶ」と言われているようなもので、「恥さらし」は日本のほうかもしれない。
しかも、それが成功している。
ちなみに、少女時代の「美脚ダンス」は日本人の振付師「仲宗根 梨乃(なかそね りの)」さんによるもの。
2009年に少女時代のシングル「GENIE」を振付し、彼女らの長い脚を生かした“美脚ダンス”が話題になる。
日本のゴルフ界に「韓流ブーム」を呼びこんだアン・シネ選手も、韓国で同じような批判を受けていた。
アン・シネ選手の膝上30センチのミニスカートは衝撃的で、日本のメディアが彼女に食いつく。
でも、韓国メディアはそれを冷ややかに見ていた。
レコードチャイナの記事(2017年6月26日)から。
「日本メディアが彼女の実力より外見ばかりに注目している」と、日本での熱狂ぶりを批判的に伝えるメディアもある。
韓国ゴルフ界のセクシー女王アン・シネが日本での「ミニスカアピール」を否定=韓国ネットからは「こっちが恥ずかしい」と厳しい声
韓国のネットでも、アン・シネ選手は「こっちが恥ずかしくて手が震える」「これがセクシーアピールでないなら何?」とたたかれていた。
「日本で成功して大金をかせいだ」というだけでもバッシング対象になるのに、これに露出が加わると手が付けられなくなる。
アン・シネ選手は「ミニスカアピール」をしているつもりはなく、「ゴルフをしやすいウエアを選んでいるだけ」と説明したのだけど、そう言うとさらにたたかれる。
「理解してもらおうして事情を話すと、それが理由でたたかれる」ということは日本でもよくある。
でも、韓国での「火消し」の大変さは、きっと日本の比ではない。
話を、韓流アイドルが嫌いな韓国人の知り合いに戻す。
その子が聞いたらよろこびそうなニュースを見つけた。
いま日本で、韓国文学の人気が静かに広がっているらしい。
東亜日報の記事(2018/07/2018)にそのことが書いてある。
最近、日本では韓国ドラマやK-POPに続き韓国文学が注目されている。若い作家の作品をシリーズで出す出版社が現れ、メディアでも高評価を受けて底辺を広げている。
横浜の書店が韓国の文学作品の特設コーナーをつくったところ、予想以上に本が売れた。
それで店長はその特設コーナーの期間を延長することにした。
日本語に翻訳されて発売された韓国小説は、2016年には15冊だったものが2017年には23冊に増えている。
これを多いと思うか少ないと思うかはあなた次第。
でも、日本で韓国の文学作品が少しずつ受け入れられていることはたしからしい。
韓国文学という「知的な韓流」なら、韓国で作家が批判されることはないだろう。
膝上30センチのミニスカートでもはいてない限り。
テレビや街中で韓流アイドルを見たら「ムカつく」と言っていた韓国人の子も、いまの日本に来ていたらよかったのに。
でも実はこうした韓国文学も、村上春樹などの日本人作家の影響を受けているような気がする。
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生まれていないので良くは知りませんが70年代の海外アーティストに熱狂する女子中高生といったところなのでしょうか。仕掛け人がいるところなど今の韓流に似たところがあるのかもしれません。70年代の時は本国での評価が日本とは相対的に低いのにもかかわらずというケースでしたが才能が本物なのはクイーンなどで証明されました。韓流はデビュー前に地上波で紹介され、NHKのあさイチでも取り上げられる始末です。異常のひと言です。今の段階では色気無しでは売れる要素が無いと判断した事務所の判断に間違いがなかった事は確かではあります。
70年代は私にも分かりません。笑。
韓流ブームは「つくられた」という面は大きいでしょうね。
でも、政治がうまくいかないから広く定着することはなかったですけど。
今はまた韓流ブームだそうです。
これも定着するかどうかは分かりませんけどね。